理想と真実 本
□第十一話
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Nと別れると、すぐさまジムへと向かった。だが…
「すいません…ただ今ジムリーダーは外出中でして……」
居なかった。ジムリーダーってのはいつでもジムにいるもんじゃねぇか?ま、オレが言えるもんじゃねぇか。
《どーする》
『どーするも何も、探すしかねぇだろ』
とりあえず手あたりしだいに探していくことにした。ポケセンから、フレンドリィショップ、競技場も全て回った。
《残ってんのは…》
『ここだけだ』
目の前にあるのはキラキラと電飾で飾られたミュージカルホール。此処は一段と他の施設よりも電飾が多い。
『こんなとこ、入るのは嫌なんだけど…』
《もしかしたらジムリーダーがいるのかもしれねぇだろ》
『こんなキラキラしたとこにかよ』
《この街自体煌びやかなんだから、どこにいたってかわんねぇだろ》
意を決してレインはミュージカルホールに入って行った。
『…ウゲェ、まっピンク…』
中は外見以上、派手に感じた。壁一面と言っていいほどピンクで覆われ、ところどころレースカーテンがある。
ザ・女の子の部屋!…といった感じの施設内に、レインは一瞬吐き気を感じた。必要最低限の物しかない彼女の部屋とは大違いだ。
《こりゃ…すげぇな》
『こんなのは初めてだ…気分が悪ィ』
「あ、レインちゃん!久しぶり!!」
向こうからベルが走って来た。……なぜか、脇に着飾ったポカブを連れて。
『…おい、そのポカブの恰好は何だ』
「ん?ああ、これ?さっきミュージカルに出演してきたんだ!!可愛いでしょ!」
《オレ、男なのに…こんな格好させられるなんて…もうこりごりだ……》
《災難だったな》
『(ベルの奴、ポカブの性別分かってねぇのか?)』
ポカブを抱きかかえ、にこやかに笑うベル。とりあえず話題を変えることにした。
『旅は順調か?』
「うん…まぁね…」
『…なんかあるんだろ』
「え、なんで分かったの?」
『お前は顔に出やすいからな』
「うーん、チェレンによく言われる」
飾りをしまったベルは、ミュージカルホールから出ていく。レインもそれに続いた。
「あのね、私、パパに旅のこと反対されてて……出てきちゃったんだ」
『んで?』
「で…、今でもそのことが気がかりで…」
『んだよ、お前は旅に出たことを後悔してんのか?』
「してない!旅に出たかったのは本当だよ!」
『なら、お前の親父にはなしゃいいんじゃねぇの?』
ちょうど来てるみたいだしよ。そう言って目の前を指させば、ベルと顔のよく似た男性が息を切らしていた。
男性はベルの姿を確認すると素早く前にやってきて、凄い顔で右腕を掴んだ。
「ちょ、何するの、パパ!!」
「何って、これから帰るんだ!もう充分だろ!!」
「充分って…旅のこと!?」
「それ以外に何がある!!ここまで来たんだからもういいだろう!!先回りしておいて正解だった…」
ずいぶんと過保護な親だ。ベルの意見なんか聞きもしないで、腕を引っ張り進んでいく。
《止めねぇのか?》
『……しょうがねぇ、少し話してみるか』
ベルの助けを求めるような視線に負けた。何かよ、この頃オレ、甘くなってないか?
「…すみません、そこをどいてくれますか?」
ベルの父親の前に立ちはだかると、心底嫌そうに、変なものを見るような眼でオレを睨んできた。
『嫌だね』
「ベルの友人か知りませんが、是は私達の問題です。赤の他人であるあなたが干渉していい問題じゃない」
『んなこと知ってるっつの。つーか、家に帰ることはベルも承知の上なのか?どうなんだよ、ベル』
「い、嫌だ!私はまだ、旅を続けたい…!」
「旅を続けて何になる!お前は何のために、どういった目的で旅をしている!」
「……正直、最初は目的なんか無かった。でも!この旅で何か掴めそうなんだもん!もっと続けたい!
私だけ置いてけ掘りになるのは嫌だ!レインちゃんと、チェレンとともに歩みたい!」
「…娘さんもそう言ってることだし、旅することを許してあげたらいかがですか?お父さん」
突然オレの隣に現れた金髪の女性。
『(コイツ……ここのジムリーダーじゃねぇかよ)』