神ノ定メ 本

□第5夜
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花の上に下ろしてもらってから少し経った。向こう側からは激しい戦闘音が聞こえてくる。
食人花の拘束も解けたのだが、なぜか周りには蔓で囲いがあり、クロウリーのもとに行けない。



「よく思うんだけどさぁ、レムって植物とか動物とかと話せんさ?」


『いえ、全く。ただこちらの言う事は向こうに伝わるみたいです』


「だから食人花も僕らを放してくれたんですか」


『じゃないでしょうか』



原作をかなりそれてしまったが、まあ花に食べられたくはないのでいいとしよう。
と、上から雨が降ってきた。その雨は自分達についた埃を払ってくれた。同時にレムの頭の中に昔の記憶が蘇る。



『(…っ!ダメだ…今はそんな事を思い出してる場合じゃない)』


「どうかしましたか?レム」


『いえ、何でもありません…』



問いかけてきたアレンにはから笑いで返した。それを見たアレンは、一瞬悲しそうな顔になったが、直に笑った顔になった。



『戦闘音も止まりましたし、クロウリーさんのもとに行きましょうか。囲いもなくなりましたし』



よく見れば蔓の囲いがなくなっていた。外に出てみると、大きなバラのようなものの上に佇んでいるクロウリーがいた。



「クロウリーさん?」



彼は俯いたまま動かない。と、突然彼は花の悪口を言い始めた。
当然のごとくその発言に激怒した花が口を開けてその場にいた四人を食す。



「うわああああああ!!」


「クロちゃん何やってんだーーーー!」


「うるさいである!私はエリアーデを壊した…もう…生きる気力もないである…」


「「『(自殺かいーーーーっ)』」」


「(しかも巻き添え)」


「(てか、性格変わってね?)」


「さあ、私を殺せであるドアホ花ー!!」


『や、止めてくださいーーーー!!』



その後も花の悪口を叫び続けるクロウリーを、アレンが押えることでようやくおさまった。
アレンがクロウリーに話している間に、レムはラビに頼まれもう一度愛情表現をしようとしていた。



『も、もう一回するんですか?』


「ここで死にたくないんならやるしかないさ」


『ラビがやればいいじゃないですか!!』


「オレじゃ花は満足してくれないさ!」


『うぅっ…』



顔を赤く染めるレムは、まるで今から告白でもする少女のようだった。



『愛…あ、愛してます――――!!』



その一言でまたもや花の口が開く。その様子にレムはほっと胸をなでおろした。



「右腕、負傷してるじゃないですか」


「こんなもの…またアクマの血を飲めば治る。はは…はっ、とんだ化物になったものだ私は…愛していたものを手に掛けてしまった。死にたい…」



クロウリーの悲痛な叫びだった。愛していたものを自分の手であやめてしまった…これほど辛いものがあるのだろうか?



「そんなにつらいなら、エクソシストになればいい。エクソシストはアクマを壊すんですよ。貴方はエリアーデというアクマをこわしたんです。
そして、これからもアクマを壊し続ければ、それがエリアーデを壊した「理由」になる。理由があれば生きられる

…理由のために生きればいいじゃないですか」



アレンの言葉は、クロウリーの心に響き渡った。










「でさ、こんな人なんだけど…」


「ああ、この男なら確かにここに来たである」



アレン、ラビ、レムは、クロス元帥の似顔絵(レム作)をクロウリーに見せていた。情報通り、クロスはここに来ていた。
クロウリーによると、クロス元帥は食人花の赤ちゃんを連れてきた。クロウリーの祖父から預かっていたものらしい。

…彼はそのまま何故か金を借りると、またどこかに行ってしまったようだ。



「しかもその花ちょっとおかしくて…。突然私に噛みついたと思ったら、みるみる枯れてしまったんである」



その後、もとの歯が全て抜け落ち、今のイノセンスの歯が生えてきたらしい。
そう考えると、クロス元帥がアレンに花を枯らすなと言っていた意味が分かる気がする。



「花がイノセンスだったとは…」


『ていうか、ここでもお金借りてったんですね…一体いくらたまっているんだか。そのツケはこっちにも回ってくるのに…』


「あれ?レムも師匠からツけられてるんですか?初耳です」


『結構ツけられてますよ。だからたまに…極稀にギャンブル行って、大金稼いで一気に返済してます。利子が募るともっと大変なんで』


「(師匠…何レムにまでツケてるんですか)」


「(ホント、この子らいくらツケられてんの!?)」


『ま、この話はおいといて、クロウリーさん、そろそろ出発しましょうか』


「先に…城の外で待っててくれないか…?旅支度をしてくるである」


「おう」



支度をしに城の奥へと行くクロウリーに言われたとおり、僕らは城の外で待機していた。










ラビとアレンがクロウリーが来るのをまだかまだかと待ちわびていた時、突如、城から火の手が上がった。



「まさか…」


『大丈夫です。彼はいますよ』



炎の中からクロウリーが出てきた。その顔は、笑っていた。
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