疾風迅雷 本
□第6Q
1ページ/2ページ
「弱点…!?」
「なんだよ。そんなのあんなら早く…」
「いや…、正直、弱点と言えるほどじゃないんですけど…。それよりも、すいません。もう一つ問題が…」
「え?」
「予想外のハイペースで、もう効力を失い始めてるんです」
「彼のミスディレクションは、40分フルには発動できないんス」
「ミスディ…何!?」
「黒子っちのカゲの薄さは、別に魔法とか使ってるわけじゃなくて…ザックリ言えば他に気をそらしてるだけ。一瞬ならオレにもできます」
そう言って黄瀬が取り出したのはバスケットボール。
「オレを見ててください」
そう言った後、そのボールを上に放った。笠松は思わず視線がそっちに行ってしまう。
「ホラ、もう見てない」
「あ!」
「黒子っちは並はずれた観察眼でそれと同じことを連続で行って、消えたと錯覚するほど自分をウスめてパスの中継役になる。
まぁ、やんなくても元からカゲはウスいんスけど…けど、使いすぎれば慣れられて、効果はどんどん薄まって行くんス」
「……そーゆー大事なことは最初に言わんか――!!」
「すいません、聞かれなかったんで…」
「気かな何もしゃべれんのかおのれは――!!」
『先輩、テツの首締ってます。窒息しちゃいますよ!』
「(でも私もウカツだった――!!こんなトンデモ技がノーリスクでやれるって方が甘いわ…!!)」
『(聞こえてませんね)』
「TO終了です!!」
「黒子君シバいて終わっちゃった――!!」
笛の音とともに、海常の選手は早くもコートに戻ってきている。
「このままマーク続けさせてくれ…ださい。もうちょいで何か掴めそうなんス」
「あっ、ちょ、待っ…、火神君!もう!…とにかくDFマンツーからゾーンにチェンジ!中固めて黄瀬君来たらヘルプ早めに!」
「黄瀬阻止優先!」
「おう!」
「あと黒子君はちょっとペースダウン。思いっきり点差引き離されない程度に。できる?」
「やってみます」
お互いコートに戻り終わり、試合が再開される。
「お?」
始まった途端、黄瀬の前には誠凛の選手がずらり。
「お、中固めてきた」
「(てかほぼボックスワンだな。火神を皆でフォローして、とにかく黄瀬を止めようってカンジか)
………やんなるぜ、全く」
そう呟いた笠松は飛び上がり、3Pを決めた。
「海常レギュラーナメてんのか?ヌリィにも程があるぜ」
「…ふぅ…ったく…しんどいね…つくづく」
『(気を付けなくてはならないのは、黄瀬君だけではないってことですね。流石海常レギュラー)』
真琴の手元にあるノートには、今までの海常の動きが全て整理され、記されていた。
「なるほど、少しずつ慣れてきたかも…」
時間がたつにつれ、追い込まれていく誠凛。黒子のミスディレクションもほとんど通用しなくなってきていた。
「クソ…ジワジワ差が開く…」
「ぐッ…」
「アウト・オブハウンズ!!白ボール!!」
ダンクをしようとしていた火神を黄瀬がブロックし、ボールが外に出た。
「…そろそろ認めたらどっスか?今のキミじゃ“キセキの世代”に挑むとか10年早ぇっスわ」
「何だと…!?」
「この試合、点差が開くとこはあっても縮まることはないっスよ」
『(うわ、嫌な言い方ですね)』
その声はベンチにまでも聞こえてきた。