疾風迅雷 本
□第1Q
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〜MAJIバーガー〜
「……なんでまたいんだよ…」
「ボクが座ってる所に君が来るんです。好きだからです。此処のバニラシェイク」
『同じく』
「どっか違う席行けよ」
「いやです」
「仲いいと思われんだろうが…」
『なら火神君が違う席行けばいいじゃないですか。僕達が先に座ってたんですよ』
「…チッ……ホラよ」
結局同じ席に座った火神が黒子に投げてよこしたのは一個のハンバーガー。
「バスケ弱い奴に興味はねー。が、オマエのことそれ一個分ぐらいは認めてやる」
「…どうも」
「……“キセキの世代”ってのはどんぐらい強ーんだ?オレが今やったらどうなる?」
あれほどの量のハンバーガーをさっさと食べ終わった火神が店を出ながら訪ねてくる。
「…瞬殺されます」
「もっと違う言い方ねーのかよ…」
「ただでさえ天才の5人が今年それぞれ違う強豪校に進学しました。まず間違いなくその中のどこかが頂点に立ちます」
「…ハッ、ハハハ!いいね、火ィつくぜそーゆーの。…決めた!そいつら全員ぶっ倒して日本一になってやる」
「ムリだと思います」
「ぅおいっ!!!」
「潜在能力だけなら分かりません。でも今の完成度では彼らの足元にも及ばない。一人では無理です。…ボクも決めました。
ボクは脇役(影)だ。…でも、影は光が強いほど濃くなり、光の白さを際立たせる。主役(光)の影として、ボクも主役(キミ)を日本一にする」
「…ハッ、言うね。勝手にしろよ」
「頑張ります。……で、何故女バスに入らなかったんですか?真琴」
『…今の話の流れでそれ聞きます?』
「オマエ強いのか?」
「強いですよ。キセキの世代である5人すべて倒しちゃいましたから」
『(何故テツが答えた…?)手加減してくれてたんじゃないんですか?』
「あれはどう見ても本気ですよ」
「オマエってかなりすげーんじゃ…(つーか何で今黒子が答えた)」
「なのになぜ、マネージャーなんかしてるのか知りたいんです」
ベンチに座らせられ、右にテツ、左に火神君と固められてしまった。
『居なかったんですよ』
「誰がです」
『強い人が』
「女バスの選手の中にか?」
『はい。中学時代男子と練習試合組んでたこと、試合をしたテツなら知ってますよね?』
「はい。何も知らされず連れていかれて、相手が女子だと知った時は驚きました」
『それで、まさか僕らに惨敗するとは思ってもいなかったでしょう?』
「惨敗って……何対何で負けたんだ?」
「53対120です。確か帝光中に入って初めて負けた試合でした」
『その後も監督に男子と試合をさせられて…いつの間にか女バス界で最強と謳われてました』
あの監督は鬼ですよ。そう言うと火神の顔が引きつった。
『でも、最強なんてつまらないことばかりです。最強と付くだけで試合では途中で諦められます。それが嫌で、僕はバスケを辞めました』
「今やってんじゃねーかよ」
『テツ達…キセキの世代達に言われたんです。もう一度試合をしてくれと。ただし、僕が負けたらもう一度バスケをするという条件付きで。
僕はのりました。もう一度強い人たちと試合ができるということで頭が一杯で…僕一人で試合してたんです』
「オマエ………馬鹿だろ」
『僕はもうその時一度辞めた身でしたし、仲間を呼ぶのは気が引けたんです。もちろん普通に負けました』
「でも70対100でしたよね」
「一人で70点も入れたのかよ…」
『で、テツの付き添いで入部届けを提出して、また始めたんです。…話がそれましたね。
とにかく、強い選手を求めて男バスのマネージャーになったんです。運がよければ対戦してくれると思いまして』
「いや、ムリだろ」
『…ですよねー…』
「あれ、真琴お姉ちゃん!」
そんな中、向こうから買い物袋を提げた少女がこちらに向かって走って来た。桜嵜中の制服を着ている。
「…誰だアイツ」
『僕の妹です』
「はぁ!?まったく似てねーじゃねぇか!」
「あ!黒子さんも。お久しぶりです!」
「お久しぶりです、雪さん」
「オマエ、知ってんのか!?」
「知ってるも何も「お姉ちゃんの彼氏だし、知ってるよ!」…なので、顔見知りです」
「ちょ、彼氏?」
「はい」
「か…、彼女…?」
『…?そうですけど』
「はぁああああ!?」
『う、煩いです!』
「黙れ火神」
…一瞬。一瞬だけ、黒子の纏う雰囲気が変わった。
「…とにかく、真琴に手を出したら容赦しませんよ、火神君」
「わ、わかりました…」
何故か敬語を使って答えた火神だった。