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□標的54
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『凪!』
「カレン…?」
『凪、僕があげた幻龍の鱗は?』
「も、てる…」
『どこにある?』
「カ、バンの、中…」
『分かった』
鞄の中を捜索しているときに、綱吉たちが病室に入ってきた。ビアンキが慌てた様子で病状を説明する。
確かに先ほどカレンが病室に入った途端、内臓のいくつかが消え始めた。どう考えても彼に何かがあったとしか言いようがない。
『あった(他のヤツも…)』
とりあえず見つけた“アレ”はあとで雲雀さんにでも話そうとポケットにしまい、凪の元へと歩み寄った。
〜ミルフィオーレ・イタリア本部〜
部屋には折れた三叉槍。右目を抑えて片足をつく骸。そして、余裕そうに立つ白蘭がいた。
「なんて恐ろしい能力でしょう。流石ミルフィオーレの総大将というべきですかね。敵いませんよ」
「また心にもないこと言っちゃって。君のこの戦いでの目的は勝つことじゃない。僕の戦闘データを持ち帰ることだろう?」
「ほう…面白い見解ですね。しかし…だとしたら?」
「叶わないよ、ソレ。この部屋には特殊な結界が張り巡らされてて光や電機の波はおろか、思念の類も通さない」
そう言ったら、信じる?にこやかに言う白蘭には、先ほどの戦いの疲れなど微塵も感じ取れない。
「クフフフ、何を言っているやら。僕にはさっぱり理解できませんねぇ(この体も限界のようだな。…そろそろ戻るとしましょうか)」
ドクドクと流れ出す血液は、止まることを知らない。
「楽しかったですよ」
そう言って意識を戻そうとした瞬間、何かに弾かれた。
「実体化を解いてここからズラかろうとしても無駄だからね。この部屋は全てが遮断されてるって言ってんじゃん。
ボンゴレリングを持たない君には興味ないのね。いっそ本当の死を迎えちゃおうか」
かざされる右手。
「バイバイ」
〜ボンゴレ〜
「カハッ!」
鞄に入っていた三叉槍が割れると同時に、クロームが大量の血を吐きだす。
「クローム!」
『皆さん、この部屋からご退出願います』
「カレン!?お前何言って…」
「…カレンの言うとおりだ。君たちには出て行ってもらう」
「雲雀さん!?」
「まだ死なれちゃ困るんだ」
雲雀さんとリボーンに追い出された綱吉たち。彼らの気配が完全に消えてから凪の元へ向かう。
『凪、ボンゴレリングに炎を灯すんだ』
「リ、グに…?」
『そう。微弱な炎でも、この鱗さえあればある程度は補えるから。さぁ』
「う……」
ぽう、と微弱ながら灯った炎に比例して、幻龍の鱗が光る。
『そう、いい調子だよ。辛いだろうけどそのまま維持して。直、楽になるよ』
「…ッ…!」
たぶん凪はこれで大丈夫だ。内臓もいくつか戻ってきつつある。
『…雲雀さん』
「なんだい」
『……見つけました、発信機。幸い盗聴器の類ではなく、ただ居場所を教えるものらしいです』
「ワォ、ミルフィオーレもやってくれるね」
『如何しますか?僕ならこれを怪しまれずに別のエリアに置いてこれますが…』
「その必要はないよ。君も知っているはずだろう?」
『………そういうと思ってました』
苦笑いして凪の元に近づく。
『凪、どう?』
「少、し、楽に、なった…」
『そう。じゃあ僕はみんなのところに伝えてきます。凪、何かあったらここに呼びかけて』
雲雀に一礼し、もう一度凪を見て頭を人差し指でトントンと叩いた。
「あた、ま…?」
『そう。僕は常時精神世界に入れるし、起きていても声を聴けるから…。骸に話しかけるみたいに、ね』
「わか、た…」
そう言って目を閉じた凪に微笑み、カレンは部屋を出た。