魔の預言者 本

□第十一話
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そのあと、笑い転げる少年をあの世へと送り届けることに成功した。



『しえみは雪男んトコ行ってな』


「でも…」


『行っててな?』


「…うん」



ついてこようとするしえみを雪男の元へ行かせ、自分は燐の元へと向かった。



「あれれ、どうしたんですか?さっきのはもうおしまいですか?」


『…蹴るのはやめてもらおうか?アマイモン』



こっちの方へと飛んできた燐を受け止め、その場に座らすと前に出る。



「おや、キミは…『それ以上は言わないで貰おうか』…分かってますよ。兄上にきつく言われてます」



余計なことまで言われそうだったので、一瞬にしてアマイモンの前に出る。そして三叉槍を刀に変形させてその切っ先を向ける。



「何のマネですか?」


『なにも真似しちゃいねェよ』


「じゃあなんのようです?」


『そうだな…まずはその刀を返してもらおうか』


「嫌です」



斬りかかってきたアマイモンを刀で受け止める。



『お前ってこんなに力弱かったのか?』



片腕で支えられるほどの力量。まさかここまで弱いとは思わなかった。



「(何かいつもの海じゃねーみてーだ…。じゃあ、今のあいつは誰だ?)」


『まあ、オレはお前と手合わせするつまりは“今は”ない。そのうち、嫌でも手合わせせざるおえなくなるだろうがな』


「どういう事でしょうか」


『さぁ?言えねーな』


「意地でも言わせてあげますよ」


『ムリだろーな。だって…』





キイィン





『…アイツが来たからな』



海とアマイモンの間に山田が割って入る。いつもと違うオーラを纏って。



「…キミは誰ですか?」


「お前、地の王アマイモンだな。お前みたいな“大物”がどうやってこの学園に入った。メフィストの手引きか」


「邪魔だなぁ。ボクはキミの後ろの奴に用があるんです」


「邪魔はお前だ」


『それにオレはお前に用はない』



二人して燐の前に立ち、刀を構える。



「やっぱやめました。またの機会に…」



刀を鞘に戻して燐の方に投げる。そしてそのままどこかへと消えていった。



「…チッ、にゃろぉ完全に遊んでくれたな…!」


『燐、尻尾しまえ。すぐに人が来る』



自分の尻尾も服の中に隠しながら燐を見る。山田はどこかに去っていった。



「燐!!」



山田と入れ違いにやってきたのはしえみ。後ろの方に数人の気配がするので、オレの言った事を守ってくれたらしい。



「触んな!!」



触れようとしてきたしえみの腕を振り払う燐。先ほどのアマイモンとの戦いの事がまだ残っているのだろうか。



「ごめん、なんでもねーや。それよりお前こそ平気だったか。あのガキどしたよ」


「あ…消えちゃった…“ありがとうお姉ちゃん”って…」


「…そーか」


「今度、絶対遊びにこよーね!あ、海ちゃんも!」


『うお……うん』


「嫌だった、かな?」


『う、いや…別に暇だから…』


「そっか!良かった…」



此処は“二人で”こようね…だったじゃねェかよ!何でオレも!?やっぱ壊れてきてる…



「しえみさん!」


「……雪ちゃん…」



遅れてやってきた雪男とオカマ(椿)。



「雪ちゃん…燐が怪我してるから手当てしてあげて…!」


「…兄さん…何があった…」



言えずにいる燐の前に俱利加羅の入った袋が差し出される。持っているのは山田。



「遅ぇぞ、雪男。お前が遅いからこっちが動くハメになったろーが」


「…………ま…まさか」


「久しぶりだな。まあ、いい加減この格好も飽きたころだったしな」



感づいた様子の雪男。山田は上に来ていたパーカーを脱いでいった。



「アタシは上一級祓魔師の霧隠シュラ。日本支部の危険因子の存在を調査するために正十字騎士団ヴァチカン本部から派遣された上級監査官だ」



嵐の種がやってきた。




  
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