理想と真実 本

□第七話
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「…うえっぷ」


『やっぱそうなるか』



一瞬でジョウトに着いた。降り立ったのはリーグゲートの前。もちろん関係者用だ。



「…証明証のご提示をお願いします」



目の前に立ったオレに若干ビビりながら、警備員が小声で言った。その横をアーティは顔パスで通っていく。
オレはポーチから一枚のカードを取り出す。それを見た途端、警備員の顔つきががらりと変わった。



「ジョ、ジョウトのチャンピオン……。し、失礼いたしました!」


『別にいい。オレの顔を知らなくても無理はない』



脅える警備員の横を通り過ぎ、目の前にそびえ立つ大きなビルの中へと入っていく。入った途端、誰もが偏見の眼差しを向けてきた。



『チッ』


「…君がここに来たくなかった理由は、これかい?」


『これ以外にもたくさんある。オレが出てってから、かなり人が変わったな』



人事異動がされていたようで、レインの知る者はだれ一人いなかった。



『モ……アーティ』


「なんだい?」


『オレがいない間、臨時のチャンピオンを務めていたのは誰だ?』


「ラグという女だ」



その名前には聞き覚えがあった。



『ワタルじゃねぇのか?』


「ワタルさんが務めるはずだったのを、金に物を言わせてラグが務めることになったらしい。それから変わったよ、此処は」



それで人事異動がされたわけが分かった。オレの味方をする奴が許せなかったのだろう。



『……ならなぜ、オレを呼ぶ必要があった』


「戻して欲しいんだろうね、ジョウトリーグを。他の誰でもない、レインちゃんに」



やがて一つの扉の前に付いた。アーティは身なりを整え始める。オレは構わず、扉を開けた。途端、突き刺さる視線。



「レイン!!!!」



そんな中、痛い視線をかき分けてオレに抱きついてきた女性。……カリンだ。



「何処行ってたのよ!探したのよ!!!」


『い、痛い、離せカリン』


「嫌!またどこかに行かれたら困るわ!!」


『当分はどこにもいかねーよ!』



カリンを無理矢理引っぺがす。次に近づいてきたのはワタルだった。



「レイン」


『ワタルか…随分大変なことになってるな』


「ああ。全てはラグの仕組んだことだ」



ラグ。彼女はオレの付添い人をしていた女だ。何かとお節介焼きで、よく除け者にしていたが、それでも懲りずにひっついてきた。
だがそれは偽りの顔。裏ではひそかにオレ反対派の人間をかき集めていたことくらい、ポケモンと話せるオレには筒抜けだった。



『オレはここを抜けだした身だ。もう一度ここに戻るのはおかしいじゃねぇか』


「いや、いいのだ」


『…キョウ』


「第一、彼女はボク達にバトルで一度も勝ったことがない。そんな弱い奴がボクの上に付くのは嫌だね」


『イツキ』


「その通りだ。あの女は弱くてたまらん。何よりオレには近づかない」


『シバ…のは仕方ねーと思う』


「なに!?」


「どいてシバ。ボク達はレイン、君だけをチャンピオンとして認めている。さっさとあの生意気な娘を引きずり降ろしてよ」


「そう言うことだ」



オレの周りに集まって来たのはジョウトの四天王の奴ら。こいつらもラグが気に入らないらしい。



「皆レインちゃんを認めているのよ」


『シロナ、なんでお前まで』


「なんでって…すべてのジムリーダー・四天王・チャンピオンが招集されているのよ?私が居ても可笑しくないでしょう?」


「人気者なんだな、レインは」


『アデク。お前らまさか』


「そーいうわけだ。オレもあの女は気に入らない。さっさと倒して欲しいな」


『…緑の』


「グリーンだ!」


「…煩い」


「うお、レッド!?お前いつここに来た!!」


「さっき」



全ての地方のチャンピオンが出揃った。そして今はワタルとシロナに左右を固められ、前後にグリーンとアデク、レッドが居る。
……に、逃げられねぇ!カリン達はどこだ!!助けろっての!!
しかしカリン達は出てこず、いつの間にかチャンピオンしか入れない部屋の中へと入っていた。
…てかおいレッド。お前チャンピオン降りた身だろ。何でここにいる。



『さっきも言っただろ、オレはここを出たんだ。チャンピオンの資格は剥奪されているはずじゃねぇか』


「それがされていないんだな」


『は?どういうことだ、ワタル』


「さっきここに来るとき、門番に証明書を見せただろ?もし剥奪されているならここに来れないはずだ」


『(確かにそうだな…)』



といういことは、事実上レインがまだジョウトのチャンピオンであるということだ。



「あれ、レインさんじゃないですか!」



そこへやって来たのは、今回の招集をかけた張本人、ラグが居た。



「こんなところで何してるんですか?」


『…』


「ここはチャンピオンしか入れない特別な部屋ですよ?貴方は“元”チャンピオンです。さっさと出て行ってください」


『…うるせェな。この状況見てわかんねぇのか?出たくても出れねぇんだよ。お前はいつになったら状況判断ができるようになるんだ』


「……逃げたくせに粋がってんじゃねぇよ!」



うわ、出てきたよ本性。後ろでグリーンが呟いたのが聞こえた。




  
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