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□標的47
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《起きろ》
威厳たっぷりの声が耳に心地よい。
《起きろ》
それに温かい、息も苦しくない。
《……起きろ》
このまま、もう一度眠りにつこうか…
《さっさと起きろのこのバカが!》
『痛っ!』
心地よい眠りにつこうとした時、頬を思いっきり叩かれた。
《やっと起きたか》
『あれ、創龍?何の用?』
《お前に試練を与えに来た》
『試練…』
《これから見せるのは、全てお前がしていたことだ》
創龍の尻尾の炎が、白と黒に分かれた。途端、リングとおしゃぶりが光り、頭の中に直接映像を流し始めた。
『な……え……』
《目を反らすな》
『うッ……がぁ……ぁあっ!』
頭の中に流れ込んでくるのは、血にまみれた赤い部屋。そこで幼い僕が剣を振るい、大人達を次々と殺していく映像。
その表情は実に面白く、楽しそうに笑っている。返り血が自分を汚そうがお構いなしに、次々と命を刈っていった。
『何、これ……』
《6歳のとき、とあるファミリーを虐殺したお前自身だ》
『そんな、バカな……嘘だっ!』
《嘘なんかじゃない。真実だ》
『ああ、あぁああああああああっ!』
声の限りに叫ぶ。それでも、映像は止まらない。
「止めろ、止めてくれぇッ!」
目の前で事切れる命。
「殺さないで!」
「いやぁあああああっ!」
運悪く来ていたらしい、ファミリーの家族。
「どうか命だけはっ!俺には、妻と子供がいるんだ!うぎゃあッ!」
命乞いをする者。
「よくも、よくもっ!殺してやる!!」
復讐しようとする者。
「何で、お前のような子供が……ぎゃあっ!」
僕を哀しい目で見つめる者。
僕を見る目は全て違っていたが、一つだけ共通していることがあった。それが……
僕を、自分達を殺した僕を、憎む心
『ごめんな…ごめんなさい、ごめんなさい』
《真実から目をそらすな。受け入れろ》
『無理だ、こんなの、』
《それもまたお前自身だ》
『嫌、こんなの知らないっ!こんな僕は知らないっ!』
その時だった。カレンを包んでいた雰囲気が、一気に急変した。
《もしや……》
『フフ、久シブリダネ、創龍』
《(クソ、やはり……)》
『“僕”ヲ極限マデ追イ込ンデクレタコト、感謝スルヨ。オカゲデ俺ハコウシテマタ出テコレタ』
《…失敗、か》
『失敗ナモノカ、大成功サ。俺ニトッテハネ』
ニタリ、と気味の悪い笑みをこぼすと、カレンは消えた。現実世界に戻っていったのだ。
《やはり、まだ無理があったのか》
試練に耐えられなかったから、アイツは出てきたのだ。
《カレンはまた、眠ってしまった……》
7年前、アイツを封印したのは紛れもない創龍自身だった。
《この時代のカレンは、アイツを認めた。だからこそ、本当の力を操れた》
しかし、10年前から来た彼女は、アイツを受け入れることができなかった。
《アイツを止められるのは、ボンゴレ。お前だろうな……》
創龍は小さくため息をつくと、シュン、と音を立てて消えた。