神ノ定メ 本
□第5夜
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「はい」
アレンは汽車の窓からポーカーをしていた3人組の荷物を渡した。今の3人はパンツ一丁。ここは結構寒い地域だ。そんな姿では風邪をひく。
『僕らの目的は仲間の荷物を取り返す事です。何も貴方達の荷物まで取ろうとは思っていません』
「…情けをかけられるほど俺らは落魄れちゃいねェよ」
「その手は?」
「あれれ」
いい事を言っていたビン底…ノア一族"ティキ・ミック卿"を含めた仲間は荷物に手を伸ばしていた。他の奴らにはバレていないんだろう。
「いやあ助かった。実はこれからこの近くの鉱山で外働きでね」
「どこから来たんですか?」
「どこからも♪俺らは手癖の悪い孤児の流れものさ」
「おれい」
「イーズそれお前の宝物だろ?待て待て礼ならオレがすっから」
ビン底がポケットに手を突っ込んで何かを探しているうちに汽車は発車した。駅から離れようとするところで彼から何かが投げ渡された。
…トランプだ。
「それでカンベンしてちょー」
カードを受け取り、汽車はそのままトンネルに入って見えなくなった。彼を除く二人はアレンとレムの事について話していた。
と、駅に鳴り響く公衆電話のベルの音。ティキがそれをとる。
「……別の仕事が入っちゃったぁ」
「また秘密のバイトかよ。最近多いぞテメー」
「しょうがねェよ。じゃあオレらで行ってくんぜ」
「悪いな」
「ティキ、また銀をとってかえってきてね…………」
幼いイーズが振り返り、ティキにそうお願いをした。ティキは笑って3人を見送った。
イーズが首から下げている、ティキがとったという大物の銀の裏には、殺されたエクソシスト、ケビン・イエーガーの名が記されていた。
✝ティエドール元帥部隊✝
「あ?何言ってやがる」
神田率いるティエドール元帥を探す部隊はとある町中にばらばらに潜んでいた。アクマに分断されたのだ。
―「音悪いなデイシャ」
―「(ザー)ったくもー最近調子悪ィじゃん(ガ)オレの無線ゴーレム(ピピ)」
上からマリ、デイシャ。今、神田の持つゴーレムと繋がっている二人だ。確かにデイシャからの無線には雑音が混じっている。
「お前ら今どこにいる?」
―「デケェ変な塔から東に3キロくらい?」
―「私は西に5キロといったところだろう」
「俺は南だ」
―「(ザーーー)長い夜になりそうじゃん、こりゃ…(ザザ)」
―「奴らの密集区に入ってしまったな。集まろう。10キロ圏内ならゴーレム同士で居場所がたどれる」
―「(ザーー)じゃあオイラと神田でまりのおっさんのとこ集合ってことで」
「夜明けまでだ」
無線を切り、路地を出ればレベル1とレベル2のアクマが大量にいる。それは他の二人のところも同じで、大量のアクマが待ち伏せている。
「オーケー」
デイシャがイノセンスを発動する。彼のイノセンスは"隣人ノ鐘"(チャリティ・ベル)小さく、サッカーボールほどの大きさだ。
「シュート!」
一匹のアクマの頭を通過する。アクマは余裕そうに笑っている。と、アクマの頭の中に鐘の音が鳴り響く。
「音波による内部破壊じゃん。ちいせぇからってバカにすんなよ。鐘になっちまえ」
レベル2のアクマ一体と、近くにいた二体のレベル1も同時に壊れた。それを見たアクマ数匹が場所を移動し始めた。
「待てェ!!」
アクマを追いかけて、ビルの壁をぶっ壊して通りに出る。そこには一人の人間。…ティキだ。
団服を着ているデイシャを見て、エクソシストだと分かったのだろう。
―「(ザーザザッ)…殺す(ザザザー)って、(ピーガガッ)楽し(ザーーーー)」
神田とマリの無線ゴーレムから雑音混じりの無線が入る。雑音が入り過ぎていて何を言っているのか分からなかった。
「あ?何か言ったか?」
「デイシャ?」
その時はさして気にしなかったのだが、朝になっても集合場所に来ないデイシャを心配してゴーレムを頼りに場所を探った。
「デイシャのゴーレムだ………」
ゴーレムの横にいたのは、変わり果てた姿のデイシャだった。