疾風迅雷 本

□第9Q
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真琴とリコが呑気に話している間も、試合が止まることはない。同点になった瞬間、黄瀬の雰囲気が一気に豹変した。



「(コイツ…フンイキが変わった…!?)」



黒子の横をものすごい速さで駆け抜ける黄瀬。



「黒子…」



先程と同じように後ろからバックチップをしようとするも、黄瀬は瞬時にボールを持つ手を変えてしまった。



「……!」


「なっ…」



そのまま火神も抜き去ると、思いっきりダンクをかます。



「オレは負けねェスよ。慣れにも、黒子っちにも」


「(コイツ、ここに来て…まだ強くなんのか!?黒子も見切ったってのかよ!?)」



影が十分に薄まっているはずにもかかわらず、黄瀬はそれを察知したとでも言うのだろうか。



「ヤべぇな…全員気ィ入れろ。こっから試合終了まで第1Qと同じ…ランガン勝負だ!」



日向の言った通り、それから試合が終わる間際まで点の取り合いは続いた。



誠凛が1点取れば海常が返し、



逆に海常が取れば誠凛が返す。



両者とも一歩も引かない試合展開だった。



『(あー、羨ましいですね…)』



コートの中を縦横無尽に駆け回る選手達を見て、真琴はそう思った。



『(結局出られたのは10分にも満たない…。いや、出させてもらえただけよかった。本来なら無理な展開でしたし…)』



残り1分。



『(それにしても皆、楽しそう。あーいう強敵相手に此処まで攻められると、気分もハイになりますよねー)』



残り30秒。



『(バスケがしたい…。キセキ達と、バスケをしたい…。僕のことを、あそこまで追いつめてくれる、彼らと…)』





もう一度、バスケを…





「真琴ちゃん!何ボーっとしてるの!!声出して!!」



リコに頭を軽く叩かれ、一気に現実に呼び戻された。



『(…今はそんなこと考えている余地はない。ただ目の前の仲間に精いっぱい声援を送ることだけを考えるんだ)
日向さん、伊月さん、水戸部さん、火神君、テツ、頑張って…!』



珍しく敬語の抜けたしゃべり方。あまり大きいとは言えない声。それでも周りの声援に引けを取らない。



「うわぁあ、また同点!?」


「ッの…!!しぶとい…!トドメさすぞ!!」



残り15秒。



「時間ねぇぞ!!当たれ!!ここでボールとれなきゃ終わりだ!!」


「「「「おお!」」」」


「火神君、一瞬いいですか。此処取れれば…黄瀬君にコピーされない手がもう一つあります」


「(残り10秒切った…もうウチに延長を戦う体力はない―――!!)守るんじゃダメ!攻めて!!」



残り7秒。



「(…ッの、ヘタレ!!)」



日向の膝が折れた。その隙に笠松が飛ぶ。ノーマークで入ると思われたそのボールも、横から現れた火神が獲り、日向に渡す。



「うわぁあ、獲った!!」


「マジかよ!?」



油断していた海常側。ゴール付近には黄瀬以外誰もいない。



「黒子!!」



突然、走っていた火神が黒子にパスを出す。



「(黒子っちにはシュートはない!ツーメンだったら火神にリターンしかないスよ…!?)」



黒子はシュートを打つわけでも、火神にボールを戻すわけでもなく、リングに向かってパスを出した。



「…パスミス!?」



残り1秒。



「…じゃねぇ!!アウリープだ!!」



投げられたボールの横に火神が跳んでいた。



「させねェスよ!!」



同時に黄瀬も跳ぶ。だが



「(―――まだ…!?いつまで…!?)」



二人とも同時に跳んだにもかかわらず、黄瀬の方が先に落ちていく。



「(同時に跳んだのにオレが先に落ちてる…!?何なんだ、お前のその宙に居る長さは…!?)」





「一回きりの単純な手ですけど…」





「テメーのお返しはもういんねーよ!!なぜなら…」





「ブザービーターで決めちゃえばいいんです」





「これで終わりだからな!!」



黄瀬の目の前で豪快に決められるダンク。そして、追加される2点。





100対98




  
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