疾風迅雷 本

□第1Q
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ザ―――ッ




「ロード削った分練習時間余るな………。どーする?カントク」


「(一年生の実力も見たかったし……)ちょーどいいかもね。5対5のミニゲームやろう!一年対二年で」


「センパイと試合って…!」


「覚えてるか入部説明の時言ってた去年の成績…」


『去年一年生だけで決勝リーグまで行ってるんですよね。羨ましいですねー、みなさん』


「うわ!?宝城さん////!!……何が羨ましいんですか…」


『先輩方と試合できることがですよ。僕はマネージャーなんで試合には出させてもらえないでしょう?』



リコ先輩に頼まれていたボールを抱えながら話中だった一年生に近づいた。



「……真琴、カントクが呼んでますよ」


『あ、遅いってことですかね。わざわざありがとうございます、テツ』



お礼を述べながらテツから離れた。………若干機嫌が悪そうだったのは気のせいでしょうか?



『リコ先輩、持って来ましたよ』


「ああ、ありがとうね真琴ちゃん。じゃー始めるわよー!」



リコ先輩の横に立ち、試合を眺める。………やっぱり、物足りないですね。





ガツンッ





『Σ!(ゾクッ)』


「うわぁ、マジか今のダンク」


「すげぇ!!!」



…前言撤回。十分です。火神君と………やり合いたい。



「(想像以上だわ…!あんな荒削りなセンス任せのプレイでこの破壊力…!!)」


「とんでもねーな、オイ…(即戦力どころかマジ化物だ…!)」


「一年が押してる!?」


「つーか火神だけでやってるよ!」



火神がいいプレイをする中、彼はとある一人に神経を逆なでされてイライラしていた。



「スティール!?またあいつだ!!」



そう、黒子だ。



「(雑魚の癖に口だけ達者っつーのが…)一番イラつくんだよ!」



シュートを決めようとしていた先輩に背後から跳びつき、ボールを奪う。



「高っ……!」


「もう火神止まんねー!!」


「……わけにはいかねーなー。そろそろ大人しくしてもらおうか!」


『……一年を止めるのに三人がかり…それほど強いってことですか』


「みたいね」



その後、先輩達からの逆襲にあい、点差は見る見るうちに縮まり、今は15−31という様だ。



「やっぱり強い…」


「てゆーか勝てるわけ無かったし…」


「もういいよ…」



一年は半ば諦めムードだ。



「………もういいって…なんだそれ、オイ!!」


「落ち着いてください」



キレている火神に膝かっくんする黒子。



「何かモメてんぞ」


「黒子か…そーいやいたな〜」


「(審判の私まで忘れてたわ!)」


『リコ先輩。審判なのにテツの存在忘れてましたね』


「!? また心読んだわね!」


『リコ先輩の反応が面白いんですよ』



そう言ってにっこりと笑えば、なぜかリコ先輩は顔をそむけた。…そんなにひどい顔をしていたのか、僕は。



『ま、見ててください。テツは凄いですよ。流石にアレは僕にも真似できません』



試合が再開され、すぐテツにパスが回った。



「…え…あっ」



渡った次の瞬間には、既にボールはゴール下にいた一年に渡り、彼がシュートを決めた。



「……え」


「入っ…ええ!?今どーやってパス通った!?」


「わかんねぇ、見逃した!!」



その後も黒子にパスが回るたびにそのようなことが起こった。いつの間にかパスが渡り、シュートを決める。



「もしかして…」


『リコ先輩の思っていること、殆ど合ってますよ。でも少し違いますね』


「(…)何が違うの?」


『テツが使う技は“ミスディレクション”と言います。人の意識を誘導するテクニック。手品なんかでよく使われてます。
彼は自分ではなくほかのプレーヤーやボールに意識を誘導し、自分以外を見るように仕向けているんです』


「あっ」



その時、黒子にばかり目が行ってしまっていた部長、日向さんは気づいた。いつの間にかパスが火神に回っていることに。



「うわぁ!信じらんねェ!1点差!?」


「ったくどっちか片方でもシンドイのに…」


「っち!」


「バッ…しまっ」



気を抜いていた先輩が誤って黒子にパスを渡してしまう。



「行けぇ黒子!!」


『…あー、駄目ですね』


「何が?」


『テツはパス以外は……』





ガボン…ッ





『素人並。またはそれ以下です』



真琴の言う通り、シュートはリングに当たり跳ねかえる。



「……だから弱ぇ奴はムカツクんだよ。ちゃんと決めろタコ!!」



落ちてきたボールを火神が取り、豪快にダンクを決めた。



「うわぁああ!一年チームが勝ったぁ!?」


「ははっ…(まぁ…味方なら頼もしい限りってことか…)」



5対5は先輩達の予想を覆し、まさかの一年チームの勝利で終わった。 




   
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