疾風迅雷 本
□第4Q
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「おお〜広〜〜。やっぱ運動部に力入れてるトコは違うねー」
海常高校はやっぱり規模が違かった。
「火神君、いつにも増して悪いです、目つき………」
「るせー、ちょっとテンション上がりすぎて眠れなかっただけだ」
「…遠足前の小学生ですか」
「どもっス、今日は皆さんよろしくっス」
「黄瀬…!!」
「広いんでお迎えにあがりました」
何ですかそれ。自慢ですか、広いってこと自慢してるんですか。ああそうですか。
「黒子っちに真琴っち〜、あんなアッサリフるから…毎晩枕をぬらしてんスよも〜…女の子にも振られたこと無いんスよ〜?」
「…サラッとイヤミ言うのやめてもらえますか」
『自慢ウザいです。そう言う黄瀬君は嫌いです』
「ぎゃっ!」
「フられたな」
「……だから、黒子っちと真琴っちにあそこまで言わせるキミには…ちょっと興味あるんス。
“キセキの世代”何て呼び名に別にこだわりとかはないスけど…あんだけハッキリケンカ売られちゃあね…
オレもそこまで人間出来てないんで…悪いけど、本気で潰すっスよ」
「ったりめーだ!」
試合開始前から暑い。それこそもう火花なんてものじゃない。もう引火してる。ドッカン爆発しますよ!
「あ、ここっス」
「…って、え?……片面…でやるの?」
「もう片面は練習中…?」
「てかコッチ側のゴールは年季入ってんな…」
ボロボロのゴールは今にも壊れそうだ。というか、火神君のダンクで壊れちゃいそうですよ。
「ああ、来たか。今日はこっちだけでやってもらえるかな」
海常高校の監督、武内源太は当たり前のことのように言った。
「こちらこそよろしくお願いします。…で、あの…これは…?」
「見たままだよ。今日の試合、ウチは軽い調整のつもりだが…出ない部員に見学させるのは学ぶものがなさ過ぎてね。
無駄をなくすために他の部員達には普段通り練習してもらってる。
だが調整とは言ってもウチのレギュラーのだ。トリプルスコアなどにならないように頼むよ」
ずいぶんとナメられたものだ。
「(ナメやがって……つまりは“練習の片手間に相手してやる”ってことかよ…)」
「…ん?何ユニフォーム着とるんだ?黄瀬、オマエは出さんぞ!」
「え?」
「帝光中のエース級がごろごろいる海常でも、オマエは格が違うんだ。
黄瀬抜きのレギュラーの相手も務まらんかもしれんのに…。出したら試合にもならなくなってしまうよ」
「なっ…」
「大丈夫、ベンチにはオレ入ってるから!あの人ギャフンと言わせてくれれば、多分オレ出してもらえるし!
オレがワガママ言ってもいいスけど…、オレを引きずり出すこともできないようじゃ、“オレら”倒すとか言う資格もないしね」
「オイ、誠凛の皆さんを更衣室へご案内しろ!」
「アップはしといてください。出番待つとかないんで…」
「あの…スイマセン。調整とかそーゆーのはちょっと無理かと…」
「「そんなヨユーはすぐに無くなると思いますよ」」
『あ、それと…黄瀬君』
「何スか?」
『この試合終わった後、僕と1対1しましょう』
「え、ホントっスか!?よっしゃ!今度こそ勝ってやるっスよ!」
『…僕に一度も勝ったことがないくせして、あんまりデカイツラしてんじゃないですよ』
え……、と、誠凛側の選手(リコ含め)が固まった。
「(ちょ、この子こんなタイプだったっけ!?)」
「…久しぶりに見たっス、真琴っちの本気モード。てか、本気モードになるときじゃ無くないスか!?」
『あと、海常の先生』
「?」
『あんまり変なコト言って僕のこと怒らせないでください。……黄瀬君、本気で潰しますよ。ああ、僕が、ですけど』
「何だと?」
真琴はそう言い捨てると、皆の先頭切って更衣室へと向かって行った。