理想と真実 本
□第九話
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『おい、セイヤ』
「?」
『オマエの目的は何だ』
「目的…?そりゃ…チャンピオンの座に付き、貴方の持っているポケモンを全て奪うことですよ。
それと、そうですね…貴方という化け物から、リーグを救うことですかね」
『……言い残したことはねぇな』
「…どういうことです」
『オレをただの子供だと思うんじゃねぇぞ』
一度目を閉じ、再び目を見開いた時、そこにレインの姿はなかった。
『どこ見てやがる。オレはこっちだ』
「なにっ!?」
いつの間にかレシラムに跨り上空にいたレイン。
『オレは正真正銘のバケモノだからな。オマエの腕から逃げることぐれぇ朝飯前だ』
「ッ!?」
『さて、10倍にして返してやろうか?』
《私達の主には向かった罪は重い》
《生きて帰れると思うなよ》
レグナス、ラグナスが言うとセイヤの傍に降り立ち、威嚇する。
「ヒイッ!」
『残念だったな。オマエの力でオレに勝とうなんざ……何年たっても無理だ。スイラ』
《わかってるっつの》
脅えた表情のまま凍ったセイヤ。それを見て笑うと、観客の方に向き直る。
『観客、モニターを通して見てる奴らに告ぐ』
レインの傍にレグナス、ラグナス、カイレ、フロウ、ディールが降り立つ。
『オレに文句のある奴は出てこい。相手してやる。ただし……オレより弱けりゃ、そこの男みたいになることぐれぇ、覚悟して来い。
そしてオレに歯向かう勇気すらねぇ奴は、さっさと此処から立ち去れ。いられても目障りだ』
そう言った途端、殆どの奴らが空を飛ぶを覚えているポケモンを出し、逃げて行った。
「…いいの?レインちゃん」
『はっ、弱ぇ奴はいらねぇ。いられても邪魔だ』
「そうね」
ラグナス達をボールに戻し、さっさとフィールドから立ち去った。セイヤを置いて。
「レイン―――ッ!大丈夫!?怪我してない!?」
『グッ!』
「離してやれカリン。お前のせいで死にそうだ」
「はっ!ごめん、大丈夫?」
『………カリン、オレの半径2m以内に近づくな』
「嫌!」
部屋に入った途端抱きついてきたカリン。心配してくれていたのはいいが、それで死ぬのだけは避けたい。
「この後どーすんだ?」
『戻る』
「イッシュにか?」
『ああ。まだ途中だ』
「でもよ、チャンピオンどーすんだよ」
隣にいたグリーンが腕を組んでオレの前に立つ。
『そんなの…ワタルにやらせときゃいいだろ』
「そんなのって何だ!しかもやらせときゃいいって…オレの扱いひどくないか!?」
『うるせぇワタル。黙れ』
「……」
喚くワタルを黙らせると、さっさと出口に向かう。
「…本当に行くの?」
『嘘ついてどーすんだよ』
「…仕方無いわね。これ持って来なさい」
シロナから手渡されたのはポケギアだった。
『これ、イッシュでも通じるのか?』
「通じるように改良したのよ。挑戦者が来たら鳴らすから帰って来なさい」
『いy「帰って来なさい」……分かったよ』
シロナは偶に黒くなる。ポケギアをカバンにしまい、そこを出た。
《いいのか、帰っちまって》
『いいんだよ。ワタルに仕事なすりつけられなかったけどな』
《…何でチャンピオンなんか受けたんだよ》
『気まぐれだ』
《…だろうな》
クウを出すと、さっさと背に跨る。スイラもそれに続いた。
《…モジャ持って帰らねぇのか?》
『ウザいから置いてく。帰ってくるだろ』
空間を割くと、レイン達はイッシュへと帰っていった。