疾風迅雷 本
□第1Q
4ページ/5ページ
ザ―――ッ
「ロード削った分練習時間余るな………。どーする?カントク」
「(一年生の実力も見たかったし……)ちょーどいいかもね。5対5のミニゲームやろう!一年対二年で」
「センパイと試合って…!」
「覚えてるか入部説明の時言ってた去年の成績…」
『去年一年生だけで決勝リーグまで行ってるんですよね。羨ましいですねー、みなさん』
「うわ!?宝城さん////!!……何が羨ましいんですか…」
『先輩方と試合できることがですよ。僕はマネージャーなんで試合には出させてもらえないでしょう?』
リコ先輩に頼まれていたボールを抱えながら話中だった一年生に近づいた。
「……真琴、カントクが呼んでますよ」
『あ、遅いってことですかね。わざわざありがとうございます、テツ』
お礼を述べながらテツから離れた。………若干機嫌が悪そうだったのは気のせいでしょうか?
『リコ先輩、持って来ましたよ』
「ああ、ありがとうね真琴ちゃん。じゃー始めるわよー!」
リコ先輩の横に立ち、試合を眺める。………やっぱり、物足りないですね。
ガツンッ
『Σ!(ゾクッ)』
「うわぁ、マジか今のダンク」
「すげぇ!!!」
…前言撤回。十分です。火神君と………やり合いたい。
「(想像以上だわ…!あんな荒削りなセンス任せのプレイでこの破壊力…!!)」
「とんでもねーな、オイ…(即戦力どころかマジ化物だ…!)」
「一年が押してる!?」
「つーか火神だけでやってるよ!」
火神がいいプレイをする中、彼はとある一人に神経を逆なでされてイライラしていた。
「スティール!?またあいつだ!!」
そう、黒子だ。
「(雑魚の癖に口だけ達者っつーのが…)一番イラつくんだよ!」
シュートを決めようとしていた先輩に背後から跳びつき、ボールを奪う。
「高っ……!」
「もう火神止まんねー!!」
「……わけにはいかねーなー。そろそろ大人しくしてもらおうか!」
『……一年を止めるのに三人がかり…それほど強いってことですか』
「みたいね」
その後、先輩達からの逆襲にあい、点差は見る見るうちに縮まり、今は15−31という様だ。
「やっぱり強い…」
「てゆーか勝てるわけ無かったし…」
「もういいよ…」
一年は半ば諦めムードだ。
「………もういいって…なんだそれ、オイ!!」
「落ち着いてください」
キレている火神に膝かっくんする黒子。
「何かモメてんぞ」
「黒子か…そーいやいたな〜」
「(審判の私まで忘れてたわ!)」
『リコ先輩。審判なのにテツの存在忘れてましたね』
「!? また心読んだわね!」
『リコ先輩の反応が面白いんですよ』
そう言ってにっこりと笑えば、なぜかリコ先輩は顔をそむけた。…そんなにひどい顔をしていたのか、僕は。
『ま、見ててください。テツは凄いですよ。流石にアレは僕にも真似できません』
試合が再開され、すぐテツにパスが回った。
「…え…あっ」
渡った次の瞬間には、既にボールはゴール下にいた一年に渡り、彼がシュートを決めた。
「……え」
「入っ…ええ!?今どーやってパス通った!?」
「わかんねぇ、見逃した!!」
その後も黒子にパスが回るたびにそのようなことが起こった。いつの間にかパスが渡り、シュートを決める。
「もしかして…」
『リコ先輩の思っていること、殆ど合ってますよ。でも少し違いますね』
「(…)何が違うの?」
『テツが使う技は“ミスディレクション”と言います。人の意識を誘導するテクニック。手品なんかでよく使われてます。
彼は自分ではなくほかのプレーヤーやボールに意識を誘導し、自分以外を見るように仕向けているんです』
「あっ」
その時、黒子にばかり目が行ってしまっていた部長、日向さんは気づいた。いつの間にかパスが火神に回っていることに。
「うわぁ!信じらんねェ!1点差!?」
「ったくどっちか片方でもシンドイのに…」
「っち!」
「バッ…しまっ」
気を抜いていた先輩が誤って黒子にパスを渡してしまう。
「行けぇ黒子!!」
『…あー、駄目ですね』
「何が?」
『テツはパス以外は……』
ガボン…ッ
『素人並。またはそれ以下です』
真琴の言う通り、シュートはリングに当たり跳ねかえる。
「……だから弱ぇ奴はムカツクんだよ。ちゃんと決めろタコ!!」
落ちてきたボールを火神が取り、豪快にダンクを決めた。
「うわぁああ!一年チームが勝ったぁ!?」
「ははっ…(まぁ…味方なら頼もしい限りってことか…)」
5対5は先輩達の予想を覆し、まさかの一年チームの勝利で終わった。