理想と真実 本
□第十四話
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《……どうした、一体》
森の奥深くの泉にたどり着いたレインとスイラ。そこにあった石にレインは腰かける。
《また……制御できなくなってきてるのか?》
『いや、違う』
《じゃあどうした》
『何だろうな……昔を思い出したんだよ』
フードを取り払うと、石から腰を上げ泉の水面を見つめる。瞳は赤い。
《……》
『黙んなよ。陰気くせェな』
その場に腰を下ろすと、カバンの奥底の二重ポケットに入っていたボールを取り出す。
《それは……》
『ああ、“アイツ”だ』
傷だらけのボールを懐かしそうに見つめるレイン。
『まだ出てこねェだろうけどよ』
そう言うとレインはまたボールを元の場所に戻してしまった。
《分からねぇだろ?もしかしたら》
『いや、それはない』
《んでだよ》
『オレの心の整理はまだ付いていない。オレが“アイツ”を受け止めなきゃ、“アイツ”もオレに答えちゃくれねぇ。
これはオレの罪だ。オレが本気で向き合って、受け止めようとして、償おうとしなきゃなんねぇ罪であり罰だ』
《違う!!それはお前の責任じゃねぇ!それはお前の『そうかもしれねェな。でもよ、オレの責任でもある』……》
『あん時、オレが理解していればこんなことにはならなかったんだよ』
遠い目で空を見つめる。そんな様子のレインにスイラは歯ぎしりをした。
《…いつまでも罪だの罰だのうじうじしてんじゃねぇよ。アホらしい》
『うっせぇ』
《お前らしくねぇよ。こーいうのは正面からぶつかってくのがお前だろ》
フン、と鼻を鳴らしてそっぽを向くスイラ。
『おい、自分で言っておいて照れてんのか?』
《う、うるせぇ!慣れてねェだけだ!!》
『はいはい』
オレらしくない、か。
『確かにオレは“アイツ”とも“奴ら”とも決着を付けてぇ』
《ならつけりゃいい》
『…このまま逃げてちゃいけねぇってことも分かってる。どのみち“奴ら”はどんな手を使ってでもオレと“アイツ”を見つける。
だけど、オレも“アイツ”も“奴ら”の言いなりになる気は微塵もねぇ。そこはきっと同じだ』
《オレらだって嫌だっての。で、どーすんだ?》
『さて、どーすっか』
《考えてねぇのかよ!!》
キレたのか何か知らないが、オレの足元に向かって攻撃をしてきたスイラ。避けたから良いが足あったとこ凍ってるぞ、オイ。
『何すんだよ。バカかお前は』
《バカはお前だ!!》
ギャンギャン煩い奴だ。
『どっちみち“奴ら”がオレを見つけてそこを潰すか、オレが“奴ら”を見つけて潰すかの二択だっての』
《どーせ潰すんだったら気分がスカッとする方にしろよ》
『どっちもスカッとしねぇよ。“奴ら”の顔なんて拝みたくもねぇのに拝まなきゃなんねェんだからよ』
“奴ら”はオレの黒歴史に関わる人物だ。
『どこまで組織が成長してるかもしらねぇし、どこにいるかもわかんねぇんだよ』
《確かにな》
『潰すったって居場所が分かんなきゃどうにもならねぇ』
さて、どうしたものか。地面に寝そべって空を見上げる。
『…なぁスイラ』
《なんだ》
『アイツらを最後に見たのってどこだった』
《……ジョウトだ》
『だよなぁ』
一応その件で世話になっているのでワタルには全ての事情を話してある。見つけたら連絡も来るはずだ。
『なんも連絡ねぇし、まだ尻尾はつかめてねぇのかな』
《だろうな》
『……』
《……》
無言がしばらく続いた後、突然レインが立ち上がった。
《どうした?》
『このまま黙って待ってるのも面倒だ。旅を続ける』
《探さなくていいのか?》
『探したからって見つかるわけじゃねぇ。今は連絡をまちゃいい』
ポケットに両手をつっこんで森から出ていくレイン。
《…そうかよ》
その後にスイラも続いた。