理想と真実 本
□第六話
2ページ/4ページ
結局付いてきたアイリスにため息をつきながら、ジムの中へと入っていく。
『アーティ、来たぞ』
「やっとボクのこと名前で呼んでくれたね!」
『そんなことはどうでもいいから、さっさとジム戦させろ。こっちはお前の厄介事に巻き込まれたせいでお預けくらってんだ』
「分かったよ。……おや、アイリスちゃんじゃないか。今日は何しに来たんだい?」
「お姉ちゃんのバトルを見に来たの!」
『このチビ、くっついてきやがった。しかもウザイ』
「ちょ、その言い方はないんじゃ…」
慌てるモジャ。思ったことを言って何が悪い。
「アイリスちゃんは、8つ目のジムリーダーであるジャガさんのお孫さんだよ」
『ああ、それでワガママ言いたい放題のチビになっちまったってわけか』
「チビじゃない!」
『十分チビだ』
レインより頭一個分以上小さいアイリスが、いくら威嚇してもレインは怖くもなんともない。
『さっさとフィールドに案内しろ』
「分かったよ…アイリスちゃんとお嬢ちゃんは観覧席に行ってね。場所は分かるかい?」
「もちろん!」
ベルの手を引いてかけていくアイリス。一方先程走って来たばかりのベルは、状況が今一掴めず混乱している。
しかも、アイリスに手を引かれてまた走っていく。息がゼーゼーだったのは間違いない。
『…ここがフィールドか』
「そう。虫タイプを使うボクに合わせた作りになっているんだよ」
まるでジャングルのように草木が生い茂るフィールド。
『お前、強いか?』
「うーん…どうだろうね」
『ハッキリしねーやつは嫌いだ』
「君とボクがバトルをすれば分かることじゃないかい?」
『もとからそのつもりだ』
ピリピリした空気が漂う。この空気がたまらない。今までで一番この空気を醸し出していたのは、レッドただ一人だ。
アイツは面白い奴だった。オレと勝負をし、惨敗した後、アイツはシロガネ山に籠ったと風の噂で聞いた。
「ジムリーダーアーティー対チャレンジャーレイン、バトル開始!!!」
「行け、ホイーガ!!」
『レイキ』
アーティはホイーガ。オレはレイキを出した。
「虫タイプのホイーガに水タイプのフタチマル?」
「お姉ちゃん、負けちゃうよ!」
観客席から二人の声が聞こえてきた。
『うるせぇ!見てんだったら黙って見てろ!一言もしゃべるな!目ざわりだ!!』
久しぶりに怒鳴った気がする。隣にいたスイラが、お前の方がうるせぇよと呟いた。
『先攻、やるよ』
「そんな強気でいいのかい?ただでさえ相性は最悪なのに」
『さぁ、本当にそうかな』
「(何か策があるのか…?)じゃあ、お言葉に甘えて先行くよ!ホイーガ、ポイズンテール!!」
ポーズンテール。その言葉を聞いてレインはニヤリと密かに笑った。スイラはやっと辻褄が合ったようで、彼もニヤリと笑った。
ポイズンテールは近距離型の技。相手にダメージを与えるには近づかなくてはいけないのは当たり前。
『それを、狙ってたんだよ』
「え……?」
今だ分かっていないアーティ。ホイーガの尾が、もう少しでレイキに当たるというときだった。
『レイキ、火炎放射』
「なに!?」
口を大きく開いたレイキが、突っ込んでくるホイーガに火炎放射を浴びせる。
「…戻れ、ホイーガ」
たった一撃で戦闘不能になったホイーガをボールに戻す。そしてこちらを見てきた。
「何故、フタチマルが火炎放射を…?まさか、君に限って…」
『手を加えたりはしてねぇよ。コイツの持つ技に入っているだけだ』
「でも、フタチマルは水タイプだ!どう考えても炎タイプの技は覚えられない!」
「そのフタチマル、特別なフタチマルなの?」
観客席にいるアイリスがそう叫んできた。オレが睨むと、慌てて両手で口を押さえていたが。
『まだわかんねぇのか?この簡単なカラクリが』
「……」
『…しょうがねぇな。教えてやるよ。レイキ』
キュルルルッと音を立ててフタチマルが回転した。降り立ったときにはフタチマルの姿など何処にも無かった。いるのはゾロア一匹。
「もしかして…!」
『やっと気付いたか。さっきのフタチマルはゾロアが化けた奴だ。ゾロアは火炎放射を覚えられるからな』
ボールを取り出し、ラークをしまう。ネタバレをしてしまった以上、ゾロアで戦うのは難しいからだ。
腰に付くボールを触る。さて、次はだれを出そうか。モジャが何を出してくるかは関係ない。ただ楽しいバトルができればそれでいい。
「行け!イシズマイ!!」
『ウォン』
次に出されたのは、イシズマイとワシボンだった。