魔の預言者 本

□第六話
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「神木さん!」



海が悪魔を移動しているとき、しえみは出雲と朔子の後を追っていた。



「出雲ちゃん…呼んでるよ?」


「ムシムシ!行こ、朴!アイツムカつくのよ!」


「待って―――!」



完全無視。出雲は先ほどのことも根に持っているようだ。



「おーい!おーい!」


「〜〜〜〜〜〜!何であたしに付きまとうのよ!ちょっと使い魔召喚できたくらいでいい気にならないでくれる!?」



着物で走ってきたせいか、息が荒いしえみ。顔は赤く染まっている。



「? えっと、あの…あの…わ、私と、お、おと、お友達になって下さい!」


「はあ!?」


「わ、私、友達がいたことがなくて……」


「……ふぅん……いいわよ」


「えっ」



何か悪いことを思いついたのか…嫌な感じだ。



「じゃあ、あたしたちこれから友達ね!」


「ほんと!?」


「じゃあ早速コレお願いね!」



しえみに手渡されたのは出雲の手荷物。それを投げ渡す。



「あたし、体力ないからすぐ疲れちゃうの!友達って助けあうものじゃない?持ってくれないかな〜?」



今日の体育実習で走っていた奴がなにをいってるんだ。
自分が“友達”という言葉で操られて、いいように使われている…そんな事をしえみは気付かない。



「(友達…助けあう…)うん!」


「い…出雲ちゃん!」


「喜んでやってるからいーんじゃない?」



朔子は気付くが、当人が気付いていないためにそのまま歩きだす。



「何だアレ……しえみがまろまゆの付き人みてーになってるぞ?」


「まろまゆ?…ああ、神木さん」


「遊んでるんやろ」


『出雲は嫌いじゃねーけど、あーいうのは大っ嫌いだな』



ちょうどその場に居合わせた燐、子猫丸、竜士、海。
付き人…同感だ!燐!!あーいうのはよくねーな。うん。でも口は出せない。理由と言えば先日ボティスに、



《少しぐらいの干渉は良いが、物語を壊すほどの干渉はやってはならない。流れに身を任せ、動いて行くのが定め》



と言われてしまっていたのだ。



『(くっそー…)』



それからというもの…



「コレ配っといてくれる?先生に頼まれちゃった」


「うん!」


「次の薬学で使う鹿子草(カノコソウ)あたしの分用意しといて」


「うん!」


「メロンパン。フルーツ牛乳」


「うん!」



最初の方がまだよかった。最後の方はお金がかかるものだ。それに主語しか言っていない。










「おい、アレ…完璧にパシられてんだろ…」


『オレもそう思う…』


「え?」


「…いや…まあ、何でもない」



旧男子寮前の階段で座り込み、皆を待つ。合宿の場所はやはりここらしい。



「つーか寮で合宿って意味あんの?」


「この寮、人がいないから都合がいいんだよ」


『オレ達しか住んでねーからなー。何で新館の方にいけなかったんだろ…』



今さら何を言おうと遅いが…メフィストのやろォ…あ、来た。



「うわ、なんやコレ。幽霊ホテルみたいや!」


『その通り、ここ出るよ』


「え"ッ」


「ヤダなにココ、気味悪〜い!…もうちょっとマシなとこないの?あ、コレお願い」


「うん」



何気なくしえみに荷物を渡す。合宿とあって皆荷物が多い。それはしえみもだ。なのに出雲の荷物まで持つのは…



「………!!も、杜山さん!嫌なら嫌って言わないと…!」


「朴さん!私、嫌じゃないよ!お友達の役に立ってるんだもん」


「………そっか…」


《あの出雲、嫌い!》


『オレもだ』



寮の中に入っていくみんなの背をゼルと見つめていた。オレと同じことを燐も考えているようで、変な顔でみていた。




  
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