神ノ定メ 本

□第5夜
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だんだんと近づいてくるレムに怯えたのか、石を投げる手を止め、各自手に持っていた武器を突き出してくる。
レムはもう少しで村人が手に持つ槍が刺さるという所でようやく止まった。



『化物、か…

そんな化物どもに電車を逃がしてまで助けてほしいと縋ってきたのは誰だ?

"様"付けで呼んできたのは誰だ?

僕の事をどうこう言おうが構わないが、僕の仲間の事を悪く言うのは許さない



イノセンスである銃を突きつけ、村人を冷めた目でにらむ。そんな姿を見て村人達は一目散に逃げ出した。
よほど慌てていたのは、その場には片方だけの靴や武器。お金なども転がっていた。



『…………』


「…レム?」



黙り込むレムを心配して、アレンが顔を覗き込んできた。その表情に、目を疑う。
アレンが見た表情は、今までの温厚な性格のレムとはかけ離れた、とても冷たい目をしていた。



「レム!」


『!!』



その表情がレムではない様な気がして、思わず大声で名前を呼んだ。その声に驚いて、レムの表情がいつもの彼女になった。



『…すみません』


「いえ、いいんですが…あの、すごい変わりようでしたね」


『僕、キレると口調が変わるんです』



そう、おどけたように笑った。










「まあ、気持ちは分かりますけどね。さすがに僕もムカッときましたよ」


「いいじゃん帰れんでも。男は胸に故郷がありゃいいんさ」



一瞬、くさいと思ったのは心の奥にしまっておこう。



『すみません。僕のせいでこんなふうに…』


「誰がレムのせいって言ったさ?誰のせいでもないさ」


「そうですよ。クロウリー、気晴らしに汽車の中を見てきてはどうですか?乗ったの初めてなんでしょう?」



膝を抱えて泣いていたクロウリーの顔が少し晴れた。



「う、うむ…そうであるな。ちょっと行ってくるである」



飛び跳ねるように席を立ち、そのまま次の車両へと歩いて行った。










✝3時間後✝



「クロちゃんやーーーい」



クロウリーが席を立ってから早3時間。初めのころは物珍しさにいろいろと見ているのかと思い探しに行かなかった。
………だが、さすがに3時間もたつと心配しなり探しに来たのだ。



『迷子ですかね?』


「まさかぁこんな小さな汽車だぜ。迷子になる方がおかしいさ」


『ですよねぇ』



次で最後の車両だ。ここにいなかったら…と思うと気が重くなる。アレンが扉を開けると、そこにはパンツ一丁にされたクロウリーがいた。



「悪いね。ここは今青少年立ち入り禁止だよ。少女は特にかな」


「さー旦那、もうひと勝負行こうぜ。次は何賭ける?」


「い、いやしかし…」



どうやら向かい側にいる3人組の男と賭けごとをし、ボロ負けをしたのだろう。
元から外の世界についてよく知らない彼の事だ。面白半分興味半分で男の話に乗ったのだろう。



「このコートの装飾全部銀でできてるんです。これとクロウリーの身ぐるみ全部かけて僕と勝負しませんか?」



アレンが突然団服を男の目の前に差し出し、賭けごとをしようと持ちかけた。



「(なぁレム、アレン大丈夫なんさ?)」


『(アレンならきっと大丈夫。イカサマしてでも勝ちますよ)』


「(イカサマ!?)」


『(僕も使いますもん)』



小声でラビと話していると、ふとビン底メガネをかけている男と目があった。相手がニヤリと笑う。



「俺達は3人組で、しかも大人だ。そこで、そこの少女も一緒でいいぜ。くぅ〜俺達って優しいぃ〜」


『僕もですか?別にかまいませんよ』


「(レム、ポーカーできますよね?)」


『(バッチリ。クロス元帥に習いましたから)』



目を合わせ、頷き合う。これでイカサマを使う事は決まった。後は男にバレないよううまくやるだけだ。



『(僕のイライラを発散させるためにも頑張ってもらいますか)』


「…!!(なんかレムとアレンが黒いさぁ…)」



そうして、ポーカーが始まった。










「コール」


『あ、僕もです』



アレンとレムが机の上にカードを出す。そのカードはスペードとハートの10〜Aまで全てが綺麗にそろっていた。
アレンとレムは特に奪われたものは何もない。逆に相手の方がパンツ一丁になっていた。



「ロイヤル……ストレートフラッシュ……」


『はい、僕らの勝ちです』


「だぁああ!ちくしょー」



男達が何やら小声で話し合っている中、レムはクロウリーに取り返した服を着るよう指示した。



「(やっぱりイカサマしてるん?)」


『(もちろんです。向こうが先に仕掛けてきたんです。手を抜くような事はしません)』


「(カードでは負ける気がしません。修行時代、師匠の借金と生活費を稼ぐために命懸けで技を磨きましたから)」


『(同じく。まあアレンよりかはやさしい方だったとは思いますが…)』


「(二人が黒ーい。おまえらいったいどんな生活してたんさ…)」


『(それはもう死ぬような…?まあ、元から心は死んでたんで、それほど辛くはありませんでしたが)』


「…」


「…」


『(まあ、気にせずにいて下さいね)』



そのまま地獄のポーカーは、男達の目的地に着くまで続けられた…
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