理想と真実 本

□第四話
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〜5分後〜



《…着いたぞ》



ラグナスから下りると、目の前には研究所があった。



『結構早く着いたな』


《飛ばしたからな》



得意そうに言うラグナスに、お礼を言うと一瞬驚いたような表情になり、次第に心配する表情になった。



《…風邪でも引いているのか、熱でもあるか?》


『ねぇよ』



夜中にもかかわらず大声を出したせいか、中からアララギが出てきた。



「あら、早かったわね!」


『(ラグナス、隠れてろ)』


《(ああ、分かってる)》



ラグナスは暗闇に溶け込むと、見えなくなった。このような事も想定してゼクロムを選んでおいたのだ。



『飛んできたからな』


「そうなの?そんなに急がなくてもよかったのに。ま、入って。さすがに春でも冷えてるでしょ?」


『そうだな』



アララギが中に入り、見えなくなったときにラグナスを戻した。





ポンッ





《……いつなであんな中に入れておくつもりだ》


『悪いな。気付かなかった』


《んだと!》



中にはいった途端、スイラが出てきた。かなりご立腹のようだ。



「今日も前と同じ部屋でいいかしら?」


『ああ。その方が場所も分かって助かる』



アララギと別れて部屋に行くと、すぐにベットにもぐりこむ。
寝ようとしていたところに連絡が入ったため、かなり眠い。気を抜いたら飛んでいる最中にも寝そうだった。



《眠いのか?》


『見りゃわかんだろ。…明日、起こしてくれ。いつも通りに起きれそうにない…』


《分かったよ…って、もう寝てんじゃねーか》



ベットに近寄れば、すでにレイン寝息をたてて眠ていた。
スイラはふっと笑うと、電気を消してから床に敷かれた毛布に横になった。










〜翌朝〜



《おい、起きろ。もう8時だぞ》


『うぅ…もうそんな時間、か?』


《いつもより1時間オーバーだ》


『あと1時間寝かせてくれ…』


《ダメだ。もうすぐお前の“興味”が来るぞ》



そういった途端、レインは弾かれたように起き上がった。
先ほどまでとは違い、テキパキと準備を整えると、そのまま部屋から出ていった。



《…手のかかる奴だ》



スイラもレインの後に続いて部屋を後にした。



「おはよう、レインちゃん。朝ごはんはできてるわよ」


『…いただきます』



テーブルに着くと、黙々と料理を食べる。その後にスイラも来て、与えられたポケモンフードを食べた。



『ごちそうさま』


「お粗末さま」


『なぁ、オーキドが言ってるオレに会わせたい奴って、どんな奴?』


「ダメじゃない。オーキド博士は名誉ある博士なんだから呼び捨てはダメよ!」


『今はそんな事を聞いてんじゃない。どんな奴なのかが知りてーんだ』


「はぁ。そうねぇ…ある意味あなたと同じで、ちがう子ね」


『…意味分かんねー』



アララギのわけのわからない説明は頼りないと判断し、そのまま外へ出た。
あまりここを出てから時間は経ってないが、なんだか懐かしく感じられる。



『そーいや、もう家に何年も帰ってねーな』


《今頃埃かぶってんじゃねーのか?》


『…もっと帰りたくなくなった。ま、帰るつもりは微塵もないけどな』


《だが、どうせ年に一度はちゃんと帰ってんじゃねーか》


『泥棒が入ってねーか確認するためと、掃除するためにな』



森の中に入り、どんどん進んでいく。



《どこ行くんだ?》


『あの廃墟に行く。残党がいないか確認する』



場所は頭の中に入っている。数分もすれば、あの時の廃墟がまんまのこっていた。
少し違うのは立ち入り禁止のテープが張られていることぐらいだ。



『さてと、入ってくか』


《本当にモノ好きだな、お前は》



立ち入り禁止のテープを無視して中に入る。一階の大広間を覗く全ての部屋を覗いたが、何もなかった。



《これで最後か》


『あいつらがいた大広間だ』



両手開きの戸を勢い良く開ける。中にはゴースト系のポケモンが住みついていたようで、いきなり人間が入ってきた事に驚き、四方に散っていく。



《なんにもねーな》


『いや、あそこに何かあるぞ』



奥の方に茶色い物体が見えた。近づいてみるとただの段ボールの様だ。



《ん?なんか気配が感じられるな》


『ああ。開けてみるぞ』



ご丁寧にガムテープまで張り付けられていた段ボールの蓋をあけると、中には見知らないポケモンがいた。



『こいつは…?』



すぐさま図鑑で調べる。すぐにこいつは“キバゴ”というポケモンだという事が分かった。



『お前、なぜこんな中に入ってる?』


《………》


『おい、黙ってちゃ分かんねぇよ』


《こいつはかなり特殊な奴でさ、オレらポケモンの言葉を理解できんだよ》



説明をしてもだんまりを決め込むキバゴに、少々イライラしながら脇に手を差し込んで持ち上げる。



『いいから話せ』


《……前のトレーナーに、捨てられた》


『んで?』


《ここに人はこないから、置いてかれた》


『だろーな。捨てられた理由はどうせ“弱い”とか“使えない”とかだろ?』



キバゴが震えたのが分かった。ビンゴ。



『どうだ?オレについてくる気はねぇか?』



そう言うレインに、キバゴはバッと顔をあげた。



《いいの?》


『オレについてこられるなら。使えそうな奴は使わないとな』


《こいつ、こんな言い方しかできねぇんだよ》


『うっさいスイラ』



今にも本格的なケンカが始まりそうな雰囲気なの中、キバゴの震えが止まった。



《ついてってもいいのなら、ボクも行きたい》


『なら来い』


《…これからよろしく!》


《よろしくな。…お前とは正反対の、純粋なやつが入ったな》


『それはオレが黒いって言いてーのか?』


《いや、お前は漆黒…ドス黒いな》


『…お前、一発死んでこい』


《死ねって言われて死ぬ奴はいねーよ》



そんな言い合いをしていると、肩の上で笑い声が聴こえた。



《漫才みたいだよ》


『そうか?』


《お前と組むんなら死んだ方がましかもな》


『テメェ…』



そこにアララギが放ったらしいハトーボーがやってきたことで、喧嘩は終わった。




  
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