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□標的52
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「間違いない………また過去から誰か来てる」
入江正一は、大きく丸い装置の前で一人呟いた。
「やはりここでしたか、入江様」
「上着は肌身離さずお持ちください。連絡用無線が使えません」
「君達、ノックくらい………」
「しました」
「………何の用だい?ボンゴレ捜索会議は午後からだろ?」
「問題が起きました。第8グリチネ隊隊長グロ・キシニア殿が戦闘により重症です」
「なんだって!?」
思わず声を荒げ、立ち上がる正一。
「でも8部隊は今朝の報告では待機していると」
「グロ殿は単独で黒曜ランドに向かったようです」
「こ………黒曜ランドだって!?」
「記録装置によると、妨害電波によりレーダーが感知できなかったようですが、リングを使用しての戦闘があった模様。
グロ殿のサブ匣は発見されず、メイン匣は大破しています。幸いにもマーレリングは30メートル離れた叢より発見されました」
「一体どういうことだ!黒曜と言えば昔、六道骸が…「聞いた正チャン?」わあっ!」
電源が入ったままのパソコンの画面に突然白蘭が映った。ノーマル回線のため、いつどこで傍受されているか分からない。
「どうして黒曜ランドのこと、僕には教えてくれなかったんですか!?」
「だって僕も知らなかったんだもん」
「え?」
「流石下種だよね、グロ君は。どーやって抜け駆けしたんだか」
「とにかく、この回線は危険です!保護回線でちゃんと連絡させてください!」
「うん」
黒くなった画面にため息をつく。何故自分の上司はこんなにも………ハァ。
「どういうことでしょう」
「分からない!γと違ってグロは昨晩イタリアから来たばかりだぞ。白蘭サンがこういう嘘をつくとは思えないし……」
グロ・キシニアは、短い時間の中で一体どこで情報を手に入れてきたのか。本人に直接聞かないことには解決しない。
「とにかく、グロ・キシニアと面会する!」
「グロ殿は医務室に運ばれましたが、重症でまだ意識が…」
「構うもんか!!」
何か、裏でよくないことが起きている。直感的にそう感じた。
〜ボンゴレアジト〜
「どうだ?」
そのころボンゴレでは、先程送られてきたデータの解読を続けていた。
「画像データのようですね。あと少しで解読できます」
「でもよ、暗殺部隊っつったら…」
「あの人たちしか思い浮かばない」
獄寺が嫌そうに、綱吉も若干嫌そうに呟いた。
「おっ、いけそうですよ。やはり暗号コードはボンゴレのものです」
ここまでくれば、確定したも同然だ。カレンは直に聞こえてくるであろう大声に備え、一人両耳を塞いだ。
―「う"お"ぉおい!首の皮は繋がってるかぁ!?クソミソカスどもぉ!!」
予想以上の声の大きさ。耳を塞いでいたにもかかわらず、頭がガンガンした。
「ボリュームを下げろ!」
今にもブチギレそうな様子のラルがジャンニーニに指示する。
―「いいかぁ?クソガキどもぉ!!今はそこを動くんじゃねぇ!!外に新しいリングの反応があったとしてもだぁ!!」
「黒曜ランドのことだな」
『…というか、スクアーロの口調がザンザスに感化されているような気が…』
―「じっとしてりゃわっかりやすい指示があるから、それまでいい子にしてろってことな!お子様達♪」
「ナイフ野郎!」
ベルの登場に、獄寺が反応する。
―「う"お"ぉい、テメ―――何しに来た!」
―「王子ヒマだし、チャチャ入れ」
―「口出すとぶっ殺すぞぉ!!」
―「やってみ」
なんだか険悪な雰囲気になって来た。だがしかし、此処で思ってもみなかった第三者がやって来た。
―「スクアーロ、声でけぇよ。ベルも挑発するな」
―「口出すんじゃねぇ、悠妃!!」
―「そーそー、王子ヒマなんだよ」
―「なら、オレが相手してやる。スクアーロ、お前ボスに呼ばれてたぞ」
―「げっ」
慌てた様子で去っていくスクアーロとともに、映像は切れた。
「…誰だアイツ。リング戦の時にはいなかったよな?」
綱吉が隣に居る僕に語りかけてきた。そう、確かに“原作”には登場していなかったキャラ。なのに、何故…
「カレン?」
考えられるとしたら、ズレ。今までもそうだった。山本に従妹が居たり、他にも知らない人達がメインストーリーに関わっていたり。
自分がやって来たことで、この物語に大きなズレが発生した。そう考えれば、殆どのことは辻褄があった。
「おい、カレン!」
『…あ、ごめん。考え事してた』
「黒曜ランドに自分の分身送ってるから疲れてんのか?」
『いや、そう言う訳じゃないから大丈夫』
そう言えば変な目で見られたが、流した。