魔の預言者 本

□第八話
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「ネイガウス先生! …少しお話いいですか」



先を歩くネイガウスにやっと追い付いた雪男は、その場に呼び止める。理由は、あることを聞き出すため。



「……昨日と今日、先生の行動は明らかに試験の域を逸脱してました。一体どういうおつもりですか?
いくら審査員のフォローがあるからといって独断で生徒を余計な危険にさらして… 試験そのものが破綻するところでしたよ。
それに奥村燐と如月海の炎(ちから)を他の生徒の前で露見させるとこだった…」



皆が危険にさらされるようなことがあれば、2人は自身を省みず救おうとするだろう。
そうなれば、力を使う事は必然的になる。敵が強くなればなるほどに、だ。



「…兄と如月さんの力は我々一部の教員にしか知らされていません。貴方もフェレス卿かそう固く誓わされてるはず」


「私の行動はそのフェレス卿の命によるものだ。…殺す気でやれといわれている」


「…………何だって?」


「おそらく君が炎のブレーキ役として選ばれたのなら私はアクセル役といったところだろう。
全ては奥村燐と如月海の能勅をより正確に把握するためだ」


「………どういう事です…!?」


「どういうことも何もない。あくまで今後、騎士団の “武器” として使えるかどうかを 測っている。
天才祓魔師(エクソシスト)の君はただでさえ忙しいそうだからな… せめて悪魔のお守ぐらい分担しようという訳だ」


『…武器とかお守とか、ひでぇ言われようだな?』


「! 如月海… 一体いつから聞いていた」


『最初からだ』



階段の陰から ヌッ と現われる。ネイガウスと雪男は多少驚いたようで、少し後ろに下がった。



『…少なくともオレも燐も炎(ちから)も感情も扱えている。ま、“今は” だがな。これからどうなるかはわかんねェよ。
それと… オレ達の能力をあんまり下に見ねェ方がいい』


「――― なに、本当に殺すわけじゃない… 安心するといい」


『殺しに来た時は………… こっちもそれなりの対処をするまでだ』



去っていくネイガウスに多少の殺気をこめた言葉を送ってやった。もちろん、雪男にはあてない様にしてある。
ネイガウスは一瞬ビクッとなり後ろを振り返ると、そそくさと去っていった。



『…気がちいせェ奴』


「何か、したの?」


『フ、小さな贈り物(プレゼント)だよ。ホントに小さな、ね』


「(何やったんだか…)」



額に手をあて、ハァとため息を吐く雪男に、今までの恩も込めて早めに忠告をしてやろう。



『雪男、今日は燐のことを気にかけた方がいい』


「は?一体それはどういう事…」


『アイツが何かしでかすのは目に見えてるだろ?…バカなやつはすぐ行動に移るからな』


「それは… 貴方も…」


『…オレの事は心配しなくていい。オレはあいつみてーな奴を追い払うだけの力は十分ある』



にやりと笑い、ネイガウスに続いてその場から立ち去った。その場にやっと理解した様子の雪男を残して。




  
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