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□標的51
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「ギィッ」
中身は骸だが、いっちょう前に鳥らしい悲鳴を上げるムクロウ。
『大丈夫か?』
「大丈夫に見えますか?」
『質問を質問で返すな』
一応ムクロウに近づき、咥え上げる。そのまま放って背中へと乗っけた。
「人様の匣を使ってしゃしゃり出ようなどとチャチだなぁ。そんな姑息な手で私に勝てると思っているのか?」
『…(こいつ、正真正銘のゲスだ。気持ち悪いオッサンだ)』
「カレン、押さえてくださいよ」
『分からない』
今にも噛みつきそうなカレンを、骸が窘める。
ズゥン ズズ… ズリュッ
軽く気持ち悪い音がどこかから聞こえてくる。
『あー、メイン匣あるの忘れてた』
次の瞬間にはグロの背後から何本もの大きなイカの触手が伸びてきた。
『慌てないで、凪。ボンゴレリングの力を引き出して戦うんだ』
頷き、立ち上がったクロームはリングに霧の炎を灯し、火柱を出現させた。いつもの火柱とは全く違う。
ボンゴレリングの力も加担し、いつもより強力に、かつ、巨大になった火柱。それはグロを的確にとらえ、攻撃していた。
「確かに死ぬ気の炎の混合された火柱はリアリティが増したな。だが所詮はまやかし。笑わせる」
しかし、グロはいたって無傷。火柱からのうのうと出てきた。
「効か…ない…」
お前の一番信じるものは何ですか?
「!!」
直接頭に語りかける骸。その声は僕の頭にも響いてきた。僕もこうやって話そうか。
幻術のリアリティとは術師の持つリアリティ
揺ぎ無い心で信じるもの。真に信服している事情現象こそが、もっとも強い幻覚になる
「一番信じるもの……?」
僕の僅かな力をお前の幻覚の触媒にするのです
僕も力を貸すよ。霧の波動も僕の体には流れてるし、そこまで酷使してないから量はたんまりある
分かりました。成否は3人のイメージの同調にかかっている
「別れ話はすんだか?」
「!」
僕らが会話をしていることに気付かれてたらしい。サッ、とクロームの傍へと移動した。
「心配するな、クローム髑髏。お前はそのフクロウと虎の前で可愛がってやる。………そう、骸とカレンのまえでな!」
先制攻撃と言わんばかりにイカの触手が伸びてくる。
今です!
その言葉とともに、骸うと僕、クロームから霧の炎が放たれる。
ブシャッ
その瞬間、こちらに向かってきていたはずの触手が全て地面に転がった。斬ったのは……犬。
「あ…」
やはり、お前の最も信じるものもこれなんですね
その言葉に涙を流し、動かなくなったフクロウを胸に抱きかかえながら頷くクローム。
『僕も信じるものの中に入っていたことが意外だよ』
「当たり、前…カレンは、私の……友達」
『そこ、親友って言ってもらいたかった』
「親友…」
「何くっちゃべってるびょん!」
「…めんどい」
「強力ないい術です。これなら僕も遊べそうだ…少々、懐かしいですがね」
そこには10年前の姿の骸、犬、千種、そして何故かカレンの姿があった。