魔の預言者 本

□第十四話
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〜拠点〜



「…ぷッ、クックックック。ほら見ろ!訓練開始10分と経たず炎使ったぞ、あいつ!」


「〜〜〜〜!」



数分前のこと――つまり、燐が炎を使ってすぐのこと。拠点に居たシュラと雪男はその炎を見ていた。



「まぁ大丈夫だろ。この暗闇じゃ、逆に目眩ましになるはずだからな―――」


「……兄の能力を隠し通すのに、限界を感じる」


「フけたなー雪男ぉ。3年前はあんなに可愛かったのに、今じゃすっかり疲れ切った、サラリーマンみたいだぞ?」


「放って置いてくれ!!」



自分の方が若いのに…オバサンにフけてるって言われたくな………うん、思うの、やめておこうか。



「…シュラさんは、どういうつもりなんです?なぜ本部へ報告せず、こんなところで油売っているんです」


「アイツ…燐に剣を教えることにしたー♪報告は現状保留だ」


「ほ、本当ですか!ど…どうして…」



新しい缶に手を伸ばすシュラ。周りにはすでに5本の空き缶は転がっている。



「アイツ、アタシに聖騎士になるってほざいたんだぞ!」


「…何をやってるんだ、兄さん…!」


「大志を抱く少年は嫌いじゃないんだ。獅郎に頼まれた時は冗談じゃないって思ったけどな。
気に喰わないが、奴らを鍛えるやり方に関しては、奴も賛成かもな」



森の一点を見ながら、そう話す。一方、シュラが見つめた先には、メフィストとアマイモンが居た。



「あの女…ボク達に気づいてる」


「アマイモン、この森の主に挨拶は済んだか」


「ハイ。同法を沢山殺されているので、協力的です」


「今回は私も観戦させてもらおう」



コウモリ型の傘に掴まり、宙に留まっているメフィスト。器用な男だ。



「…しかし、降魔剣(クリカラ)はあの女が隠してしまっている。どうやって2人をキレさせようかな」


「やる気満々なのはいいが、今回は私の言うとおりに動けよ。地震は起こすな。それに……」



メフィストが説明するも、アマイモンの目線はシュラに集中している。聞いているはずが、なかった。










〜森〜



「坊!」


「子猫丸さぁん!」


「皆さん…よかった…!こっちです!」



子猫丸が指さした方には、自分の身長よりもはるかに高く、到底動かせなそうな一個の石燈籠。



「“化燈籠(ペグランタン)”や。夜間、人が火を灯すのを待ち構え…火が灯ると動き出し、生き物を喰って燃料にする。特に女が好物。
燃料が尽きるか、朝になると動かなくなる………ゆう悪魔や」


「化燈籠見て…なんや僕ら、ルールの解釈間違ってたんやないかな思て」


「そやなぁ…この訓練、みんなで協力せなあかんわ…!」


『“協力しねぇ”って言ったの誰だよ。しかも、本当の意味に気付くの遅すぎだろ。お前ら』


「解ってたんか…!?」


『ああ、始めっからな』


「ならなんで教えてくんなかったんや!」


『教える前に、お前ら行っちまったんだよ』



ため息をついて説明すれば、黙る竜士。さすが分かる奴。



「あの…ぼ、僕…とりあえずこの6人で運ぶフォーメーションを考えました」



子猫丸の指示通りに並ぶ。……オレどこ?



「まず、化燈籠をリアカーに乗せ、火を付けた時動き出さないよう封印します。経を唱え続けるのは、完全に暗唱している坊が」


「おう」


「そして、火を付ける前に化燈籠の燃料を集めます。燃料には虫豸(チューチ)を使います。これを化燈籠に補給するのは森山さんが」


「うん」


「更に、火を付けて明るくなると、虫豸が集団で襲ってきます。コレのガードを僕と志摩さんと如月さんで行います」


「う、…」


『ん…』


「それと、如月さん…お願いがあるんやけど…」


『なんだ?』


「その二匹の使い魔も、協力してもらってもいいですか?」


『ゼルとフェンリルか?』



足元に居る小さいフェンリルと、今だ向こうで虫豸を喰い続けているゼル。…ゼルは協力的だな、きっと。



『どうする?フェンリル』


《海がやれというのならば》


『じゃあやれ』


《…解った》



あからさまに嫌そうな顔をしたが、オレの命令ということもあり、2匹とも協力してくれることになった。(ゼルに関しては勝手に、だが)



『別にいいらしい』


「よかった…なら、2匹には前方と後方を守ってもらいます」


『なら、本来の姿に戻れ。ゼル、お前もだ』



途端、白い煙が上がり、それが晴れると、本来の姿に戻った2匹がそこに居た。



「で、でけぇ…」


「流石、如月さんやな…」


「オレにも、使い魔一体貸してくださいよ…」


「お前、超人やな」


「やっぱり、海ちゃんはすごいね!」



上から燐、子猫丸、廉造、竜士、しえみだ。廉造が貸してほしいのは、アムドゥスキアスだろうが。



《煩いな…》


《フェンリルって、オレよりおっきいんだね!》


《当たり前だ。我は上級悪魔だからな》



前、契約した時に見た彼より、何倍も大きかったフェンリル。…首痛くなるっての!



「なぁ、この白い狼に乗っちゃアカン?」


『ダメだ。オレが許しても、フェンリルが許さない。無理矢理乗ったら、振り落されるか、虫の中に突き落とされるか…地獄行きだ』


「…やっぱやめとくわ…」



肩を落として立ち位置に戻る廉造。まぁ、頑張れよ。
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