魔の預言者 本
□第六話
3ページ/6ページ
「神木さん!」
海が悪魔を移動しているとき、しえみは出雲と朔子の後を追っていた。
「出雲ちゃん…呼んでるよ?」
「ムシムシ!行こ、朴!アイツムカつくのよ!」
「待って―――!」
完全無視。出雲は先ほどのことも根に持っているようだ。
「おーい!おーい!」
「〜〜〜〜〜〜!何であたしに付きまとうのよ!ちょっと使い魔召喚できたくらいでいい気にならないでくれる!?」
着物で走ってきたせいか、息が荒いしえみ。顔は赤く染まっている。
「? えっと、あの…あの…わ、私と、お、おと、お友達になって下さい!」
「はあ!?」
「わ、私、友達がいたことがなくて……」
「……ふぅん……いいわよ」
「えっ」
何か悪いことを思いついたのか…嫌な感じだ。
「じゃあ、あたしたちこれから友達ね!」
「ほんと!?」
「じゃあ早速コレお願いね!」
しえみに手渡されたのは出雲の手荷物。それを投げ渡す。
「あたし、体力ないからすぐ疲れちゃうの!友達って助けあうものじゃない?持ってくれないかな〜?」
今日の体育実習で走っていた奴がなにをいってるんだ。
自分が“友達”という言葉で操られて、いいように使われている…そんな事をしえみは気付かない。
「(友達…助けあう…)うん!」
「い…出雲ちゃん!」
「喜んでやってるからいーんじゃない?」
朔子は気付くが、当人が気付いていないためにそのまま歩きだす。
「何だアレ……しえみがまろまゆの付き人みてーになってるぞ?」
「まろまゆ?…ああ、神木さん」
「遊んでるんやろ」
『出雲は嫌いじゃねーけど、あーいうのは大っ嫌いだな』
ちょうどその場に居合わせた燐、子猫丸、竜士、海。
付き人…同感だ!燐!!あーいうのはよくねーな。うん。でも口は出せない。理由と言えば先日ボティスに、
《少しぐらいの干渉は良いが、物語を壊すほどの干渉はやってはならない。流れに身を任せ、動いて行くのが定め》
と言われてしまっていたのだ。
『(くっそー…)』
それからというもの…
「コレ配っといてくれる?先生に頼まれちゃった」
「うん!」
「次の薬学で使う鹿子草(カノコソウ)あたしの分用意しといて」
「うん!」
「メロンパン。フルーツ牛乳」
「うん!」
最初の方がまだよかった。最後の方はお金がかかるものだ。それに主語しか言っていない。
「おい、アレ…完璧にパシられてんだろ…」
『オレもそう思う…』
「え?」
「…いや…まあ、何でもない」
旧男子寮前の階段で座り込み、皆を待つ。合宿の場所はやはりここらしい。
「つーか寮で合宿って意味あんの?」
「この寮、人がいないから都合がいいんだよ」
『オレ達しか住んでねーからなー。何で新館の方にいけなかったんだろ…』
今さら何を言おうと遅いが…メフィストのやろォ…あ、来た。
「うわ、なんやコレ。幽霊ホテルみたいや!」
『その通り、ここ出るよ』
「え"ッ」
「ヤダなにココ、気味悪〜い!…もうちょっとマシなとこないの?あ、コレお願い」
「うん」
何気なくしえみに荷物を渡す。合宿とあって皆荷物が多い。それはしえみもだ。なのに出雲の荷物まで持つのは…
「………!!も、杜山さん!嫌なら嫌って言わないと…!」
「朴さん!私、嫌じゃないよ!お友達の役に立ってるんだもん」
「………そっか…」
《あの出雲、嫌い!》
『オレもだ』
寮の中に入っていくみんなの背をゼルと見つめていた。オレと同じことを燐も考えているようで、変な顔でみていた。