疾風迅雷 本

□第11Q
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「うん…さすがに食いすぎた…」



一人腹を抱える火神。



「ご馳走様でしたー!!」


「おう!二度と来んな!!」



店主は涙を流す。まさか全員分を食べるとは思っていなかった。



「じゃ帰ろっか!全員いる?」


「…あれ?黒子は?」


「いつものことだろー。どうせまた最後尾とかに…」


「いや……マジでいねぇ…ですよ」


「…え?」










「…てかこうしてちゃんと話すのも久しぶりっスね」



ケガ大丈夫スか?と聞いてきた黄瀬に大丈夫だと返事をする黒子。
真琴はといえば、とりあえず黒子の横に立っている状態だ。



「そういえば緑間っちに会ったっスよ」


「正直あの人はちょっと苦手です」


「そういやそーだったスね。けどあの左手はハンパねーすよジッサイ。かに座がいい日は特に」


「…はい」


『かに座が一位で、いて座が最下位だったときは僕でも止めるのは一苦労しますよ』



苦笑いしながら言う。実際そうなのだから仕方ない。



「ま、今日は見に来ただけらしースわ。それより…黒子っちと真琴っちにフラれ、試合にも負け…
高校生活、いきなり踏んだり蹴ったりっスわー。ダメ元でも一応マジだったんスよー!?」


『黄瀬君、ひっくり返りますよ?それと、その、すいません』


「……すいません」


「……冗談スよっ。そんなことより話したかったのは理由を聞きたかったんすよ」



持っていたボールを投げて黒子によこしながら、黄瀬は態度を一変した。



「何で――全中の決勝が終わった後、姿を消したんスか?」










「黒子―――あいつケータイ持ってねーのかよ?」


「ってかすぐフラフラどっか消えるって……子犬か!」


「それより早く見つけましょ!逆エビの刑はそれからかな!」


「……」


「それより真琴ちゃんもどうしたんだろね?」



伊月が不思議そうに横にいるリコに話しかける。



「さぁ…一応メールは送ったんだけど……場所知らないとか?」


「そりゃそうだろ!神奈川なんてそう滅多に来ねーよ!!」


「…ったく」



ふと火神が横を見ると、日本では稀に見るストリートコートがあった。



「!」



そして、その奥には彼らが捜している黒子と真琴も姿も見えた。










「……わかりません」


「へ?」


「帝光の方針に疑問を感じたのは、確かに決勝戦が原因です。あの時ボクは、何かが欠落していると思った」


『それについては僕も同意しますよ。帝光の方針は……何かが違う』


「スポーツなんて勝ってなんぼじゃないスか!!それ以外に何か大切なものなんてあるんスか!?」


『ある。勝つこと以外にも、大切なものは』



珍しく敬語が抜けた真琴が真剣な表情でそう告げる。



「ボクもこの前までそう思ってました。だから何がいけないかはまだハッキリ分からないです」



ボールを持ったままうつむく黒子。



「ただ…ボクはあのころ、バスケが嫌いだった。ボールの感触、バッシュのスキール音、ネットをくぐる音。
ただ好きで始めたバスケなのに。だから火神君に会ってホントにすごいと思いました」


「…」


「心の底からバスケットが好きで、ちょっと怖い時や、クサった時もあったみたいだけど。
全部、人一倍バスケに対して真剣だからだと思います」


「…やっぱ、わかんねぇっスわ。けど一つ言えるのは…黒子っちがアイツを買う理由がバスケへの姿勢だとしたら…
黒子っちとアイツは…いつか…決別するっスよ」


『!(…てか、本人いるんですけど!?)』



誰も気づかない。後ろにいるんですけど!?ちょっとは察してくださいよ!!




  
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