理想と真実 本

□第七話
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本性を出したラグはオレを睨んだ。前に居たアデクを退かし、ラグの正面に立つ。



「言っただろ?ここはチャンピオンだけが入れる部屋って。レインさん、貴方はもう用済みなのよ」


『…』


「驚いて声も出ない?貴方の居場所はもうここにはないわ!私が全部壊したもの!」


『知ってたっての。お前の腹がドス黒いことぐらい。お前、中庭でオレを追い出す作戦練ってたろ。ポケモンと話せるオレには筒抜けだ』


「またそれ?ポケモンと話せる?ふざけるのもほどほどにしてちょうだい。まだそんな嘘を言ってるの?」



こいつ、まだ認めてなかったのかよ。



「スイクン。こんなウソばっか吐く奴より、私のパートナーにならない?」


《触るな、きたねぇ雌豚が!》


「キャッ!」



ラグがスイラに触れようとした途端、スイラは牙をむいて威嚇した。ラグはわざとらしく悲鳴を上げると、傍にいたレッドに寄りかかった。
こいつ、今レッドが露骨に嫌そうな顔したの気付かねぇのか?あの表情を滅多に変えないレッドが顔を歪めたんだぞ?



「ねぇ、レッド…私の告白の返事、まだ?」



今度は上目づかい攻撃…らしい。微妙に瞳が潤んでいる。ってか告白してたのかよ。レッドのどこがいいのか分からねぇ…



『(ヤベェ、気持ちわりィもの見ちまった…)』



見ていられなくなって咄嗟にシロナの背に隠れた。シロナはオレの心を理解している奴の一人。
だからかは知らないが、オレの頭に手を乗せて、耳元で「気持ち悪いわよね」と呟いた。



「煩い、近寄るな」



レッドも同じ気持ちらしく、ラグを突き放した。その手をグリーンに擦り付けている。



「レッド、何すんだよ!」


「何って…消毒」


「おまっ!!」



その言葉にラグの目が見開かれた。



「オレ、お前に興味ない。弱いし。まだレインの方がいい」


『意味わかんねぇ。つーかそこでオレの名前出すな。近づくな』


「こんなのほっといてバトルしてよ」


『したいのは山々だけどよ、まずは……』



ラグを睨む。本気の殺気を浴びせてもなお、こいつはびくともしねぇ。……面白い。



「何?レインさん。ちょっとチクチクするから殺気しまってくれない?」


『…オレとバトルしろ』


「はぁ?何言ってるの?この私に勝負を挑むなんて……10年どころか一万年早いわよ!」


「それは貴方の方よ。第一レインは自らバトルを誘うことは滅多に無い。まぁ、ジムリーダーを倒すときは別ね。
それ以外でバトルを申し込む時は………その相手を立ち直れなくなるまで倒すときだけよ」


「……いい度胸ね。いいわ、ついて来なさい。皆知ってるだろうけど、バトルフィールドはこっちよ」



上から目線の指示は大っ嫌いなレイン。そんな彼女に対してラグは上から指示をした。たったそれだけ。
だが、それだけのことで彼女の怒りバロメーターはブチ切れる。そうなるともう彼女には手の着けようがない。
たとえ、伝説とまで謳われるレッドでさえも、だ。










「大丈夫かしら、レイン」


「心配することはないだろ」



レイン達が向かっているバトルフィールドを映した巨大モニターが設置されたとある一室には、チャンピオン以外の者が揃っていた。
四天王、ジムリーダー、権力者。全てはここに集まり、全てを見守っていた。そのほとんどがラグ派。
レイン側に付くものは一部の者達のみ。というか、権力者は全てラグ派なので、抗いようがなかった。



「でも…」


「ボクらのチャンピオンが負けるとでも思ってるの?カリンは」


「そう言うことじゃないわイツキ。ただ…」


「お前の考えそうなことは分かっている。裏工作を心配しているのだろう?」



何処からともなくカリンとイツキの間に現れたキョウに慣れた二人は全く反応しない。



「その通りよ」


「確かにそれは心配だな」


「でしょう?シバ。此処からじゃ私達は何もできない。何かあっても…」


「信じることはできるだろ。アイツはそう簡単には負けないよ。だってアイツがリーグを制覇したのはたった6歳の頃だ。
手持ちはたった3匹。でもアイツはそれでリーグを制覇した。アイツの辞書に不可能なんて文字ないだろうね」



憎らしそうに、でもうれしそうにイツキは話した。



「今考えると、6歳から本当にここから脱走するまでリーグに縛り付けたのがいけなかったのかもね」


「まだ遊び盛りの時に縛り付けられるのは、さぞかし退屈だったろうな」


「でもよく小さな脱走してたよな」



キョウの言葉に何も言えない3人。



「…でもよ、10歳過ぎても旅に出れなかったのは相当きつかったんじゃない?」


「あれだよ、レッドが来てからアイツの様子が変わったんだ。それから1カ月もたたないうちに出てったしね」


「そうね。……ある意味、レッドには感謝ね」



フィールドに入って来たレインを見つめ、カリンは両手を胸の前に組んだ。




  
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