疾風迅雷 本
□第11Q
2ページ/3ページ
「オレと他の4人の決定的な違い…それは身体能力なんかじゃなく、誰にも…オレにも真似できない能力を持ってるってことっス。
今日の試合で分かったんス。アイツはまだ発展途上…そして“キセキの世代”と同じ…。オンリーワンの才能を秘めている」
『なんとなくはわかってますよ。僕が戦ってみたいと思った人でもありますし』
「今はまだ未完成な挑戦者っス。ただガムシャラにプレイして強敵と戦うことを楽しんでるだけのね。
けどいつか必ず…“キセキの世代”と同格に成長してチームから浮いた存在になる。その時アイツは…今と変わらないままいられるんスかね?」
無言。静寂が襲う。
「テメー何フラフラ消えてんだよ!!」
その静寂を打ち破ったのは火神。後ろから現れ、黒子の背中を思い切り叩く。
「…よう」
「…聞いてたんスか?」
「聞いてたかじゃねーよ。オマエ何黒子と宝城ラチってんの!?」
「は?ちょっとぐらいいいじゃないっスか!」
「帰れねんだよ!!」
「ンだよクソ、なんかウジャウジャいんじゃん」
二人の口論を眺めていた真琴と黒子の耳に入ってきたのは、隣のコートからの罵声。
「オラ、もう十分遊んだろ。代われ代われ」
「こっちだって来たばっかだよっ。順番を…」
「ぁあ!?」
「まあまあ…ここはホラ、バスケで決めるとかどう?」
「(なんだアイツら。ガラ悪ーな)」
これには流石に火神も気づいた。
『…』
無言で気配を消し、移動を始める真琴。その腕をつかむ黒子。
「…」
『…』
無言の口論(もはや声出してないんじゃ口論じゃないとか言わないで)が続いた後、
「はぁ」
『!』
黒子が折れた。
「よっしゃあ!」
「あら〜やるな〜」
「よし、これで勝っ…」
最後の一点を入れようとした時、突然横からコート内に入っていなかったメンバーがブロックをしてきた。
「…ッちょ、なんだよ今の!?3対3だろ!?」
「はい?バスケでっつったろ?3対3なんて一言も言ってねーし」
「なんだよソレ…んなヒキョ…」
「え?なんて?」
「がっ…!?」
繰り出された足は吹き飛ばされた男の腹に入る。その場で咳き込む男子にまた蹴りを入れる。
「悪ィ、よく聞こえなかったわ。なあオイもっかい言ってみてくれ」
「そういえば黒子っちと真琴っちは!?」
漸く二人が消えていることに気付いた黄瀬。でももう遅い。
「どう見ても卑怯です」
『正々堂々勝負したらどうですか』
すでに二人はコート内に入っており、黒子はといえばボールを回して相手の鼻に当てていた。
「アッツ…!!?ってかなんだテメ…どっからわいた!?」
「そんなバスケはないと思います」
『暴力は振るっちゃだめですよ』
「(何をやっとんじゃあ―!!)」
「(黒子っち、真琴っち〜!!?)」
呆れる火神に呆然とする黄瀬。
「はぁ!?いきなりなんだテメー!?」
「ハッ、ハハッ、いんだね今ドキ。つーかさ、そっちのカノジョ可愛くない?」
伸びてくる手。それを払いのける黒子。
「その汚い手で真琴に触るな」
『…』
黒笑みを発し、相手を威圧する黒子。今までの敬語キャラは微塵も感じられない。
「…いーぜ、じゃあバスケで勝ったらそこのカノジョ貰うわ」
「あのー、オレらも混ざっていっスか?」
「つーか、何いきなりかましてんだテメー」
『もちろん僕も参加させてもらいますよ』
後ろからやってきた火神と黄瀬に圧倒されるガラ悪男たち。+黒オーラはちょっとキツイ。
「5対4でいーぜ。かかってこいよ」
「なんだとっ…」
とりあえず虚勢を張るも、腰が引けている。
「「「「「瞬殺―――っ!!?」」」」」
あの後ものの数分で決着はついた。黄瀬のスーパープレイと火神の力任せのダンク。黒子の的確なパスと真琴の予測不可能なプレイ。
特に黒子は始終黒いオーラを発しており、姿は認識できなくともなぜか背筋が凍る勢いだった。
「オマエは!何を考えてんだ!!あのまま喧嘩とかになったら勝てるつもりだったのかよ!?」
「いや、100%ボコボコにされてました(まぁ、あの程度の輩には反撃できますけど)」
「オマエの心の声が聞こえた気がするんだが!?」
「気のせいです」
『ま、まぁまぁ…あの人たちがちゃんとしたバスケをしないのにムカついたのは同じでしょう?』
そういって宥める真琴。その様子を見ていた黄瀬は近くにあったバックを掴んだ。
「じゃっ、オレはそろそろ行くっスわ。最後に黒子っちと真琴っちとも一緒にプレーできたしね!
あと火神っちにもリベンジ忘れてねっスよ!予選で負けんなよ!!」
「火神っち!?」
「黄瀬君は認めた人には【〜っち】をつけます」
黄瀬は手を振って去っていった。