疾風迅雷 本
□第5Q
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「(ちょ、何よこれ…!?)」
「何なんだ一体!?このハイペースは!?」
「まだ始まって3分だぞ!?」
そう、3分。なのにお互い得点は10を超えている。
「(こんなの…ノーガードで殴り合ってるようなもんじゃない…!)」
『お互いの矛(攻撃力)が強すぎて、盾(ディフェンス)が思ったように機能してないんですよ。キセキの世代を甘く見ちゃいけません』
「(規制がいの4人もこの圧力…!いっぱいいっぱいもいーとこだぞコレ!!情けねー話だけど、黒子と火神いなきゃ一気に持ってかれる…
一体いつまで保てるんだ…この均衡を!!)」
パスが回って来た火神が、後ろに飛び3Pを狙う。フェダウェイだ。
「後ろに…フェダウェイ!?」
「なッ…!?」
しかし、それも黄瀬に止められてしまう。そしてフェダウェイ。
「(フェダウェイ…!?コイツまた…!!しかもどんどんキレが増してやがる……!)」
「…主将、TO欲しいです」
焦る火神を見た黒子が日向に言う。存在に気づいていなかった日向からしてみれば冷や汗モンだ。
「おわぁ!!そしてなぜオレに言う!?」
「ちょっと今のハイペースは体に優しくないです」
「え?ちょっ、なに、その軟弱発言!?」
「あと火神君を一度クールダウンしないと…」
「え?」
そのころベンチでも…
「TO?」
『はい。火神君がむきになって挑むほど、黄瀬君はその倍の力で返してきます。今のままじゃ追うので精いっぱいになってジリ貧になります』
「…分かったわ。言ってくる」
審判員にTOを申請しに行ったリコを見て、真琴もドリンクなどの準備を始めた。
「誠凛、TOです」
ベンチに戻ってきた選手達にタオルとドリンクをそれぞれ渡す。皆体力の消費が半端ない。
『しっかり水分補給してください』
「(みんなまだ5分とは思えないほど疲れてる…。無理もないわ。攻守が変わるスピードが尋常じゃない!)」
「なんだこのていたらくはお前ら!!何点取られりゃ気がすむんだ。DF寝てんのか!?オイ!」
海常のベンチから聞こえてきた怒声。見るとあのおっさんが大口開けていた。
「つっても、あの一年コンビはヤベーぞ実際。10番(火神)はお前が押さえてるからいいとして…。何なんだ、あの以上にウッスい透明少年は…」
「でしょ?黒子っちは実は…」
「何で嬉しそうなんだテメー」
「イテッ!だ、大丈夫っスよ、多分直ぐにこの均衡は崩れますよ。なぜなら…」
「とにかくまずは黄瀬君ね」
「火神でも押さえられないなんて…。もう一人付けるか?」
「なっ…ちょっと待ってくれ…ださい!!」
「…いや、活路はあります」
「「彼には弱点がある」」
まるでリハーサルでもしたかのように、二人の声がぴったり重なった。
『(ああ、あれですか)』
彼の弱点に心当たりのある真琴が、一人納得した。
『(…にしても、結構成長してますね…)』
正直ナメてたのは僕の方かもしれない。まさか数ヶ月間でここまで変わるとは思ってもみなかった。