U
□標的49
2ページ/2ページ
「まさかこのような答えで切り抜けるとはな」
「とにかく、試練は終了よ、カレンちゃん」
『え、今の試練だったんですか?』
「そうよ」
これが試練だとは思いもしなかった。あまりにも簡単に終わってしまったから。
「さて、試練は終わった。お前に記憶を返そう」
『え?返してくれるんですか?T世』
「ああ。返さなければ不便だろう?お前が」
『確かに、これからのことが分からないと、行動は起こしにくいですけど…でも』
「何だ?」
『ときどき思うんです。僕だけ先のことも知っていていいのかな、と…』
「いいのだ」
『?』
「知っていなければ、お前をこちらに呼んだ意味がない」
『それは、一体どういうことで…』
「じきに分かる。今は知らなくていいことだ」
はぐらかされた。幽霊だけに掴みどころのない人だ。掴もうとしても、シュルリと抜けて行ってしまう。
故に、情報がつかめない。知りたいことが分からない。
「これからは好きにするといい」
『じゃあ、消えてしまう予定の人を救ってもいいのですか?』
「言っただろう。好きにするといいと」
『じゃあ好きにします』
「それより、綱吉君とはどう?」
『……いきなり何ですか、母さん』
「その様子だとうまくいってるみたいね」
なんなんだ、この和やかな雰囲気は。いつの間にか母さんとT世を除く皆が消えていた。
「ボンゴレ]世…ジョットの子孫か」
「呼んだか?ビブラード」
「ジョット」
そして、なんでボンゴレT世が出てくるんだ。
「久しいな、ジョット」
「そうだな。おや、この娘がドゥラド]世か。金髪はお前譲りだな」
「お前も金髪だろう」
「だな」
いや、此処で談笑し始めないでくださいよ。僕どうしたらいいんですか。
「それより、]世」
『な、なんですか、ボンゴレT世』
「ジョットでいい」
『ジョ、ジョットさん』
「何だ?」
『いや、なんだって、ジョットさんが話しかけてきたんじゃないですか』
「そうだったな」
…なんだか、雰囲気が綱吉に少し似ている。超化した綱吉の方だが。
「そうか、似ているか」
『勝手に心読まないでください。プライバシーの侵害です』
「すまない。癖でな」
「カレンちゃーん?浮気はだめよ?」
『う、浮気!?』
「オレは別にかまわんぞ」
『ジョットさん!?』
「ハハハ!ジョット、私の後継者をいじめてくれるな」
「おや、すまぬな」
この人達といると疲れる。素直にそう思った。僕の心情を察してくれたのか、アイラスが僕の前に立った。
「私の子供を困らせないでくれませんかね?」
「]世の親か」
「お初お目にかかります、ボンゴレT世」
「よろしくな、\世」
いや、此処でよろしくしないでくださいよ、母さん!僕を助けてくれるのかと思ったのに…
『…あの、ジョットさん。話とは?』
「あー、そうだったな」
『で、なんなのですか?』
「オレの後継者をよろしくな」
『なんだ、そんなことですか。まかされましたよ』
そう言えば、ジョットさんはなぜか僕の額にキスしてきた。突然のことに僕は急いでジョットさんから離れた。
『な、な、な、な!』
「いいではないか。口付けはもう]世とやっているのだろう?」
『ちょ、な、え!?…からかわないでください!』
「…案外本気なのかも知れんぞ?」
ジョットさんは問題発言を残し、消えた。
「あらあら、モテモテねぇ」
『笑い事じゃないよ、母さん!』
「]世に殺されるなよ」
『物騒なこと言わないでくださいT世!』
あーッ、と頭を抱えるカレンを見て、ビブラードとアイラスは微笑んだ。
「それでは、私らは帰る。私らが消えれば、この世界も消える。お前も現実に帰れるだろう。創造神の力もお前のものになる」
「今度は現実で会いましょうね、カレンちゃん」
『はい…』
「…もう、さっさと立ち直りなさいよ!」
頭を叩かれたと思ったら、2人は消えていた。
『…思ったより騒がしい人だったな、T世って』
その瞬間、カレンの意識も闇に沈んだ。