魔の預言者 本
□第八話
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「まさか抜き打ち試験だったなんてな…」
「すっかり騙されたな!!」
医務室で燐と海以外のメンバーは治療を受けていた。中でもしえみは一番疲労が多く、ベットで横になっている。
ちなみにオレは燐が座るはずだった場所に座っている。…オレの袖はいつ離されるんだろうか。
「ああ〜 僕、大丈夫やろか…」
「何や、そんなもん今考えたってしょーもないで」
「坊や志摩さんはええですよ。…僕ときたらろくに腰立たんようになってたんですから…」
「あんた達は大丈夫でしょ」
「…奥村先生は、試験前… チームワークについて強く念を押してたわ。
…つまり候補生(エクスワイヤ)に求められるのは “実戦下での協調性” …! …それで言うと、あたしは最低だけどね」
目を伏せる出雲。近くに行ってやりたいが、出来ないのでゼルを行かせた。ゼルは出雲の膝の上に乗り、すり寄っている。
「お前はまだ全然マシやろ。あいつら何か完全に外野決めこんどったんやぞ。なんか言う事無いんかお前ら、え!?」
「やった〜鱗龍の爪ゲット―― 改造♪改造♪」
「…チッ、うるせェガキ共が!!テメーらと話す事なんかありゃしねーんだよ!」
返ってきたのはゲームの報告と腹話術での悪態。…てか、あの人形持った奴話せたんだ。
間近で見るとホントに不思議な奴。…口が悪いのは気にいらねェが。
「ん…」
『お、起きたか?』
少し大声でしゃべっていたせいか、しえみが起きた。少し眠そうにしている。
「わり… 起こしちった!」
「ううん、もう大丈夫…… だいぶ元気になったよー。皆何のお話してるの…」
「…試験の事についてな」
「…一番の功労者は杜山さんやな」
「杜山さんがおらんかったらと思うとゾッとするわ。ほんまにありがとお」
珍しい光景だ。あの、あの竜士が頭を下げている。…ちょっと失礼だったな。
「え?そ…そんな…こちらこそ! ……それに海の方がすごいよ!4体もの屍(グール)倒しちゃったし…」
『オレか?あれはフラウロスのおかげだ。オレ自身の力じゃねーよ』
「となると二人は絶対合格だな」
「ハハ… でないと俺ら全員落ちます」
しえみが照れたように顔をうつ向けた。それと同時に袖が解放された。別にどこ行こうってわけじゃねーけどさ。出雲んトコ行こうかなー。
「そおいや奥村くん、どないしてあの屍倒したん?」
「えっ、…あ―――あれ…俺はあの、剣(こいつ)でグサッと……」
「はぁ――― すごいなぁ。騎士(ナイト)の素質あるんやね…」
「何や剣(こいつ)でグサッとて!抽象的すぎるわ!俺はお前が一番謎や」
「まあな!俺ってこう見えてミステイクな男だからさ」
燐の間違った発言を突っ込んでいる廉造を見ている出雲に近づく。肩に手を置くと ビクッ となった。
「い、いきなり…!驚かさないで!!」
『わりぃな。それより… 何で燐が屍を倒せたか、気になるか?それにオレのことも』
「…ええ。私の中での謎はそれね。訓練生(ペイジ)が中級をサポートなしで倒したのも気になるし…
何より授業も受けてないのに使い魔を扱える貴方のことも気になるわ」
隣に椅子を持ってきて座る。ゼルが肩に飛び乗った。
『そうだな… 燐は特別だからな』
「…特別って?」
『そのうち分かるさ』
そう、そのうち… きっと、遠くは無い未来………
「…海は?何でそんなに使い魔が居いるの?」
『オレか… 悪魔”を 悪魔”と思わないことかな…』
「悪魔と思わない…?それとどう関係があるの?」
『オレの僕(仲間)になったのは皆家族だ。悪魔じゃない』
それを聞いた途端、ゼルがいきなり顔に向かって飛び付いてきた。イタッ!痛いっての!!
「家族… 結構考えてるのね」
『オレはそこまで浅い気持ちでつき合ってるわけじゃねぇよ』
久しぶりに、心から笑えた気がした。
『…じゃ、オレは行くところがあるから、行くな』
「…みんなには言って行かないの?」
『聞かれたら出雲が言っといてくれ』
ドアを静かに開けると、皆に気付かれない様に部屋を出た。