疾風迅雷 本
□第1Q
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「よーし、全員揃ったな。一年はそっちな」
数日後の体育館で、一年生は初めてとなる部活動が始まっていた。
「なぁ、あのマネージャー可愛くねー?」
「二年だろ?けど確かに!もうちょい色気があれば…」
思春期真っ盛りの男の頭ン中は、桃色ピンクでパラダイスだ。
「だアホー違うよ!」
「ぁいて!」
そんな男子二人を、後ろから先輩が殴る。
「男子バスケ部カントク、相田リコです。よろしく!!」
「えぇ〜〜!?(カントク!?)」
一年男子の声が一つになった。
「あっちじゃねーの!?」
「ありゃ顧問の武田センセだ。見てるダケ」
よぼよぼのおじーさんを指さすリコ。
「…じゃあまずは、シャツを脱げ!!」
「え"え"〜〜!?」
またもや声が一つになった。
「何だこれ…」
数分後には、見事に全員がシャツを脱いで立っていた。
「キミ、ちょっと瞬発力弱いね。反復横とび50回20Secぐらいでしょ?バスケやるならもうチョイ欲しいな。
キミは体カタイ。風呂上がりに柔軟して!」
次々と言っていくリコ。その全てが当たっている。
「彼女の父親はスポーツトレーナーなんだよ。データを取ってトレーニングメニューを作る。
毎日その仕事場で肉体とデータを見続けているうちに付いた特技。
体格を見れば彼女の目には、身体能力が全て数値で見える」
見かねた先輩が説明してくれたが、全くあり得ない特技だ。
「…なんだよ」
今まで止まらずに見てきていたリコが、火神の前で立ち止まった。
「(何コレ!?全ての数値がズバ抜けている…こんなの、高一男子の数値じゃない!!しかも伸びしろが見えないなんて……天賦の才能!!)」
「カントク!いつまでボーっとしてんだよ!」
「ごめんっっ で、えっと……」
「全員見たっしょ?あいつでラスト」
「あっ、そう?……れ?……黒子君と宝城さんこの中に居る?」
「あ!そうだ、帝光中と桜嵜中の…」
「え!?あの中学の!?黒子!宝城いるかー!!」
いくら叫んでも出てこない。欠席か…?
「今日は休みみたいね。いーよ、じゃあ練習始めよう!」
「あの…スミマセン。黒子はボクです」
「きゃぁあああ!?」
突然目の前に現れた黒子と名乗る男。
「いつからいたの!?」
「最初からいました」
「(目の前にいて気付かなかった…!?…え?今、黒子君って言った!?えぇ!?てゆーか…カゲ薄っすっっ!!)」
「…え?じゃあつまりコイツが!?“キセキの世代”の!?まさかレギュラーじゃ…」
「それはねーだろ。ねぇ黒子君」
「…?試合には出てましたけど…」
「だよなー……うん?」
「え?…え!?」
「「「「(信じらんねぇ〜〜〜〜!!!)」」」」
全員の心が一致した。リコが慌てて数値を図るも、その数値は一般人にも満たないほどだった。
「じゃ、じゃあ、宝城さんもこの中にいたりする……?」
『最初からいましたよ、リコ先輩』
「ぎゃあっ!」
リコの横にいきなり現れたのは、藍色の髪に蒼い目をした宝城真琴だった。
『自己紹介が遅れました。僕は宝城真琴と言います。桜嵜中で女バスのキャプテンをしていました』
「(嘘だ!しかも、この子もカゲ薄!)」
『嘘じゃないですよリコ先輩。それと、影が薄いのではなく気配を消してたんです。わざと。いつになったら気付くのかなぁと』
「(え、この子心読んだ!?)」
『読めますよ?』
当たり前だとでも言うかのような表情を、真琴はリコに向けた。