疾風迅雷 本
□第5Q
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「何?結局全面使うの?」
「ゴールぶっ壊した奴がいんだってよ!」
「はぁ?…うお!マジだよ!!」
今まで練習していた海常の部員達の移動中の会話を聞いて、思わず笑みがこぼれた。
少なくとも、向こうの監督をあっけにとらせることはできたのだから。
「確かにありゃギャフンっスわ。監督のあんな顔始めて見たし」
「人ナメた態度ばっかとってるからだ、つってとけ!」
笑う黄瀬に睨むような視線を投げかけながら言う火神に、黒子が思い出したかのように話かけた。
「火神君…ゴールって…いくらするんですかね?」
「え!?あれって弁償!?」
『心配しなくても大丈夫ですよ。そうなったら僕が何とかしますから』
ベンチにやってきた二人にそう投げかける。
「…お前、金あんのか?」
『はい。有り余るほど』
「真琴の両親は海外で大手企業を展開する社長です」
「はぁ!?」
ふと、海常の監督の方に眼を移すと、凄い形相で黄瀬を呼んでいた。
ピ――――ッ
「それでは試合再開します」
「やっと出てきやがったな…」
「スイッチ入るとモデルとは思えねー迫力だなオイ」
「…伊達じゃないですよ、中身も」
静かに言う黒子の言葉は、なぜか説得力があった。
『…どうですか?改めてみる黄瀬君の能力は』
「まるでバケモノよ…」
黄瀬がコートに立った瞬間、ギャラリー(女子のみ)の声が体育館内に響いた。
「うぉわ!?なんじゃい?」
「あーあれ?アイツが出るといつもっすよ。……てゆーか、テメーもいつまでも手とか振ってんじゃねーよ!!」
「いてっ、スイマッセ――ンっっ」
「シバくぞ!」
「もうシバいてます…」
手を振る黄瀬君に蹴りを入れている背の低いキャプテンさんに、何故かナイスと言いたくなった。
「てゆーか今の状況分かってんのか黄瀬――!」
「いてっ、いてっ」
「あんだけ盛大なアイサツ貰ったんだぞウチは〜。キッチリお返ししなきゃ失礼だろが!」
真剣な顔つきになった笠松さんに黄瀬君も少なからず真剣な顔つきで返していた。
『(…さて、どう成長したんでしょうね)』
試合が再開されたコートに集中する。流石にこの時ばかりはギャラリーの声も消えていた。
「あ!!」
「こっちもアイサツさせてもらうっスよ」
ボール片手に飛び上がる黄瀬を、誰も止めることができない。そして決まるダンク。
「おおっ!!!」
「バカヤロー、ぶっ壊せっつたろが!!」
「いって、スイマッセン!」
「「「(えぇええ〜〜〜!?)」」」
確かにリングが壊れることはなかったが、それでもまだギシギシとしなっている。威力は黄瀬の方が上だ。
「女の子にはあんまっスけど…バスケでお反し忘れたことはないんスわ」
「上等だ!!黒子ォ、よこせ!!」
『…いつからキザ男になったんでしょうかね…。1対1で思っくそ潰してやりますか』
「真琴ちゃん!?(キャラ変わってない!?)」
黒子の魔法のパス(知らない人命名)が黄瀬の横を通り抜け火神に渡る。
「んおっっ」
「(どっから出てくんだコイツは――!?)」
「おお!!」
同じくダンクで決め返した火神。そこからだ、流れが変わったのは。