魔の預言者 本

□第十三話
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魔法円の作画をしながら、向こうでテントを立てている男子を見る。向こうのほうが楽しそうだ。



『おい、シュラ』


「先生、又はさんだろ」


『別にいいだろ。それより、お前もやれよ』



筆を一本差し出し、シュラを睨む。



「そんなのあたしがやるわけないだろ」


『……』


《あの女…食い殺してやろうか》


《絶対噛み殺す!》


『止めておけ』



今にも跳びかかりそうな2匹を止め、仕方なく魔法円の作画に戻る。



『……ボティス』


《なんだ?》


『お前、魔法円書けるか?』


《出来なくはない》


『やれ』



シュラに渡すはずだった筆を差し出すと、ボティスはため息をつきながらも器用に尻尾で筆をとる。



《…どこを書けばいい?》


『ここ』



しえみと出雲、オレだけではかなりかかるだろうこの作画。ボティスが居れば多少は早く終わる…はずだ。
一体あの多少小さな体(とぐろを巻いていなければ大体2m)でどこまでできるのかは分からないのだが。



「それ、海ちゃんの使い魔だっけ?」


『ああ、そうだ』


「使い魔使うの?っていうか書けるの?この蛇」


『ボティスをバカにすんじゃねぇよ、出雲。コイツは見かけよりかなり長く生きてる。出来るだろ』



筆に墨を付け、すらすらと書いていくボティス。………早い。



《…こんなものか?》


『…お前、すげぇな』


《書いたことはないが、見たことはあるからな》



なんせ、我は1000年を生きる悪魔だからな。自慢そうに言ってくるボティスに感服した。



『アリガトな。戻ってろ』



全てを書き終えると、今度は女子たちに食事を作れという指示が下った。



「痛…」


「かれー?」


『……お前ら、料理したことあるのかよ』


「「ない/ないわよ」」


『……はぁ…』



即答…しかもハモってる…こんなときだけ合せないでほしい。



『しょうがねぇ…お前ら、サラダ作ってろ』


「オレも手伝うぜ」


『燐…助かる』



出雲から包丁を取り上げ、代わりにキャベツを持たせる。燐も加わり、楽に食事を作ることができた。










「「「「「『いただきまーす』」」」」」



あれから早2時間チョイ。夕食時になり一斉にカレーを口に運ぶ皆。オレはそれを見ている。(燐は早くも二口目)



「うめぇ!!まじか……」


「これは…まさにどこへ嫁がせても恥ずかしくない味や!」


『嫁にいくのオレだけだろ。燐は婿だ』


「奥村くんと如月さん、お料理上手やったんやねぇ」


「ま…まーな!得意だからな!!」


「奥村くんの唯一の生産的な特技です…」


「黙れメガネ!」



褒められてまんざらでもない様子の燐。ワイワイ騒ぐ皆を見て、この後の展開のことを考える。



『(いろいろと大変だからな…この後…)ラウム』


《…呼んだ?》


『上空を偵察してろ。しえみはオレが行くから、他の皆を頼む』


《了解》



飛び去ったラウムを確認し、オレもカレーに口を付ける。…うん、普通。



「おい奥村ァ、お前飲みもん何いる?如月、お前もだ」


「俺そっちに選びに行く!」


『茶』


「ほいよ」


『どーも』



投げ渡されたウーロン茶で喉を潤す。



「楽しそうだなぁ…」


「え?」


「あ…最近ね、燐と海ちゃんの様子が違って見えたから、少し心配してたの」


『(オレも……?)』



少し違う展開には、もう慣れた。



「でも今日は楽しそうでほっとした…!」


「……しえみさんは兄さんと海をよく見てるんですね」


「ふん?」


「…いえ、何でもありません」



そのあと、30分ぐらいの夕食は続いたが、雪男がしゃべることはなかった。




  
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