神ノ定メ 本

□第7夜
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アレンがとある一室に入れば、あたりには霧のようなものが立ち込めていた。



「これが君の左腕だったイノセンスだよ」


「ええっ!!?この霧が?」



霧は部屋に充満している。その部屋場まるで別次元のようにも思えた。



「霧ではない。形をなくし粒子化してるんだ。通常粒子になるまで破壊されればイノセンスは消滅する。
だがこのイノセンスは消滅しなかった。それどころか君を助け、今もなお、神の結晶として力を失わずにいる」


「お前を竹林から運んだ時も、この霧がお前を守るみたいに周囲に満ちてたぜ。おかげで前が見えなくてここに帰るの苦労したんだ」


「こんな状態になっても生きてたなんて…どうして僕のイノセンスだけ………?」


「残念ながら我々の科学じゃそこまで分からない。コムイですらこの事は予想の範疇を超えていたらしい。
珍しくあの男が、非科学的な事を言っていたよ」



そこへ近づいてくる3人の人影。バクはその人達を見ると、腰に手をあて、ため息をついた。



「なんだ君達。仕事はどうした」



どうやらここの研究員らしい。それも新人の。長身の男に、平均身長の男、メガネをかけた女。
どうやらイノセンスを復活するとこを見学しに来たらしい。



「少年エクソシストはどこですかぁ〜」



その中で唯一の女、蝋花(ロウファ)がバクの背中の陰からアレンの事を見た。アレンが挨拶をした瞬間、彼女の顔が一瞬にして赤くなる。



「(ストライク…!!!!)」



どこかの兎が言っているような事を感じている。他の人たちには辺りに花が咲き乱れているように見えるのだ。



「しょうがない。ウォーカー、今からこの散乱したイノセンスを発動して対アクマ武器に戻すんだ。
武器化さえできれば、君はまた戦えるだろう」



今のアレンにとっては、嬉しい限りの言葉だっただろう。急いで部屋の中心に移動し、深呼吸をする。



「(イノセンス…左腕にあった時とは全く別物の姿になってしまった。
ごめんな。もう一度僕と、戦場に戻ってくれ。
今度は負けない!レムのためにも…みんなのためにも…!)」



部屋を漂う粒子を見つめる。



「発 動 !!」



その言葉に反応したイノセンスが徐々にアレンの左腕に集まってくる。
全てが集まり、つながろうとしたその時、イノセンスは再び粒子となった。



「も、もう一度だウォーカー!!」



慌てたように指示をするバク。その言葉に返事をし、アレンはもう一度発動した…










✝二日後✝



アレンはいまだに武器化はできていなかった。それどころかどんどん粒子に戻るペースは速くなる一方。腕を形にすることさえ難しくなってきていた。



「(早く戻らなきゃ…リナリーの、レムの夢が頭から離れない。もし、あの夢が本当だとしたら、レムはまだ…)」



アレンは決心し、勢いよく立ちあがる。その時頭に何か当たった。バクが下に転がっていた。辺りにはファイルが散らばっている。



「すみませんっ、ちょっと考えごとしてて。バクさんが入ってきたのに気付きませんでした」


「少し休めウォーカー!キミ、この2日間まともに寝てないだろう」



確かにアレンはここ2日、まともに寝ていなかった。部屋に戻らず、ここで寝泊まりしている。
それも1日のほとんどは発動するために時間を費やしていた。



「すみません。バクさんのファイルの資料バラバラにしちゃいまし…」



ふと、散らばっているファイルを見てみると、その全てにレムとリナリーの写真が貼り付けてあった。カメラ目線の写真はない。…盗撮だ。



「レムの事が…好きなんですか?それにリナリーも…。
リナリーの事が好きなのは構いませんが、レムの事は譲りませんよ?僕のです。
(………たとえ、もうこの世に存在していないとしても………)」


「(うわ…ベタ惚れしてる…それにそんなに見られると…)」


「分かってます?(黒笑)」


「見るなッ!オ、オレ様は極度に興奮するとジンマシンが出るんだ。見るなぁぁああっ!」



全身に発疹を出し、そのままバクは倒れた。



「ちょっ、誰か来てー!!」










「装備型と寄生型の発動の違い?」



バクはウォンによって敷かれた布団に寝ていた。ただのジンマシンなのだろうか、本当に…



「寄生型はイノセンス自体が胎内に宿って対アクマ武器となるだろう?だが装備型は適合者とイノセンスに身体的なつながりはない。
その分、装備型はイノセンスを制御するのが難しいんだ。シンクロが出来てもあの強力なイノセンスの力を制御できない」



だからイノセンスを対アクマ武器に"改良"される。武器化は力を拘束し、適合者とのシンクロをより容易にするために必要不可欠。
そうして作られた武器に、装備型は自分をシンクロさせて発動する。



「だが寄生型は改良していないイノセンスの原石とシンクロを行う。失礼かもしれないが、寄生型の適合者は、体自身が拘束する武器。
その存在自体が、"対アクマ武器"なんだ」


「僕が武器…?」


「分かりやすく言うとだ。君は確かに人間なんだが…」



イノセンスを対アクマ武器にするときは、イノセンスを知らなくてはならない。その能力に最も合ったスタイルを導き出す。
アレンは、まだ彼のイノセンスが求めるスタイルになっていない。だから発動が出来ないのだろう。



「僕が…イノセンスを知れていない…か」


「だが今、のんびり知って行く時間も君には惜しいんだろ。少し荒療治だが…」



バクは立ち上がると、アレンについてくるように言った。




  
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