理想と真実 本

□第八話
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フィールドは既にバトルの準備がしてあった。



「フィールドはランダムに入れ替わるわ」


『…オマエ、改造しやがったな』


「今は私がここの責任者。何をどうしようが私の勝手でしょ?」



とことんムカつくヤローだぜ。またもやグリーンが呟いた。



「ルールは全手持ち…レインさんはきっと今でも10体以上持ち歩いてるのでしょう?」


『今は8体だ』


「なら7対7のバトルにしましょうか。先に4勝した方が勝ちよ」


『…』


「審判は……レッド、お願いできる?」


「やだ」


『…レッド』


「……分かった」



ラグはレインのことを殺気のこもった眼で睨んだ。レッドのことで嫉妬でもしているのだろう。
別にオレは何とも思ってねぇ。そう言ってもアイツは信じねぇだろうから何も言わない。



「…これよりジョウトチャンピオンレインと(我がままでウザくて気持ち悪い)ラグのバトルを始める」


『(心の声がただ漏れなんだけど)』


「バトル…開始」



レッドのは気の無い声で開始したバトル。途端、フィールドがものすごい音をたてて変形する。



「…まずは水のフィールドね。いけ、エンちゃん!!」



出てきたのはエンちゃんことエンペルト。



「ネーミングセンセなさすぎよね…」


「最終進化がエンペルトだからって、エンちゃん…」



後ろでシロナとワタルがそう言う声が聞こえた。



『レイキ』



オレが出したのはフタチマル。もうそろそろ最終進化であるダイケンキになってもいい頃だと思う。
早すぎとか言われるかもしれねェが、何かこいつら経験知溜まるの早ぇんだよ。



「何そのポケモン。可愛げがなさすぎ。第一小さいわね」


『それを言うならお前のエンペルトだって最初はちいせぇポッチャマじゃねぇか』


「ポッチャマはいいのよ。可愛いから」


「…さっさと始めろ」


『はいはい。悪かったねーレッド。じゃ、オレから行くぜ。レイキ、波乗り』



そこらの水をすべて集め、どでかい波を作り、エンペルトに当てる。
しかしまぁ向こうも水タイプ。波乗りごときでどうにかなる訳でもなく。



「バカね。水タイプに水タイプの攻撃は効果はいまひとつよ!」


『だろうな。オレの狙いはダメージを与えることじゃねぇ。あくまで攻撃を当てることが目的だ』


「は…?」


『レイキ、冷凍ビーム』


「何!?」



波の中にいたエンペルトも一緒に凍った。当然、凍っているため動けない。



「どうしよう、エンちゃん……!……なんてね。エンちゃん、ドリル嘴で氷を砕いて脱出して!」


《は!こんな攻撃を破ることぐらい朝飯前だぜ!》


『…』



その勢いを元にアクアジェットを出して来た。



『レイキ』


《大丈夫!》


『また来るぞ。耐えろ』



アクアジェットにより空中に飛ばされたレイキ。



「エンちゃん!メタルクロー!!」


《オラオラオラァ!手も足も出ねーか?フハハハッ!》



地面に叩きつけられたレイキ。高い水しぶき上がる。



「トドメよ!冷凍ビーム!!!」


《レイン、来た》


『…あぁ、分かった』



爆発音が辺りに響く。誰もがフタチマルの敗北を予期した。



「呆気ないわねぇ?あんだけ大口叩いてたのに!」


『誰が終わりだと言った?レイキ、メガホーン』


「何言ってるのよ。フタチマルは戦闘不能で〈ギュアアァアッ!〉エンちゃん?!」



煙の中から出てきたのは一回り以上大きくなった何かの影。その姿はフタチマルでは無い。



『コレを待ってたのさ』


「…エンペルト戦闘不能。……何て言うの、そのポケモン」


『ダイケンキだ』



レインの前に軽やかに着地したのは、フタチマルではなく、ダイケンキだった。
あの水しぶきの中で進化を終えたレイキは、エンペルトの冷凍ビームを己のメガホーンに纏わせ、急所を狙うことで一撃で仕留めて見せたのだ。



『進化すんの早ぇんだよ。お前だけだぞ、進化してる奴は』


《そんなこと言われても…》


「…ダイケンキの勝ち」



上がったのは歓声ではなく、ブーイング。此処にいるのは全てラグ派の奴らだけらしい。



『うるせェ。黙って見てらんねェのか?』


「元チャンピオンがふざけた口をきいてんじゃねェ!」



怒声とともに投げられたのは空き缶。中身入りだ。中身はレインにかかる前に、側にいたスイクンが空き缶ごと凍らせた。
ゴトンッ、という音とともに落ちる凍った空き缶。落ちた瞬間、スイクンは声高く吠えた。



《貴様ら、誰に向かって手ぇあげてやがる!ふざけるのもいい加減にしやがれ!》



そう言っているのだが、何せ一般庶民に彼らの声は聞こえない。ただの遠吠え程度にしか見えないはずだ。しかも奴らは…



「北風様が元チャンピオンにチャンピオン面するなとおっしゃっている…!」


「そうだそうだ!さっさと出て行け!」



勝手な解釈をしやがった。



『うるせぇ』


「煩いのはお前だ!」


『うるせぇってんだよ!』



ボールを中に投げる。出てきたのはカイレ(ファイヤー)、フロウ(フリーザー)、ディール(サンダー)だ。
3体は客席を飛び回り、手に武器らしきものを持っている者を見かけると、すぐにそれを焼きつくしたり凍らしたり。又は人を痺れさせた。



《観客のことは任せろ》


《お前はバトルに集中してな》


《邪魔は絶対させない》


『ありがと。カイレ、フロウ、ディール』



気にするなと言わんばかりに3体は甲高く鳴いた。




  
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