疾風迅雷 本
□第8Q
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黒子が黄瀬のマーク。たったそれだけのことに海常側のコートは騒然とした。
「黄瀬についてんのって…えーと…」
「なんかすげえパスしてたような…?」
「え、ウソ!?見てね〜」
「てゆーか…」
「「「「相手に…なるわけねぇ―――!!」」」」
「……まさか夢にも思わなかったっスわ。黒子っちとこんな風に向き合うなんて」
「……ボクもです」
「一体……」
海常側は困惑している。
「どーゆーつもりか知んないスけど…黒子っちにオレを止めるのは無理っスよ!!」
ドライブで簡単に黒子を抜く黄瀬。すかさず火神がヘルプに入る。
「……!」
「違うね、止めるんじゃなくて」
「獲るのよ!」
パシッ
「なっ!?(バックチップ――!?火神のヘルプでひるんだ一瞬を…!?)」
後ろから伸びてきた手。それは紛れもなく先程抜いたはずの黒子の手だった。
「オマエがどんなすげぇ技返してこようが関係ねぇ。抜かせるのが目的なんだからな」
素早く獲ったボールを先輩にパスし、シュートを決める。
「おおお、ナイッシュー!誠凛また追いついてきた!?」
「…やっかいだな、クソ…。ダブルチームの方がまだましだぞ」
「(あのカゲの薄さで後ろから来られたら、いくら黄瀬君でも反応できないでしょ!)」
『ただでさえ黄瀬君はテツのプレーは真似できませんし、これならいけます』
誠凛だって策はある。
「そんなの、抜かれなきゃいいだけじゃないスか。誰も行ってないスよ、スリーポイントがないなんて」
飛び上がりシュートを打とうとする黄瀬。しかしその前に、火神が立ち塞がった。(いや、この場合飛び塞がったか?)
「(やられた……!つまり平面は黒子っちが、高さは火神がカバーするってことスか…!)」
「(外からのシュートはモーションかかっからな…!厄介だぜ、やっぱこいつら…!
そもそもこの流れを作ってんのは11番だ。コートで一番のヘボで一人じゃなんもできねーはずが…信じらんね―――!!)」
「行くぞ!速攻!!」
「っちっ…」
火神が遠くにいる日向にパスをしようと腕を振り上げる。それに反応し、黄瀬が後ろに手を振りかざした時、その手が何かに当たった。
「あっ!?」
「黒子君!!」
『テツ!』
「レフェリータイム!!」
当たったのは黒子だった。
「血が……!!」
「大丈夫か黒子!?」
「……フラフラします」
「救急箱持ってきて!」
ベンチは騒然となる。
「オイ…、大丈夫かよ!?」
心配そうに火神が黒子に近づく。
「大丈夫です。まだまだ試合はこれからで……しょう…」
「黒子ォ―――!!」
威勢よく言っていたのは最初だけ。あとは消え入るような声でいい、倒れた。
『テツっ!』
真琴が慌てて駆け寄る。意識はない。
「不本意な結末だが……終わったな…。あの一年コンビが欠けた以上…あとは点差が開くだけだ」
「(黒子っち…)」
海常側は誰もがそう思っていた。