魔の預言者 本

□第十二話
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とにかく暇なので、自分の持ち物を整理していた。



『ん?なんだこれ…こんなの持ってたっけ…?』



出てきたのは使い魔を呼び出すための紙。かなり前のネイガウスの授業で使ったものだった。



『確か渡されたのは2枚だったはずだけど…何でもう1枚あんだ?』



とにかく暇で仕方がなかったので、呼び出してみることにした。ノリで。前世で気になっていたあの悪魔、出てこねェかな…



『"オレに仕えし全ての悪魔…今、呼びかけに答え、姿を示せ…フェンリル"』



気になっていた悪魔とは“フェンリル”ネットで調べていたら出てきた悪魔。調べていた理由は、青エクにハマりすぎたせいである。



『…って、出てくるわけねぇよな…』





ボウッ





『おわっ!?』



突然火を噴いた紙きれ。それは跡形もなく消滅してしまった。



『失敗ってか?』


《いや、成功だ》


『……ゼル、お前今話したか?』


《ううん、何もしゃべってないけど》



首を振るゼル。声は四方八方から響き、場所がつかめない。



『じゃあ誰だ?今オレに話しかけたの』


《我に決まってるだろうが》


『我って誰だってんだっ!!』


《お前バカか?この我を呼び出しておいて惚けるとは》


『…(ブチッ)』



あー、キレたかんな?オレの堪忍袋の緒。



『さっさと表に出ろやこらぁッ!!』


《出ているだろう、お前の目は節穴か?》


『あぁ?!』



声のする方が定まり、そちらを向くと、居たのは…



『でけぇ…』


《我の偉大さに恐れおののけ、人間》


『いや、オレ人間じゃねェし』


《…まともに答えた》


『つーか、誰?』



オレの目の前に優雅に座りこむ狼。



《我の名はフェンリル。お前に呼ばれてやってきた》



呼んで出てくるもんなのかよ。



『出てくるってんだから、仲間になる気はあるんだな?』


《お前ほど面白い奴はいない》



面白い奴って…ひでーな、おい。そんなことを内心思いながらも、星に移す作業を終える。この頃慣れてきたなー。



《お前に仕えるからには、全ての命令を聞き入れ、お前に仇なすものはずべて…消してくれよう》



その瞬間、感じたことのない感覚がせり上がってきた。



『…ッ、ハハ…お前ほど忠誠心のある奴は…いねぇかもな』


《我の主となったものは今までいない。退屈な世から救い出してくれた礼だ》



その大きな頭を垂れ、オレの額に鼻を寄せる。



《お前の身が朽ちるまで…いや、朽ちて地獄に落ちても、我はお前の仕え続ける》


『オレは地獄に落ちること前提か…ま、ありがとよ』



すり寄ってきた頭をなでる。



『なぁ、お前小さくなれるか?』


《それぐらい朝飯前だ》



ポンッ、っと音を立てて小さくなるフェンリル。大きさはだいたい巨大化する前のゼルと同じだ。



『…うん、これなら大丈夫だな』


《何がだ?》


『小さくなりゃ、お前とともに行動できるだろ?他の奴はダメだったんだよ』



体を持ち上げ、赤い瞳を覗き込む。



『これからよろしくな、フェンリル』


《ああ…こちらこそ》



そのとき、ちょうど話し合い(という名の戦闘)を終えた二人がやってきた。



「何だ?そいつ。今までいなかったよな」


『コイツはフェンリル。新しくオレの使い魔になった』


「そうか」


「…フェンリルだと?そんな超上級悪魔、いつ手懐けた」


『今』



シュラの顔がピシリと固まる。そんなに驚くことか。



『それより、オレの話はどうする』


「…燐、お前先に帰れ」


「なんでだ?」


「コイツに話がある」



聞かれたくないからだろうか、燐を追い出した。




  
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