疾風迅雷 本

□第8Q
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一方誠凛側は黒子が駆けた分をどうするのかということで悩んでいた。



「…どうする?」


「黒子君はもう出せないわ。残りのメンバーでやれることやるしかないでしょ!」



ベンチには黒子が寝かされている。



「OFは二年生主体で行こう!で、黒子君の代わりは『僕じゃ、駄目ですか?』え、真琴ちゃん!?」



突然手を挙げリコの前に立つ真琴。



「確かには行ってくれるととっても嬉しいけど、相手が何て言うか…」


『…説得すれば、出してくれますか?』


「……」



リコが視線で日向に問いかける。



「…宝城」


『何ですか、日向さん』


「本当に出たいと思ってるのか?」


『本当ですよ。嘘でこんなこと言いません』


「そうか。……カントク」


「えぇ、折れそうにないし……分かったわ。向こうに言いに行きましょう」


『ありがとうございます』



二人とも分かってくれたようで、リコは真琴の手を引き海常の監督のもとに行く。



「すみません」


「あん?何だい」


「先程倒れた黒子君の代わりに、彼女を出したいのですが……いいですか?」



黄瀬には聞こえないよう、そう釘を刺しておいたのでリコは小声で話してくれた。



「練習試合だし構わんが……君」


『はい』


「男子のバスケに付いてこれるのかい?途中でばてて終わりなんてことにならないのかい」


『そんなのあるわけないじゃないですか。僕は桜嵜のキャプテンをやっていたんですから』



もの凄いいい笑顔で言う真琴。若干黒い気がする。



「さ、桜嵜だと!?そんなの入れたら…」


『負ける、とでも言うんですか?女子であるこの僕に?あろうことが全国区の海常高校が?』


「(真琴ちゃんが黒い…!)」


「そ、そんなわけないだろうが!いいだろう!受けて立つ!!」


『そうですか。でもきっと僕が本気出したらすぐ試合終わっちゃうと思うんでハンデをあげます』


「は、ハンデだと!!」


『はい。そうですね……、じゃあ、左手でプレーしてシュートはハーフコート以外から打つ。で、いいですね』



そう言い捨てて真琴はベンチに戻って行った。ともかく海常の監督の許可は下りた。










「ねぇ、本当に大丈夫なのね?」


『何ですかリコ先輩。僕のこと信用できませんか?』


「そういう意味じゃなくて…。確かに真琴ちゃんの実力は認めるわ。でも、」


『分かってます。身長差でしょう?』



たとえプレーで上回っているとしても、ボールに手が届かなければ意味がない。



『大丈夫です』



降旗から借りたユニフォームをシャツの上から着る。下はスカートなので簡単に着替えることができた。



『キセキの世代と戦って、身長差の怖さは痛いほど知ってます。もちろん、それに対抗する術も知っていますよ』



両手にリストバンドを付ける。ちなみにコレ、キセキの世代達とおそろいだ。



「…まだ第2Qだけど離されるわけにはいかないわ。“勝負所”よ日向君!黄瀬君に返されるから火神君OF禁止!」


「そんな……、それで大丈夫なんで…すか?」


「大丈夫だって。ちっとは信じろ」


「でも…」


「大丈夫っつってんだろダァホ!偶にはちゃんと先輩の言うこと聞けや殺すぞ!」


「!?」


「行くぞ!」



真っ黒くなった日向が皆をコートに引き連れ、走って行く。それに続こうとした真琴にリコが問いかける。



「怖く、無いの?」


『怖い?そんなわけないじゃないですか』



心配そうな顔をするリコの方を振り向き、真琴は心からの笑顔を作る。



『むしろ、久しぶりの試合でワクワクしてます』










女である真琴がコートに立ったことで、海常の選手は驚きを隠せないでいた。一番驚いていたのは黄瀬だ。



「真琴っち!?試合出れるんスか!?」


『はい。黄瀬君達の監督を挑発したら出ていいとのことでしたので』


「マジスか」


『黄瀬君との対決は今からです。……手加減はしませんよ』



一気に纏う雰囲気が変わった。



「オレも、手加減なんかしないっスよ」


『望むところです』



火花を散らす二人とは別に、導火線に火のついた爆弾がもう一つ。



「ったく今どきの一年はどいつもこいつも……。もっと敬え!先輩を!そしてひれ伏せ!」


「スイッチ入って本音漏れてるよ主将!」


「……!?」



今だ状況が理解できない火神。



「あー、気にすんな。クラッチタイムはあーなんの。とりあえず本音出てる間はそうそうシュート落とさないから。
OFは任せて、オマエはDF死に物狂いで行け。それと宝城。お前は……自由に動けってさ」


『分かりました』



完全に雰囲気が一変している真琴。事前に言われてはいたが怖い者は怖い。










『すいません。スイッチ入れるんで雰囲気変わるんですけど、気にしないでください』


「スイッチ?」


『本気モードです。相手が相手なんで。とりあえず雰囲気変わります』


「どんなふうになの?」


『そうですね……桜嵜のもとチームメイトの言葉を借りると……真っ黒?』





  
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