魔の預言者 本

□第十五話
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『…だ、れ…が…』


「ん?」


『誰が…』


「誰が?どうしたんですか?」



アマイモンが顔を近づけた瞬間、顔を俯けていた海が、突然正面を向きアマイモンの顔を思いっきり殴った。
それと同時に拘束も解け、言葉の力(言霊)を使い、宙に浮く。



『誰が、望んでテメェなんかの嫁になるかよ。ざけんな』


「海!もう大丈夫なのか!?」


『ああ。何とか炎を出せたから、命拾いした』


「……ふざけんなは…こっちのセリフです」



突然顔を押さえていたアマイモンが、海に向かって拳を振るった。



『あがッ』


「頭きました。いくら魔の預言者といえども、許しませんよ」



無抵抗の海に攻撃を浴びせ続けるアマイモン。燐も、ただ見ているしかない。



『(こんな力を…!)』


「早く本気を出してくださいよ。もったいぶらないでください」



そうは言いながらも、岩に叩きつけるアマイモン。


『く、あ、』


海は息ができず多少涙目になりながらも、屈しなかった。










「…あ…の…クソが!」



その同時刻、とうとう耐えきれなくなったのか魔法円の中に居た竜士が飛び出した。



「ちょっと!!待ちなさいよ!!何考えて…絶対外に出るなって言われたのよ!」


「坊!!あかんよ!!」


「坊!冷静になって!ネッ?」


「…オレは今、猛烈に腹立っとるんや!!冷静何ぞ、犬にでも喰わせろや!!」



廉造の腕を振り払い前に進む竜士。目が本気だったのは確かだ。



「だー!!もう、なんて人や!!」


「志摩さん!!」



続いて廉造までもが竜士の後を追うために魔法円から出ていった。



「………!!」


「!? は?嘘でしょ!?殺されるわよ!!やめてよ!…あたしは、こんなところで死ねないのよ…!」



ついには子猫丸までもが竜士、廉造の後を追って魔法円の外に出て行ってしまった。その後ろ姿を出雲はただただ見つめていた。










「…変だな。この女はキミの大事な人間…いや、悪魔じゃないんですか?」



そう言うアマイモンの手には、血だらけになった海が片腕を掴まれて中にぶら下がっていた。



「くたばれ…!」



燐も色々と攻撃されたのか、かなり怪我を追っている。



「なーんだ。…じゃあ、もうこの女は用済みだな。せっかくだから目玉を一ついただこうかな。
人間の目玉を集めてるオカルト趣味のイトコに頼まれてたんです」


「!? や…やめ」



全てを言い終わらないうちに、燐の横を何かが横切った。



「俺らは蚊帳の外かい。まぜろや」


「よせ…バカ!!」



そこに居たのは竜士、廉造、子猫丸の三人。



「奥村くん!もしスキが出来たら逃げるんや!」


「俺はあくまで、海ちゃんを救うためやからね…!」



それぞれの手には訓練で配られた花火。先程横を通ったのはそれらしい。



「いいから逃げろ!」


「あっ」



その時、子猫丸の持っていた花火がアマイモンの頭のとんがっている部分に命中した。



「………あっ」


『(ブ、ブロッコリー…)』


「フグッ、ブロッコリ…!」


「志摩…!」



一瞬の出来事だった。



「ゲホッ」



アマイモンは海を掴んだまま、志摩に蹴りを入れた。ただそれだけのはずなのに、志摩は何メートルも吹っ飛び、木に衝突した。



「志摩さん!!」


『し……まァっ!』


「!!、猫!!」



次に現れたのは竜士の目の前。咄嗟に子猫丸が竜士の目の前に立つ。



『ダメだ、逃げ、ろ…子猫丸っ!』



海の忠告もむなしく、アマイモンが軽く触れた部分の骨が折れる音がした。



「うわぁあっ!」


「子猫丸!!……ヴッ」



アマイモンが竜士の首を鷲塚む。一人ずつ手にぶら下げているにもかかわらずまったく重そうにしない。


「ボクを笑ったな」


「…ケッ、お前なんかに用ないわ」


『竜士を、離せってんだ…アマイモン!』



海が足を振り上げて蹴りを入れるも、力が入らないためにたいしたダメージが与えられない。
それどころか、アマイモンは海の腹を蹴り、燐のいる方へと飛ばした。



『うッ……』


「俺が腹立ててんのは…テメェらや!」



視線でオレと燐を指していることが分かった。



「手前勝手かと思えば人助けしたり、特に能力もないかと思えば好プレーしたり、謎だらけや…!なんなんやテメェらは!何なんや!!」


「お…俺は」


「…何の話ですか?ボクは無視されるのはキライだな」



そう言うと、アマイモンは竜士の首を絞める手の力を強くした。たまらず竜士は吐血した。




 
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