理想と真実 本

□第十話
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「進化が始まったんだね」


『見りゃわかんだろ』



光が消えると、そこには一回り以上大きくなったウォン。ウォーグルが飛んでいた。



《大きくなりやがって…》


『お前は進化できねぇからなぁ。羨ましいのか?』


《別にそんなんじゃねぇよ》



フイッ、とそっぽを向くスイラ。



『戻れウォン。体を休めろ』


《はい》


「…次がボクの最後の一体だ。シンボラー」



見たこともない浮遊する物体。図鑑を取り出せば、スイートストームで手に入るポケモンらしい。



『ラーク』


《やっとオレの出番?》


『イカサマ』


《いきなり!?》



向こうのシンボラーが驚いている中、ラークは突っ込む。しかしそこは体格の差か、サッと避けられてしまう。



「追い風」


『(素早さをあげてきやがった)』


《(厄介なことになったな)》


《レイン?》



相手の出方を伺うレインとスイラ。ラークはまだ入ったばかりのため、何をしていいのか分からない。



「吹き飛ばし!」


『伏せろラーク!』


《えっ?うわっ!》



構えていなかったせいでラークは吹っ飛んで行った。そのまま木に叩き付けられる。



『(ちゃんと構えておけって言えばよかったか…)平気か?』


《な、なんとか…》


『シャドーボール』



いつもより何倍か大きいシャドーボールが飛んで行く。しかし相手は素早くなっている。



『避けやがった』


「サイケ光線」


『逃げろ』


《え、ちょ、!》



小さい体を駆使して逃げ回るラーク。数分そうしていると、向こうの速さが元に戻った。



『今だラーク、イカサマ』



素早さもなくなくなり、体力も減っているシンボラーに攻撃を当てるのは容易だ。



「…ボクの負けだ。やっぱりキミは強い」


『用は済んだだろ。オレは行く』


「キミはもう一人の勇者だ。どちらが先に勇者になれるだろうね」



帰ろうとしているのに、コイツは…腕離せ。



『…オレは勇者とかそういうのに興味ねぇ。つーか、お前がオレに勝つことなんてねぇよ』


「それはなぜ?」


『本当に理解してねぇのはお前だからだ』


「…何を」


『もちろん、ポケモンの心だ』



腕を掴む力が強くなった。



「何を言っているんだい」


『全てのポケモンが皆、人から離れたいと思ってるわけねぇって言ってんだよ』


「そんなことがあるわけがない」


『ならなぜ、ここにいる人間の横にポケモンがいる。嫌なら逃げることだって可能なはずだ』


「……」


『イヤな顔すらしてねぇだろ』


「でも、心の奥底では…!」


『黙れ』


《お前の言っていることは間違っている》



スイラがそういいながらオレを引き剥がした。



『…お前は分かる奴かもと、一瞬でも思ったオレがバカだった』



そう言い捨て、遊園地を後にした。




 
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