疾風迅雷 本
□第12Q
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海常との練習試合の次の日、どの学年も問わず試合に出たメンバーは眠そうにしていた。
「(ねっみ〜…一試合でここまで疲れたの初めてだな…)」
眠そうに欠伸をする日向を見て、同じクラスのリコはノートに今後のメニュー等を書き込んでいた。
無論、授業など聞いているはずもない。しかし別に今後支障が出るほどでもないのでいい…らしい。
「…あ、そーいえばアレ、今日ね。……じゃぁ…」
何かに気付いた様子のリコは、一年メンバーにあるメールを一斉送信した。
〜同時刻〜
『…?』
突然振動し始めた携帯。先生にばれないうちに開くとリコからのメールだった。
『…!?』
一年全員、昼休みに年校舎集合❤
そう書かれているメールを見て、たまたま席が隣の黒子に視線を投げかけてみれば、彼もちょうどメールを見たところらしかった。
『(これ…どういうことでしょうか?)』
「(さぁ…とりあえず行くしかなさそうですね)」
〜昼休み〜
「ちょっとパン買ってきて❤」
「は?」
「パン?」
二年校舎に全員そろって行くと、そこで待っていたリコに唐突にそう言われた。
「実は、誠凛高校の売店では毎月27日だけ、数量限定で特別なパンが売られるの。
それを食べれば恋愛でも部活でも必勝を約束される(と噂される)幻のパン」
「!」
【特別な・幻のパン】その単語にいち早く反応したのはもちろん火神だ。
「イベリコ豚カツサンドパン三大珍味(キャビア・フォアグラ・トリュフ)のせ!!2800円!!!」
「高けぇ!!…し、やりすぎて逆に品がねぇ…」
「海常にも勝ったし、練習も好調。ついでに幻のパンもゲットして弾みをつけるぞ!ってワケだ!」
いつの間にやら2年の部員も全員揃っている。まぁ、2年校舎なので当たり前といえばそうなのだが。
「けど狙ってるのは私達だけじゃないわ。いつもよりちょっとだけ混むのよ」
「パン買ってくるだけだろ?ちょろいじゃん、ですよ」
『リコさんがなぜこうまでしてパンを買わせようとするのかがいまだによく理解できません。パンを買うだけ、ですよね?』
「あー、真琴ちゃんは残ってね。危ないから」
『危ない…?』
パンを買うのに危ない目に合うのだろうか?
「ほい!」
「?」
日向が黒子に封筒を渡す。中身はお金。
「金はもちろん俺らが出す。ついでにみんなの昼飯も買ってきて。ただし失敗したら…」
一度そこで言葉を切ると、効果音の付きそうな笑顔を出す。ただし“ニコニコ”ではなく“ゴゴゴゴ…”のほうだが。
『日向、先輩…?』
「釣りはいらねーよ。今後筋トレとフットワークが3倍になるだけだ」
「(コエー!!)」
「(え!?お昼の買い出しクラッチタイム!?)」
「ほら、早くいかないとなくなっちゃうぞ。大丈夫、去年オレらも買えたし」
「伊月センパイ…」
「パン買うだけ…パン…」
『伊月先輩?』
突然黙ってしまった伊月を心配して真琴が近づくと、どこから取り出したのかネタ帳とペンを持っている伊月。
「パンダのエサはパ」
「「「「行ってきます」」」」
『…大丈夫そうですね』
ダジャレを言い終わる前に黒子たちは出発。真琴はリコの元に戻った。
「……」
「いつも心配し過ぎだよ水戸部ー。オカンか!」
「…ッたく、何がちょっとだよ」
「えー?」
「……」
「これから毎年、一年生の恒例行事にするわよ♪」
「マジか…」
『…あの、やっぱり僕、テツ達のこと行ってきま「ダメよ❤」ふぐっ!?』
「真琴ちゃんはだーめ!」
リコさんにホールドされた。しかも首…!首、しまっ…
「…カントク、しまってるよ、首」
僕の視線での助けを感じ取ってくれたのか、日向さんがそう言ってくれたおかげでリコさんの腕は外れたのだった。