理想と真実 本

□第十三話
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ジム戦の次の日の朝。あの後ずっとポケセンでくつろいでいたレインは今、5番道路前のゲートに来ていた。



「やぁ、また会ったね」


『チェレンか…』



ゲートの中に入った途端、後ろから肩に手が置かれた。



「なんか不満でも?」


『いや、この頃お前みたいなこと言ってオレに近づいてくる奴がいてよ…』



もちろんそれはNのことである。



「キミもホドモエに向かってるんでしょ?」


『ああ』


「だったらもう少し待つようだね」


『は?何で』



方から手を退けると、チェレンはため息を一つついて腕を組んだ。



「ホドモエに行くまでには橋があるんだけど……まだ降ろしてもらえないらしいんだ」


『降ろしてくれない?誰だよ決めてる奴』


「ホドモエのジムリーダー」


『よし、凍らせに行くぞスイラ』


《はぁ?》



意気揚々と出発しようとしたところを再度肩を掴まれて押しとどめられた。



『んだよ、邪魔すんな』


「凍らせるって……一応聞いておくけど、誰を?」


『んなのジムリーダーに決まってんだろ』


「はいはい。……というか、どうやって凍らせに行くつもり?さっきも言ったけど橋は…」


『飛んできゃいいだろ』



さも当たり前のように言うレインに、チェレンが目を見開いた。



「飛んでくって……ここら辺には人を乗せて飛べるようなポケモンはいないんだよ」


『んなこた分かってるっての』



手を振りほどくと、ゲートを出る。すると…



「ちょっと待って」



チェレンではない人の声がした。引き止める奴多いっての。今日は厄日か。



「カミツレさん…、どうしてここに?」


「橋を降ろしてもらいに行くの。ほら、着いて来て」



そのまま先頭切って歩きだすカミツレ。物事進むの早すぎじゃねぇか?



「よかったね」


『別に来なくてもよかったのによ』



ぼそっと呟いた声を聞いたチェレンは、またため息をついた。



「やぁ、カミツレじゃないか」



突然先頭を歩いているカミツレを止める人が現れた。おいおい、邪魔すんなよ。



「…アデクさん」



どこか緊張したような声で相手の名を呼ぶ。カミツレが見ているほうに目線を向けると、



『(うわ)』



重力なんてものガン無視した赤い髪の毛を持ったオジサンが居た。前に見たときと同じだ。



『誰』



思わず隣にいたチェレンに問いかける。



「え、知らないの!?」


『しらねぇから聞いてんだろ(いいかアデク、オレに合わせろ。知り合いだと気付かれると後がうるさい)』



その声が聞こえたのか、アデクが豪快に笑った。



「ワシを知らずに旅をしているとは……珍しいトレーナーもいたもんだ(…こんなんでいいのか?)」


『あっそ(ああ。恩にきる)』



目線での会話を終え、さも初対面ですと言わんばかりの受け答えをする。



「…それにしても、珍しいポケモンを持っているね。もしや君がレイン君じゃないか?」


『…何でオレの名前知ってんだよ』


「ちょいと前に各地のジムリーダーとチャンピオンが呼ばれた時があっただろ?あのときワシも行っていたんだよ」



『…ってことはお前、チャンピオンか?』


「そうさ。ワシはここイッシュのチャンピオンさ」


『強そうには見えねぇけど』


「言ってくれるね、ジョウト地方のチャンピオン」


『リーグをほったらかして出歩いてていいのかよ(ちょ、アデク!テメッ!!)』


「それはお互い様だろう?(…すまん、気が抜けてしまった)」



ああ言えばこう言う。だから大人は嫌いだ。←理不尽じゃ…
つーか今、何気オレの正体バラしやがったな…



「ちょ、ちょっといいかな」



突然チェレンがオレの目の前に腕を伸ばしてきた。あーあ、今までの視線でのやり取りほぼパァじゃねぇか。



「ねぇレイン、ジョウト地方のチャンピオンって本当?」


『そうだけど、何か』


「……二人ともチャンピオンのくせして、自分は呑気に旅でもしてるの?」


『ああ、そうだ』


「おかしいね。チャンピオンは常に上に立っているべきだ」



そう言うと、チェレンは腕組みをして目つきが鋭いまま黙ってしまった。




  
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