魔の預言者 本

□第六話
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「…はい、終了。プリントを裏にしてまわして下さい。今日はここまで。
あすは6時起床。登校するまでの1時間、答案の質疑応答やります」


「ちょ…ちょっとボク夜風に当たってくる」


「おう、冷やしてこい…」



どれほどの時間を勉強につぎ込んでいたのか… 今まで夜はフリータイムだったのに、この様子じゃ合宿中は全てつぶれそうだ。



『(皆と話す時間が無くなる…)』


《つまんないー!》



床に糸が切れた操り人形のようにバタッと寝そべる。お腹にはゼルが乗っかった。



「朴、お風呂入りにいこっ海は行くの?」


『オレ後で』


「お風呂!私も!」



出雲、朔子、しえみがお風呂に向かった。



「うはは。女子風呂か〜 ええな〜 こら覗いとかなあかんのやないですかね。合宿ってそういうお楽しみつきもんでしょ」


『…ゼル、女の敵だ。思いっきりひっかけ』


《うりゃぁ!》


「いッたぁーーーー!何するんや!」


『制裁』



床から起き上がり、志摩を睨みつける。その頬には大きなひっかき傷があった。



「…一応ここに教師がいることをお忘れなく」


「教師いうたって、結局アンタ高1やろ?ムリしなはんな?」


「僕は無謀な冒険はしない主義なんで」


『…っつーこった、無謀じゃなきゃ冒険すると?』


「…」



黙りこくる雪男。…冒険すんのかよ。おい。嘘でもしねーって言っとけよ。教師だろーが!!



『…』


「ん?どこ行くん?海ちゃん」


『そこらへん歩いて来る』


「行ってらっさーい」



手を振る志摩を一度振り返ってから部屋を出た。そのまま一直線に向かうのはお風呂場。



『暴れんのいつ振りか?』


呟いた言葉は、静かな廊下に吸い込まれていった。










〜女子風呂〜





女子風呂の前には早くも出雲達が着いていた。出雲、朔子に続いて中に入ろうとするしえみは出雲が止める。



「あたしあんたに裸見られたくないんだもん。そういうの友達なんだから分かってよ」


「………う……」


「あ、でもずっと待たすのも悪いからフルーツ牛乳買って来て。お風呂あがったら飲みたいから」


「うん」



返事を聞く前に扉を開けてお風呂場の中に入っていく二人。朔子だけが顔を顰めていた。その場をちょうど夜風にあたりに行っていた燐が通る。



「しえみ、何やってんだ」


「何でもない…フルーツ牛乳買って来なきゃ…!」



その場から離れようとするしえみの腕を掴んでその場に止める。



「お前…それやめろ!パ…使いっ走りみてーの!変だろ!!」


「使い走りじゃない。友達を助けてるんだよ」


「助けてねーよ!!お前、本気でそう思ってんのか?思ってねーだろ!」



廊下に燐の怒鳴り声が良く響く。それは離れたところにいる海の耳にも入って来ていた。



『あー、もうそろそろ始まっか』


《なにが?》


『いろいろと面倒なことがだよ』



体育実技の時から、寝たりお風呂に入ったりするとき以外は手袋は付けておくようにしてある。










数分後、お風呂場の方から悲鳴が聴こえたのを確認して、ゼルを巨大化させて急いで向かった。




  
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