理想と真実 本
□第十話
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ゴンドラがちょうど真上に着こうとした時、漸くここでレインの口が開いた。
『オレを乗せて…一体どーいうつもりだ』
「レインと話がしたくてね」
『(コイツ、いつからオレを呼び捨てにするようになりやがった)』
前まではちゃん付だった。いや、ちゃんが付いていた方がいいというわけでもないが。
「ボクがどういう存在だか知ってるかい?」
『別に。興味ねーし』
「ボクはプラズマ団の王という立場だ。ゲーチス達はボクの付き人だよ」
『あっそ』
「ボクはポケモンの言葉が理解できる。キミのようにね」
『…』
《(コイツ、レインが話せること知ってるのか…?)》
ゴンドラは止まることなく回って行く。
「ポケモンたちは苦しんでいる。身勝手な人間達のせいで。ボク達プラズマ団はポケモンたちを救うことを目的としている。
ポケモンたちを救うには、それなりの力も必要だ。…その為にボクは伝説のポケモンとトモダチにならなくてはならない」
『(ラグナスとレグナスのことか)』
「彼らとトモダチになれば…。そのために、ボクらはストーンを探している。ブラックストーンと、ホワイトストーンを」
何となく、その石に思い当たるものがあった。
「真実を求めレシラムを、理想を求めゼクロムを『蘇らすってか』…その通りだよ」
『お前にそこまでの力があるか』
「力はなくてもいい。純粋な心で求めさえすれば、彼らは答えてくれる」
ゴトン、どうやら下に着いたらしい。スイラと共に素早く降りると、Nと向かい合った。
「…君のポケモンはおかしなことを言うもんだよ」
『何て言ってんだ?』
「楽しいと、キミといて嬉しいと言っている。今まで出会った中でも、そんなことを言うポケモンは初めてだよ」
『違うな』
「え?」
『オレといて楽しいわけがねぇ。オレは逃亡者だ。逃げ回ってるだけで何が楽しい。ただ…信頼はしているつもりだ。
信頼もしてねぇ奴を傍に置くほど、オレは無防備にできちゃいねぇからよ』
言葉では表すことのできない強い“絆”Nはそれを感じ取っていた。
「…本当に面白い、もっと声を聞かせてくれよ」
『(ヤベ、なんかバトルする雰囲気になって来やがった)』
「準備はいいかい?行くよ」
出てきたのはメグロコ。こーいういのは楽しまずにさっさと終わらせて逃げる方が得。今までの逃亡生活で習ったものだ。
『レイキ』
「あのときのミジュマルだね」
『波乗り』
「おっと」
何もせず戦闘不能。これでいいのかとレイキが視線で訴えてきたが、答えずにしまった。
「ダルマッカ」
『ウォン』
同時に出し、睨みあう2体。
「ダルマッカ、騒ぐ」
《う、耳が…》
小さな羽根で耳であろうものを押さえるウォン。これでは何もできない。
『ウォン!』
《ちょっと、待っててください…直ぐに立て直しますから…》
フラフラとまるで千鳥足。そこを狙ってダルマッカが攻撃してきた。クリーンヒットだ。
『チッ、大丈夫か』
《さっきの一発で目が覚めました》
『ブレイブバード』
《さっきのお返しですよ!》
ちょこまかと逃げ回るダルマッカを追い、一度空中に上がると、勢いを付けて突っ込んだ。
「なかなかやるね」
『オレが負けるわけねーからよ』
「まだまだ、ボク達も負けないよ。ズルッグ」
『ウォン、いけそうか?』
《はい》
『もーそろそろ進化のころ合いだ。頑張れ』
《……!はいッ!》
頑張れと言った途端、がぜん張り切り始めたウォン。なんだ一体。
「ズルッグ、騙し打ち」
『避けろ』
動きの速さにも磨きがかかっている。
『そのまま空を飛ぶ!』
《ウギャッ!》
地に伏せたズルッグ。飛び上がったウォンは体全体を光が包み込んでいた。