魔の預言者 本

□第五話
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「何で戦わん…悔しくないんか!!」



その声でふと竜士の方を見る。忘れてた、オレは事を全て見る義務があるんだった。



『(さて、どう出る?)』


「俺はやったる…!お前はそこで見とけ、腰ぬけ!」



竜士は先生に降りるなと言われた競技場に降りていった。そのまま蛾蟇の前に立つ。



「…俺は、俺は!サタンを倒す」


「プッ、プハハハハハハ!ちょ…サタン倒すとか!あはは!子供じゃあるまいし」



出雲が笑った。



「(俺の、野望を…笑うな!!!)」



思わず心をとりみだしてしまう。蛾蟇に悟られてはならない怒り… 気付いた時には、もう遅い。





ゲボオオオオ!





《グルル…グルァア!》


『ゼル、落ち着け』



蛾蟇に反応しゼルが巨大化する。それを鎮め、燐を見た。ちょうど燐が飛び出すところだった。竜士のかわりに燐が喰われる。



「おい!!」


「きゃああっ!」


「燐!」



出雲達は顔を手で覆い、子猫丸は顔を真っ青にしている。



《海!!燐が…!》


『大丈夫だ。見てろ』



蛾蟇は体中から汗を噴き出し、燐を離した。当然燐は無傷だ。



「…何やってんだ…バカかてめーは!!いいか?よーく聞け!サタンを倒すのはこの俺だ!てめーはすっこんでろ!」


『な?言ったろ?』


《ホントだ…》



ゼルも安心したのか小さくなり、海の肩に乗った。



「…………なななん…バ、バカはてめーやろ!死んだらどーするんや!つーか人の野望パクんな!!」


「パクってねーよ。オリジナルだよ!!!」



そっと物陰から見ていた雪男は銃を下げ、競技場を後にした。


「(“魔神の力”というものは…貴方が考えているより、ずっと手に負えないものかもしれませんよ。メフィスト・フェレス卿……)」










『さてっと!』



燐達が無事這い上がったのを確認すると、海は逆に巨大化したゼルに跨り降りていく。




「お、おいっ!お前死ぬ気か!!」


『なわけねーだろ。どっかの誰かさんと違ってそんな無謀な事はしねぇ』



その言葉に燐がうっと声を漏らした。その声を聞きながらゼルから降り、蛾蟇の前に立つ。



『“苦”』





ゲボガァアアアア!





いきなり蛾蟇が苦しみだした。海の声が聴こえない燐達は驚く。



『お前はオレの仲間を傷つけようとした。今のオレにとって、あいつらは大切だ。そいつらを傷つけようとするなら………死をもって償え』


《も、もうしませんっ!人を襲わないからっ!お許しくださいませ!!“魔の預言者”様ぁ!》


『オレをその名で呼ぶなッ!』


《ヒイイイイッ!よ、呼びませんからぁッ!》


『……いいだろう。仲間にも伝えておけ。襲うのは寸前までにしておけと』


《は、ハイいぃ!!》



蛾蟇は体中に冷汗をかき、海から解放されると一目散に去っていった。



『(なぜ…なぜオレが“魔の預言者”だと分かった…)』



蛾蟇をもう一度睨みつけ、ゼル再びゼルに跨り上に上がった。



「ど、どうしたの海?いきなり大声で叫んで…しかも下に降りてくなんてっ!」


『ちょっとな…』



しえみに問い詰められるが、それを適当にあしらい競技場を出た。



「ま、まってよぉっ!」


『…(原因は早急に突き止めねーとな)』



しえみが追いかけてきてるのに気付かづ、早歩きで更衣室に入った。




  
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