疾風迅雷 本
□第4Q
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「それではこれから、誠凛高校対海常高校の練習試合を始めます」
コートに並ぶ選手達を、今だ収まらない怒りの籠った眼で睨む。もちろん、海常高の選手をだ。
「…や、あの…、だから始めるんで…誠凛、早く5人整列してください」
「あの…、います5人」
「……おおぇ!?」
「うおっ…何だアイツ!?」
「薄っすいな〜、影…」
「あんなんがスタメン…?」
そんな会話が聞こえてきたので、練習中の部員を思いっきり睨んだ。部員達はものすごい視線にすぐ気付き、サッと目を逸らした。
「(うっわ、目の前にいて気付かなかったし…)」
「(ショボ…こりゃ10番(火神)だけだな、要注意は)」
「(てかバスケできんの!?)」
「話にならんな…大口叩くからもう少しまともな選手が出てくると思ったが」
「……どうですかね。まぁ確かに…まともじゃないかも知んないスね」
海常側はそんなことを言っていた。
「どしたんスか、カントク…?」
「(……あららら〜〜!?ちょいと…ヤバくね!?)」
リコは部員の声も聞こえないほど、映し出される数値に驚いてた。
『…フィジカルでは、負けてますか?』
「ええ…負けてるわ。あとはあの二人の力がどこまで通用するかよ……っで、真琴ちゃんは黄瀬君に対していつもああなの?」
『ああって……黒いかってことですか?』
「まぁ、そういうことね」
『いいえ、いつもは仲いい方だと思いますよ。ただ、自分のチームが悪く言われるのは我慢ならなかっただけです。
何もあそこまで言わなくてもいいと思ったんで……本気で睨んでしまいました…。すみません』
「? 何で謝るのよ」
『もしこれが誠凛のイメージダウンに繋がったら…』
「そんなの関係ないわ。きっと真琴ちゃんが言わなかったら私が言ってたわよ!」
ギュウッ、と横から抱きついてきたリコ先輩に、多少よろけながらも笑い返した。
「そう言えば、黄瀬君が言ってた“本気モード”って…?」
『ああ、中学の時イヤな相手に当たった時に出してたんです。所謂“黒”です。そのせいで中学の時は“黒風(くろかぜ)”って呼ばれてました』
「…黄瀬君に一度も負けたこと無いって言うのも本当?」
『嘘ついてどうするんですか。第一本人の目の前で言ってるんです。嘘だったらすぐにバレますよ』
ピィッ
ホイッスルが鳴り、試合が開始される。ボールを取ったのは海常のキャプテン。確か名前は……笠松先輩。
「っし!んじゃまず一本!キッチリいくぞ!」
これから行こうというとき、黒子がボールをスティールした。
「なっ…(どっから湧きやがったコイツ――!?)」
スティールしたボールをドリブルし、ゴールまで持っていこうとする黒子。だが笠松も後ろから余裕で追い付き、ボールを取ろうとした。
が、黒子はボールを隣にいた火神にパスした。
「あ!?」
完全にアテが外れた。火神はそのままボールをゴールへ持っていく。
バキャッ
「お?おお?」
ダンクした火神がその手に持っていたのは、ゴールのリング。
「おぉぇぇ〜!?ゴールぶっ壊しやがったぁ!?」
「あっぶね、ボトル一本サビてるよ…」
「それでもフツーねぇよ!!」
「………」
言葉も出ない海常側。そんな彼らにニヤリと微笑む。一部が顔を赤くしていた。
「どーする黒子、コレ」
「どーするって…、まずは謝って、それから…」
海常の監督の方に向き直り、
「すみません。ゴール壊れてしまったんで、全面側のコート使わせてもらえませんか」
その言葉に会場全体が一瞬凍った。