魔の預言者 本
□第十二話
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『…追い出さなきゃいけねぇって、なんか重要な質問でもあんのか?』
「お前は聞かれてもいいのか?」
『ヤダ』
「ならいいだろ」
魔剣を手に持ったままオレの前に座る。それにならい、オレも座る。いまだにゼルは唸っている。
「…お前は、なんだ?」
『単刀直入だな』
「いいから質問に答えろ」
『何だ、か…。何だと言われれは悪魔であり人間だな。どちらでもねえってのが正しいか』
シュラの目つきが鋭くなる。
「それ以外にもあるんだろ?」
『勘が鋭すぎんのもめんどくせェな…』
「お前が存在していることは、上には報告されていない。どういう経緯で“魔の預言者”であるお前がここにいる」
『何だ、オレの正体知ってんじゃねぇかよ』
右膝を立て、上に右腕をのせ、その上に顎を乗せる。
『オレは“この世界の”全てを知っている』
「どーいうことだ?」
『過去、未来…全てだ』
とんだ爆弾にシュラは冷静さを失った。
「未来、だと…?」
『ああ、そうだ』
「見れると言うのか?」
『正確には“知っている”だ』
なんせ、転生してきたもんだからなぁ…?
そういえばシュラはまたもや固まった。
「転生だと…そんな非科学的なことが…」
『起っちまったんだから、しょうがねぇだろ』
オレだってこんなことになるとは思ってもみなかった。
「他に知っている人物はいるのか?」
『お前とメフィストぐれーだ。今のことも、魔の預言者のことも』
「そうか…。今後一切そのことを誰にも話すなよ」
『言うつもりはもとからねぇよ。オレはもともと存在しないからな』
「あ、おい、まだ聞きたい事が…」
立ち上がり、出口を目指す。
『これ以上言うつもりはねぇよ。たとえ命令だとしてもな』
ドアを開け、監房から出る。その一歩手前で止まる。
『一つだけ忠告しておく』
「?」
『オレを失って困るのはお前ら騎士団だということを忘れるな。オレはたとえ些細なことでも気に入らなかったら此処を出る』
間違っても、オレの仲間に手ぇ出すようなことをするんじゃねぇぞ…
そう捨て台詞を吐いて、監房を後にした。
「…ずいぶんと我儘な預言者様だなぁ…」
一人残されたシュラは呟く。
「しかし、あれほどの悪魔を手なずけるとはな…才能あるな」
とりあえず…
「メフィストのヤローを問い詰めるか」
シュラも大監房を後にした。
余談だが、後日祓魔塾にシュラが“教師”として来たことに、海がげんなりしたのは言うまでもない。