理想と真実 本

□第十一話
1ページ/2ページ






Nと別れると、すぐさまジムへと向かった。だが…



「すいません…ただ今ジムリーダーは外出中でして……」



居なかった。ジムリーダーってのはいつでもジムにいるもんじゃねぇか?ま、オレが言えるもんじゃねぇか。



《どーする》


『どーするも何も、探すしかねぇだろ』



とりあえず手あたりしだいに探していくことにした。ポケセンから、フレンドリィショップ、競技場も全て回った。



《残ってんのは…》


『ここだけだ』



目の前にあるのはキラキラと電飾で飾られたミュージカルホール。此処は一段と他の施設よりも電飾が多い。



『こんなとこ、入るのは嫌なんだけど…』


《もしかしたらジムリーダーがいるのかもしれねぇだろ》


『こんなキラキラしたとこにかよ』


《この街自体煌びやかなんだから、どこにいたってかわんねぇだろ》



意を決してレインはミュージカルホールに入って行った。



『…ウゲェ、まっピンク…』



中は外見以上、派手に感じた。壁一面と言っていいほどピンクで覆われ、ところどころレースカーテンがある。
ザ・女の子の部屋!…といった感じの施設内に、レインは一瞬吐き気を感じた。必要最低限の物しかない彼女の部屋とは大違いだ。



《こりゃ…すげぇな》


『こんなのは初めてだ…気分が悪ィ』


「あ、レインちゃん!久しぶり!!」



向こうからベルが走って来た。……なぜか、脇に着飾ったポカブを連れて。



『…おい、そのポカブの恰好は何だ』


「ん?ああ、これ?さっきミュージカルに出演してきたんだ!!可愛いでしょ!」


《オレ、男なのに…こんな格好させられるなんて…もうこりごりだ……》


《災難だったな》


『(ベルの奴、ポカブの性別分かってねぇのか?)』



ポカブを抱きかかえ、にこやかに笑うベル。とりあえず話題を変えることにした。



『旅は順調か?』


「うん…まぁね…」


『…なんかあるんだろ』


「え、なんで分かったの?」


『お前は顔に出やすいからな』


「うーん、チェレンによく言われる」



飾りをしまったベルは、ミュージカルホールから出ていく。レインもそれに続いた。



「あのね、私、パパに旅のこと反対されてて……出てきちゃったんだ」


『んで?』


「で…、今でもそのことが気がかりで…」


『んだよ、お前は旅に出たことを後悔してんのか?』


「してない!旅に出たかったのは本当だよ!」


『なら、お前の親父にはなしゃいいんじゃねぇの?』



ちょうど来てるみたいだしよ。そう言って目の前を指させば、ベルと顔のよく似た男性が息を切らしていた。
男性はベルの姿を確認すると素早く前にやってきて、凄い顔で右腕を掴んだ。



「ちょ、何するの、パパ!!」


「何って、これから帰るんだ!もう充分だろ!!」


「充分って…旅のこと!?」


「それ以外に何がある!!ここまで来たんだからもういいだろう!!先回りしておいて正解だった…」



ずいぶんと過保護な親だ。ベルの意見なんか聞きもしないで、腕を引っ張り進んでいく。



《止めねぇのか?》


『……しょうがねぇ、少し話してみるか』



ベルの助けを求めるような視線に負けた。何かよ、この頃オレ、甘くなってないか?



「…すみません、そこをどいてくれますか?」



ベルの父親の前に立ちはだかると、心底嫌そうに、変なものを見るような眼でオレを睨んできた。



『嫌だね』


「ベルの友人か知りませんが、是は私達の問題です。赤の他人であるあなたが干渉していい問題じゃない」


『んなこと知ってるっつの。つーか、家に帰ることはベルも承知の上なのか?どうなんだよ、ベル』


「い、嫌だ!私はまだ、旅を続けたい…!」


「旅を続けて何になる!お前は何のために、どういった目的で旅をしている!」


「……正直、最初は目的なんか無かった。でも!この旅で何か掴めそうなんだもん!もっと続けたい!
私だけ置いてけ掘りになるのは嫌だ!レインちゃんと、チェレンとともに歩みたい!」


「…娘さんもそう言ってることだし、旅することを許してあげたらいかがですか?お父さん」



突然オレの隣に現れた金髪の女性。



『(コイツ……ここのジムリーダーじゃねぇかよ)』




  
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ