疾風迅雷 本
□第10Q
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「うわぁあぁあああ!!」
「誠凛が!?勝ったぁああ!!」
ギャラリーは騒然となる。全国区の海常に勝ったのだから無理もない。
「キャー!やったわ!!」
『ちょ、リコさ…苦し…』
「あ、ごめん。舞い上がっちゃって…」
ベンチは歓喜で満ち溢れる。リコは真琴に思いっきり抱き付いた。そのせいで首が締まる。
「嬉しい通りこして信じらんねー」
「うおっ…しゃあぁあ――!!」
「……」
火神が雄叫びをあげる中、黒子もひそかに小さく微笑んだ。
「負け…たんスか?」
舞い上がっている誠凛の選手を一瞥し、黄瀬は小さく呟いた。
「(生まれて…始めて…負…)」
そう考えた途端、なぜか涙があふれてきた。
「あれ?あれ?」
ギャラリーも驚く中、一番驚いているのは黄瀬本人だった。
「黄瀬泣いてねぇ?」
「いや、悔しいのはわかっけど…練習試合だろ、たかが…」
心の中では分かっている。これが練習試合だということぐらい。だが、どこかで割り切れない自分が居た。
「っのボケ。メソメソしてんじゃねーよ!!」
「いでっ」
「つーか今まで負けたことねーって方がナメてんだよ!!シバくぞ!!」
すかさず笠松が黄瀬に蹴りを入れる。
「そのスッカスカの辞書に、ちゃんと“リベンジ”って単語追加しとけ!!」
「整列!!100対98で誠凛高校の勝ち!!」
「「「「「「ありがとうございました!!!」」」」」」
そして帰り際。
まるでエステにでも行ってきましたと言わんばかりに肌がつるつるになったリコと、苦い顔をする海常監督がいた。
「地区違うから、次やるとしたら…I.H本番スね」
「絶対行きます。全裸で告るのやだし」
「?」
笠松は何を言っているのか分かっていない様子だ。
「黄瀬は?」
「どうしても顔見せらんないって謝ってどっか行った」
「ったく…」
挨拶を交わし、帰ろうとした途端一人欠けていることに気付く。
「そう言えば真琴ちゃんもいないわ!!」
「…それならこれを…」
どこからともなく現れた黒子が、リコに一枚のメモを渡す。
「何て書いてあんだ?」
「えーと…【すみません。ちょっと野暮用が出来たので、先に帰っておいてください】…ですって」
「そういうわけです」
黒子はすぐに後ろに戻ろうとする。そんな彼をリコは引き止めた。
「…黒子君」
「なんですか」
「なんか怒ってない?」
「別に起こってないですよ。カントクには」
「「「「(怒ってるんだ!!つーか誰に!?)」」」」