疾風迅雷 本

□第2Q
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「試合?オマエはまだ出れないよ」


「………は!?」



早く試合をしたくて2年の教室にいた男バス主将(キャプテン)の日向順平はやって来た火神にそう言い放った。
その横に付き添いで来ていた真琴は大きなため息を吐いた。だから言ったのに…と。



「何でなんっっ…でっ…すか、主将!?オレの何が…!!」


「あー、じゃなくて、オマエらまだ仮入部期間だろ!?正式な部員じゃねーもん」


『何度も言ったでしょうよ…』










〜2−C〜





「…よーし、やっぱこいつは伸びると思ったのよ〜〜〜〜❤……育てるってホント、いいわぁ〜〜〜〜〜」


「カントク―!!本入部届けくれ!!」


「ブフォ!?」


『ちょ、大丈夫ですか!?』



いきなり入ったのだからしょうがないと言ったらしょうがないのだが…リコ先輩は口に含んでいた牛乳を噴いた。
慌てて雑巾(もちろん綺麗なの)を持ってきて机を拭くのを手伝った。小声でありがとうと聞こえてきた。



「なんなのもー今日は。アンタも!?」


「も?」


「黒子君もさっき同じこと言いに来たの!」





「……本入部届けください」


「アンバ(アンタ)、ビズノバビ(いつの間に)!?」






「アイツ…」


「全く、二人揃ってどんだけせっかちよ?このワンパク坊やめ!」


「…何だそれ」


「まあ即戦力だし、ベンチに空きはあるから。大歓迎よ」



はい、と本入部届けを手渡された。よく見たら2枚あった。僕のでしょうか。



「これで試合に出れんだな!?」


「あー、ちょい待ち」










「オイ宝城」


『なんですか』


「さっきのどういう意味だと思う」


『そのまんまだと思うんですけど…』





「ただし、受け付けるのは月曜朝8:40の屋上ね!」





去り際にそう言われた。深い意味は分からないが…きっとそのままの意味だ。その時、火神が図書室の前で止まった。



『どうかしました?』


「いや、ここのバスケ部って結構すげー…のかなと」


「凄いですよ」


「…!!てめーは!フツーに出ろ!!イヒョーをつくな!!!」


『か、火神君!ここ図書室の前です。静かにしないと…』



黒子も同じことを思ったようで、口の前に人差し指を出していた。



「おちょくってんのか?おちょくってんだよな?オイコラ!」


「……違います」



火神が黒子の頭を鷲掴んだ。真琴はその手を掴んだ。引っ張ってみるがびくともしない。



「(マジ信じらんねぇー。普段はカゲ薄いだけのコイツが…バスケじゃ幻の6人目(シックスマン)なんて呼ばれてるなんて…
…そーいやなんでだ?他の“キセキの世代”はみんなもっと強豪校に行ったんだよな?何でコイツは行かなかったんだ!?)」



ふとした疑問。



「おい、黒子…」



しかし、振り返った先に黒子はいなかった。既に姿を消した後だったのだ。



「どーでもいいか、そんなこと…。まずは……(次会った時、ブッ殺そう……)」



近くにあった柵を掴む。その柵は嫌な音をたててぐにゃぐにゃに折れ曲がった。



『か、火神君…!柵が…!』


「(イライライライライライラ)」


『(ヒッ!)』


既にこちらの声は聞こえていなかった。




  
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