神ノ定メ 本

□第5夜
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レムはクロウリーと共にラビとアレンよりも先に汽車に乗り、寝ていた。

ふと…レムは目が覚めたかのように思った。が、そこは先ほど寝た汽車の中ではなく、瓦礫の山の上に倒れていた。



『夢…か』



辺りを見回すと、その瓦礫が見知ったものである事に気付いた。…黒の教団の塔だ。



『もしや…これはリナリーが見るはずのあの夢…!?なぜ僕までもが…』



確かにその瓦礫は塔そのもの。そして、レムはその光景を見ていた。
印刷された紙で。空を見上げれば、想像していた通り白い空に黒い三日月が浮かぶ。
下の水面を見れば、エクソシスト、または探索部隊のものなのだろう、私物が浮かんでいる。



『僕は…なぜこの夢を………!!』



自分の手を見て、驚いた。人間の、手じゃない。これは、獣の手だ。
鋭い三本の爪に、黒い皮膚。下半身を見れば、まるで蛇のような細長い身体。
足も手と同様に三本の鋭い爪が生えている。



『…』



無言で水面をのぞく。そこに映った自分の姿に絶望した。



『イノセンスに…呑まれた、姿』



龍そのものだ。頭からは角が生え、鋭い牙もあり、目も赤くなっている。唯一変わらないのは右目にある逆十字架のみだ。



『へブラスカに言われた終末の体ですか』



へブラスカには前々から言われていた。



―いつか、お前はイノセンスに呑まれ、そのまま消えさる時が来るかもしれない―



…と。覚悟はしていたつもりだった。



『僕は黒の教団と共に消える運命…それに、あの岩の上にいるのはリナリー。という事はあの下にアレンの亡骸が…』



ギュっと、獣の手を握りしめる。リナリーの傍に居て慰めたい、元気づけたい。でも…



『この姿で行ってはもっと絶望に追い込むだけでしょうね…』



―オマエハ、選バレシ神…―



『!!誰だ!!』



―オマエノ中ニアル…神―



『つまりは貴方は"聖獣"だと言いたいんですね。てことはこの世にいる神の集合体か…』



―ソノ通リダ―



片言で話す、白く大きな狼のような…いや"聖獣"



『何が言いたい』



―オマエニハ、コレカラ全テ起キル事ヲ夢トシテ分ケテ見サセテイク。当タリ前ダガ、内容ハ誰ニモ話スナヨ―



『…出来事が起こる前に、未来を見させると』



―ソノ後、ドウ進ムノカハオ前ガ決メロ―



『言われなくとも、誰かに縛られて、誰かに決められた道を進む気は全くない』



―ソレデコソ…"異端ノ神"ダ…―



『お前は、こんな僕についてきますか?』



―アタリマエダ。オレハ、オレノ意思デオマエニツイタ―



『じゃ、これからもよろしくお願いします』



―アア―



そのまま聖獣は消えていった。彼が僕に伝えたかった事は、全て受け取ったつもりだ。
これからいろいろと苦難があるのだろう。彼は、僕の覚悟を聞きに来たのかもしれない。



『…もうすぐ、目が覚める』



あたりに白い靄が出てきた。リナリーの姿もかすんでいく



『僕はあきらめない。この世界を救う。絶対に』



レムの体を白い光が包み込む



『たとえ、"化物"と言われようと…』



レムの脳裏に、先ほどの村での出来事が蘇った…










「…、…、レム!」


『…アレン?』



いつの間にか汽車は発車しており、隣にはアレンが座っていた。向かい側にはクロウリーとラビが座っている。



「呼びかけても起きないから、心配しましたよ」


『…すみません』


「…レム、まだ怒ってるんさ?…でもあの変わりようはビックリしたさ。それにクロちゃんもそんなに落ち込むなって」



確かにクロウリーは落ち込んでいた。涙も流している。レムはガーゼがあてられている額に手をあてる。



「まだ痛むんですか?」


『いえ、もう大丈夫です…僕はあんなこと言われてもかまいませんが、仲間が言われるのは気に食いません』



それは数時間前にさかのぼる…










「アクマを退治していただと!?」


「そんなバカな話信じられるか!!」



村人からは、まるでこの世のものではない様な物を見るような目でみられる。



「どっちにしろワシらにとっちゃ化物だ。出て行け!二度とここには帰ってくるな!!」



城に入るまでは僕らを頼ってきていた村人が、今では化物扱いだ。態度が変わり過ぎている。



「化物!!」


「去れ!!」


「去れ!!」


「去れ!!」



「化物共!!」



アレンとラビはクロウリーの肩を叩いてここを出ようとしていた。しかしレムはそこを動こうとせず、そのまま立っている。
アレンとラビはレムが何をするのか分からず、少し進んだところから様子を見ていた。
そんなレムを見て何を思ったのか、その場にあった石などを投げ始めた。
フードをかぶっているため顔には当たらないが、体にビシビシ石が当たる。



「早く出て行け!!」


「お前らとはもうかかわりたくないんだよ!!」


「何でこんな化け物を"様"を付けて呼んでたんだろうなぁ!」


「さっさと出ていけぇ!!」



あたりかまわず叫び散らしながらレムに石を投げ続ける。と、レムが俯いていた顔を上げた。
その時、運悪く鋭くとがった石が額に当たり、皮膚を切った。

額から赤い血が流れ出し、顔に一筋の赤い線が出来る。



『…化物は、こんな赤い血を流すんでしょうかねぇ?』



レムが尋ねるも、誰も答える者はいない傷を労わるものもいない。アレンが血という言葉を聞いて向こう側から駆けてきた。



「レム!!額が切れてるじゃないですか!!…もう行きましょう」


『少し黙ってろアレン。僕はあいつらに言う事がある』


「!」



口が悪くなったレムに驚くアレン。ラビも同じく驚いている。そんな二人に目もくれず、レムは村人との距離を縮め始めた。
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