疾風迅雷 本
□第3Q
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ファンの女子を追い出し、静かになったところで漸く降ろしてもらえた真琴。
『!』
「そんなあからさまに逃げなくても…」
降ろされた瞬間黄瀬から逃げ、黒子の後ろに隠れた。そりゃもう電光石火のごとく。
「(……はっ)…なっ、なんでここに!?」
今の現状を漸く理解した一人がそう聞く。
「いやー、次の相手誠凛って聞いて、黒子っちと真琴っちが入ったの思い出したんで挨拶に来たんスよ。中学の時、一番仲よかったしね!」
「フツーでしたけど(むしろ真琴に近づくには邪魔です)」
「ヒドッ!!!(てかなんか本心が見えた気が…)」
「すげー、ガッツリ特集されてる…」
――中学二年からバスケを始めるも恵まれた体格センスで瞬く間に強豪・帝光でレギュラー入り。
他の4人と比べると経験値は浅さはあるが、急成長を続けるオールラウンダー――
「中二から!?」
「いやあの…大ゲサなんスよその記事、ホント。“キセキの世代”何て呼ばれるのは嬉しいけど…
つまりその中でオレは一番下っ端ってだけスわ〜。だから黒子っちとオレはよくイビられたよ」
「ボクは別に無かったです」
てゆーかチョイチョイテキトーなこと言わないでください、と若干黒いオーラを出しながら言う黒子。
「あれ!?……っと!?った〜〜〜ちょ…何!?」
突然黄瀬に向かって飛んできたボール。突然にもかかわらず受け止めた黄瀬。
「せっかくの再会中ワリーな。けど、せっかく来てアイサツだけでもねーだろ。ちょっと相手してくれよ、イケメン君」
「え〜、そんな急に言われても…、あー、でもキミさっき…」
ちょっと考えるそぶりを見せると、黄瀬は真琴に上とネクタイを投げてよこした。
『な!?』
「よし、やろっか!いいもん見せてくれたお礼。真琴、ちょっと持っててくださいっス」
「……!」
「……っもう!」
「マズいかもしれません」
「え?」
『黄瀬君は見たプレイを一瞬でものにします』
目の前では、その火神相手に黄瀬が先程のプレーを忠実に再現……いや、自分のモノにしていた。
「(ざけんな!!それさっきオレが…なのに…ウソだろ!?)」
「うおっ、火神もスゲェ!!反応した!?」
必死に食らい付く火神。だが、黄瀬に力負けした。
「がっ…!?(オレよりキレてて…しかもパワーも!?)」
「これが…“キセキの世代”…黒子、オマエの友達スゴすぎねぇ!?」
「……あんな人知りません」
「へ?」
「正直さっきまでボクも甘いこと考えてました。でも…数ヶ月会っていないだけなのに…彼は…」
『予想をはるかに超える速さで、“キセキの世代”の才能は進化していますね…』
正直言うと僕も、どうせ…と考えていた。しかし、彼は確実に強くなっていた。うわ、試合したいです!
「ん〜…これは…ちょっとな〜」
「?」
「こんな拍子抜けじゃやっぱ…挨拶だけじゃ帰れないスわ。やっぱ黒子っちと真琴っちください」
「………!?」
「海常おいでよ。また一緒にバスケやろう」
「なっっ!?」
「マジな話、二人のことは尊敬してるんスよ。こんなとこじゃ宝の持ち腐れだって。ね、どうスか」
「そんな風に言ってもらえるのは光栄です。丁重にお断りさせていただきます」
「文脈おかしくねェ!?真琴っちはどうスか!?」
『必要以上女子に嫌われたくないのでお断りさせていただきます』
「何でっスか!?コッチなら真琴っちのあの“夢”も叶うかもしれないんスよ!?」
『ここでも十分叶えさせてもらえますよ』
「そもそもらしくねっスよ!勝つことが全てだったじゃん。なんでもっと強いトコ行かないの?」
「あの時から考えが変わったんです。何より火神君と約束しました。君達を…“キセキの世代”を倒すと」
「…やっぱらしくねースよ。そんな冗談言うなんて」
「……ハハッ、ったくなんだよ…、オレのセリフとんな黒子。
(これが“キセキの世代”…スゲーわマジ…もっと強ーのがまだ4人もいんのかよ!?)」
「冗談苦手なのは変わってません。本気です」
『あんまりナメてかからないでくださいね。僕、誠凛から離れる気ないので』
これは本音。誰が何を言おうと、今の誠凛から離れる気はない。